MoonBow −月虹−

2

と戦った日から一週間ほど後。
五飛は別の軍の基地を破壊した後、ガンダムと共に北上を続けていた。
と、そこへいつぞやの如くノーマルタイプのエアリーズが追ってくる。
100m程の距離を残して、エアリーズとガンダムは対峙した。
「・・・・・・・・・」
五飛はふと眉根をよせた。
いつもとは毛色が違う。
通常5〜10機を一隊として集団でかかってくるはずのエアリーズが今日は一機しか追ってこない。
伏兵がいるのかと五飛はレーダーで確認してみるが、どうもそんな気配はない。
「何事だ・・・?」
と、その時エアリーズのコックピットの扉が開いた。


「お前は・・・っ!」


操縦席から出てきたのは。

OZの軍服を身に纏ったであった。

「・・・・また戦場に舞い戻ったと言う事は、自分の正義を見つけたのか」
五飛は音声拡張機のスイッチを入れて語り出した。
「・・・・・・・・私は答えを出したわ」
は答える。
「・・・私は貴方を殺せない」
「何を言い出す?」
「私は、貴方のまっすぐな瞳を殺せないから」
「・・・ならばなぜ、ここにいる」
五飛の問いに、は少し笑った。
「私はもう戦えないわ。そして戦わない私は私じゃない」
は何かを握りしめ、その手を前に突き出した。
五飛にはそれがなんなのか、分った。


「−−−さよなら」


「やめろっっっ!!」

は、自爆スイッチを押した。




「・・・・また生かされちゃったのね」
はガンダムの手の上で笑った。
の乗っていたエアリーズは粉々になって燃えている。
自爆の始まる一瞬前、五飛のガンダムによっては救い出されたのだ。
操縦席の扉が音を立てて開いた。
血相を変えて出てきた五飛はの襟元に掴み掛かる。
「貴様っ!何のつもりだ!」
「何のつもりも何も、死のうとしたに決まってるじゃない」
は逆にすまして答えた。
「多分、貴方が助けてくれるとは思ってたけど」
「何を考えているのだ貴様は!」
「私なりのけじめ。OZの軍人たる私は死んだわ。エアリーズと一緒に燃えて、ね」
ちょっと小首を傾げては続ける。
「ここにいる私は前の私じゃない」
「・・・・・っ!」
五飛はまだ怒った顔をして、それでも黙っての襟元を離した。
「ねぇ、貴方はどうしてまた私を助けたの?」
「それは・・・」
「ほうっておけばいいじゃない。今回は私が勝手に死のうとしたんだから。別に貴方が手を下した訳ではないハズでしょ?」
今度は五飛が言葉に詰まる番だった。
そう。どうして自分はこの女を助けたのか。
五飛は今更ながら疑問に思った。

−−−・・・ずっと消えなかった。この女の面影が、瞼の裏から。

「・・・まだ名前、聞いてなかったわね」
は助け船を出すように話題を変えた。
「・・・・・・・張 五飛」
「私は。・・・でもほんとに教えてくれるなんて意外ね」
はちょっと驚いた顔をした。
「・・・・・・・・この前会った時と、随分性格が変わったな」
「吹っ切れただけよ」
は笑った。
「・・・そう、それでね五飛。私、やっぱり自分の正義なんて見つけられなかったの」
「・・・」
「でもね・・・何日かかけて考えたら、一つだけ分ったの」
「・・・何だ?」

「私は五飛が好きみたい」

五飛はその言葉の意味を理解するのに随分時間が掛かった。
その間には言葉を続ける。
「貴方のまっすぐな瞳、壊れて欲しくないって思ったんだもの」
は五飛に飛びついた。
「大好き、五飛」
その後五飛が顔を真っ赤にしてを突き飛ばしたとかいうのは秘密の、深い森に消えて行った話。




「私の事は多分OZが追ってくるとは思うけど。私もそろそろ引退して、気ままに田舎暮らしでもしようかなぁって。
大丈夫よ、追っ手なんかいくらだって返り討ちにしてやるわ」
は近くの町まで送ってもらったとき、五飛に向き直ってそう言った。
「私、多分五飛の役には立てないから」
「・・・・・・・」
「・・・そう言えば五飛、私さっきの返事聞いてないわ」
は楽しそうに微笑をもらした。
「・・・・・・・・・・」
「うーふぇい?」
「待っていろ」
「・・・え?」
五飛が視線を外して呟いた言葉に、は呆けたように聞き返した。
「俺はこの戦いに勝つ。・・・それまで待っていろ」
「返事はYESでいいのね?」
は五飛の目を覗き込んで聞いた。
「・・・好きに解釈しろ」
「うん・・・そうするわ。だから五飛」
「何だ」

「絶対に、約束を守って。・・・死んじゃ駄目よ」

「俺は約束を違えるつもりは毛頭無い」
五飛はの頬を撫でた。
「だから、待っていろ・・・
「うん。待ってるわ。・・・帰ってきてね、私の所に」



夜、中天に浮かぶ冴えた月の光に照らされて交わした約束。

end.
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後書き
あああ・・・多分一番の駄文になってしまいました・・・。
長いし!戦闘シーンに臨場感が無いし(ポイント)!五飛がヒロインの名前一回しか呼んでないし!
時間経過が良く分らないし!ヒロインの性格前半と後半で変わりすぎてるし!
・・・・・・・それでもUPする私(沈)。
でもこういうロミジュリ的(どこがだ、どこが)な敵同士の話は好きです。ヘタレだけど。・・・そう言えば、
can I 〜も、I wish ... も難しかった。どうも戦時中の話は書きにくい事が判明しました・・・。

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