モノでつれ。
「・・・・そろそろかしら?」
あたしは呟き、河川敷近くのベンチに手に持っていたバスケットと一緒に腰を下ろした。
所属は青春学園中等部3年、名前は。
今現在のあたしの超簡単なプロフィールに少々追加するならば、それは朝に弱いあたしがこんなに
早起きして(しかも今日は休日だ)河川敷にまで来ている理由に直結するものなのだけど。
好きなもの、薫ちゃん。
いわゆる恋、とかとはちょっと違うと思うんだけど。ていうか違うと自覚してるけど。
あれは二年の春。
同じクラスで友達のフジコ(って呼ぶと笑顔で怒るんだけどね)がテニス部だし、その年度テニス部
に入部する子、っていうのにちょっと興味あったしというわけで、何気無く覗きに行ってみれば。
おねーさんは一発ノックアウトされたよ・・・・!(グッ)
その経緯は省くとして、とにかく感想はカワイイに尽きた。
コイビトにしたいとかじゃないのよ。むしろ懐いて欲しいのよ!
愛玩動物に似てるのよ!フジコに言ったら「海堂も災難だね」って笑顔で言われたけど!あんた
絶対そう思ってないでしょ?楽しんでるでしょ?
とまあそんな訳で、テニス部周辺にリサーチした結果割り出した薫ちゃんのランニングコースを、
こうして抑えてる訳なのさ!
今日は手応え有るわよ!その自信がある!
とか朝日にガッツポーズかましてる間に朝霧の向こうの薫ちゃんが見えたけどね!
「・・・先輩・・」
ふふふふーvvv自然に頬が緩んじゃうわ。
名前で呼んでもらえるようになるまでの1年ちょいの努力も全然苦にならなかったものね。
初めて呼んでもらえたときはv
「オッハヨウ薫ちゃん☆休日練習前の自主練なんてえっらいわねーv」
「先輩こそ・・・どうしてこんなとこにいるッスか」
「乙女のヒミツよ。介入すると痛い目見ちゃうゾv」
「・・・(ふしゅー)」
「まあ、それは冗談として」
気にしないわよー確たる反応返ってこないほうが多いしね☆
ポジティヴ思考になったわよ、あたしもつくづく。
「今日はとりあえずこの子のためよ!」
あたしはベンチに置きっぱなしにしてたバスケットを持ち上げた。
「・・・・?」
ふふふふ。見るがいいわ薫ちゃん!
「じゃーんっ☆」
「・・・!」
かかったわね薫ちゃん(ニヤリ)!
バスケットの中身。
それはふわふわしてて頼りなくて。
真っ白で軽くて綿毛みたいで。
くりくりしたアイスブルーの瞳が愛らしい、小猫。
「カワイイでしょー?この前あたしん家のネコが産んだんだけどねv」
「・・・(ふしゅー)」
薫ちゃん、じーっと見てるもんね。あたしの話聞いてないでしょ?
うちのネコはビアンカとクロノっていうのよー。
でもこの反応なら頂きよっv敵は本能寺にあり!!(テンション上昇でやや前後不覚気味)
「抱いてみる?」
「・・!」
くぅ、可愛いなあ薫ちゃんvvv
「先輩、いいんッスか?」
「いいよー。はい、どうぞ」
あたしは小猫を気をつけながらつかみ上げ、薫ちゃんに手渡した。
(薫ちゃんてば両手揃えて受け止めるんだもんvvv超可愛いーvvv)
「・・・」
ていうか、ね。
こう、ちーちゃい小猫抱いてね。
ちょっぴり、ほんの少し。
多分日夜観察してる(あたしみたいな)ひとじゃないと解んないと思うのだけれど。
笑ってるの。薫ちゃん。ほんとに少しだけで、笑ってるって全然解んないけど。
でも、あたしはそれだけで至福。
・・・この笑顔、永久保存出来ればなあ。
今度隠し定点観測カメラを秋葉原あたりに探しに行こうかしら。
「・・・先輩」
「え?あ、なに?」
あっぶな。トリップしてたよちょっと。
「先輩ん家で飼うんスか?」
「いーや。これから友達の家に輿入れに行くのよ。家じゃ全部は飼えなくて。今回産まれた子の最後の
一匹なんだけど、やっと貰い手見つかってね」
「・・・そうなんッスか・・」
しゅーんとしたのも可愛いわねえ。
撫でたいけど、今それやると計画が破綻しちゃうから我慢我慢。
「小猫は、ね」
「・・・・?(ふしゅー)」
薫ちゃん、人の話は最後まで聞こうねv
「親ネコ。かーさんが白チンチラのビアンカで、とーさんが黒シャムのクロエ。その子は色はビアンカ似で
毛の長さとかはクロエ似なのよ。どっちも可愛いわよvデカイけど(笑)」
人のベット占領してあたしをソファで寝かせたりするけどね(にっこり)。
「あんまり外出歩かない連中だから、運動不足が結構心配だったのよね」
嘘です。いい歳して未だにカーテン駆け上り競争とかやってるもん、夫婦で。
そろそろカーテンも替え時です。カーテンの役を果たせなくなってきてるしね。
「たまに、子供貰ってくれた友達んとこまわってみようと思うの。この辺りにいっぱいいるから、薫ちゃん
に会ったときは紹介するわ」
「・・・どうもです」
「イエイエ。こちらこそ」
第一段階、完了の兆し。
今日は薫ちゃんの笑顔見れたから良しとしましょうv
早朝突発デートの約束一方的に取り付けたしね!
さて、今度会うときまでに秋葉原行かねば。
改装祝いに鷹雪璃苑様へお贈りしました。
後書き
こんにちは、薫ちゃんラヴv暴走中です。
本当はもう少しテンション高い話だったのですが・・どっちにしろ駄文・・・。
視点モノは難しいですねえ・・・。
あ、ヒロインの苗字が出てこないのは次回作(あれば)への布石です・・・(笑)。