氷の熱
リィーン
融けない氷が澄んだ音を立てる。
は紅い目をした『鬼』を見上げていた。
「何をしてるんです?」
声に、振り返る。
「アキラ」
そこに立って居るのは、この氷に封じられた体をここへ持ち帰ってきた漢。
「何をって。値踏みしてたのよ、あんたの大事な『鬼』の体を」
「それはそれは。で、如何程でしたか?狂は」
「・・・アキラがどうしてそんなに此れに惹かれるのかわからないわ」
つい、とまた視線を狂の体へと移し、は呟いた。
「紅い目の。『鬼』と呼ばれた最強の漢の。氷に封じられた体」
唄うようには続ける。
「ずるいわ」
「どうして?」
「アキラに大事にされてて」
くるりと踊るように回り、すぅと人差し指でアキラの胸をとん、となぞる。
アキラは少しだけ驚いて、そしてくつくつと微笑った。
「何がおかしいの」
不満そうに言うの手首を掴んでぐい引き、よろけた体を受け止める。
「確かに大事ですよ。狂の体」
ぎっと睨んでくるを無視して、微笑みを口の端に乗せたままアキラは言う。
「でもも大事です」
「戯れ言ね」
ふ、と溜息にも似た笑いを、は桜色の唇から零す。
「そうですか?」
「少なくともあたしにはそう聞こえるわ」
「では、・・こう言ったら、信じてくれますか」
ひゅお、と冷気が渦を巻いた。
が怪訝そうに眉を寄せるのと同時に、パキパキと音を立てて氷が足元から生まれ出る。
「何を・・・」
「本当は、このまま氷の中に閉ざして、ずっと傍に置いておきたいんです。のことも」
握った手首をぐいと上げて、脈の上にくちづける。
は、足元に忍び寄る氷が鳴る音を聞いた。
「本気、なの?」
「ええ。狂とはいずれ死合うつもりですが、はその必要はない」
アキラの微笑みは変わらない。
優しい色のまま。
「ずっと傍に。永遠に、のことを愛しましょう」
は感じた。目の前の漢の、本気、を。
洒落や虚言ではなく、本当に。
そう、思っているのだと。
リィーン
氷が、鳴る。
−−−冗談じゃない
はぐいと腕を伸ばして、アキラの首に抱き着いた。
そのまま顔を近づけて、乱暴にくちづける。
「馬鹿」
吐息の隙間から、細く、けれどはっきりと呟く。
「それじゃあキスもできなくなるでしょう」
肩に顔を埋めて、怨み事をいうかのように囁いてやった。
アキラの柔らかな髪が頬を撫でて、少しもどかしい。
するとまた、アキラは可笑しそうにくつくつと笑いだした。
「何がおかしいの」
「いいえ、の言う通りだと思って」
「当然」
「ごめんなさい、」
「ふん」
「愛してるのは、本当ですから」
「・・・仕方が無いから、信じてあげる。だからキスして」
信じるのは、このつよい熱。
End.
ニセモノ万歳(殴)。
このアキラが某ネクロマンサーちっくになってすこし焦りました(汗)。
でも好きです。手首キス(そこか)。
こんな駄作で(しかも送り付け)申し訳ないのですが、東條真樹様へvいつもお世話になってますv