I wish ...
デュオはカトルと一緒にマグアナック隊に匿われていた。
かなり不本意ではあったのだが、身を隠し、息を潜める以外に手立てが無かったから仕方ないといえば
仕方ないのかもしれない。
それでも。
「畜生腹立つよな、ふざけんじゃねぇっつーの」
デュオは所在無さげに視線をさ迷わせながら悪態を付く。
コロニーを盾に取られてはどうしようもないから、何も出来ないのが腹立たしい。
「ありゃぁヒイロ死んだだろうし、ああもうこうなりゃ自分の身一つでOZの本部に突っ込んであの女司令官
絞め殺してやろうか、こうきゅっと」
「落ち着いて下さいデュオ・・・」
枕を腕で締め付けるデュオを、カトルがため息を吐きながらなだめる。
「うー畜生ー」
多少静かになったものの、やっぱりデュオはぶつぶつ文句を言っている。
実際、彼が腹立たしく思っている事はコロニーを盾に取られたことだけではなかった。
(あーもうのおかえりなさいのキスがーっ!)
・・・なんだかこっちが核でコロニーは附属品になりつつあった。
デュオは特にすることも無い。
外はお祭をしているような気はするが、どうもこう気分が乗らないのは事実で、それが貰えるはずだったキスを
逃したせいなのが明白になりつつあって気分が悪い。
だからふて腐れて誰の邪魔にもならないような隅っこで寝転んでいたりする。
ちょうど日陰で何だか余計に気が滅入ったが。
ふと、誰かが自分の前に立っているのに気が付いた。
めんどくさいとかなんとか思いながら顔を上げると、そこには顔からなにまですっぽり布で覆い隠したひらすら
怪しいのが一人。
「だれだよあんた。俺、祭に出てく気ないからな」
デュオはふーんだ、とその人物に背を向けた。
と、その人物が唐突に口を開いた。
「そうかそうか。じゃ、キスはいらないわけだ」
デュオはがばっと起き上がった。
「なっ、えっ、まさか・・・」
しどろもどろになりながら強引に布を奪うと、その下にあったのは。
「よう、生きてたな」
会いたくてしょうがなかった、の顔だった。
「っ!」
勢い余ってデュオはを押し倒していた。
「いや・・・なにもさ、思いっきり横っ面張り飛ばさなくても・・・」
デュオは腫れた右頬をさすりながら呟いた。
あの後派手に平手打ちを食らったデュオは、ちぇっとかいいつつ久しぶりに会えたに抱きついて甘えていた。
子供扱いするなとか言いつつ、都合の良い時だけこれか、とちょっとは呆れながらもまぁ押し倒されるよりは
いいかとか思って放っておいている。
「なぁ、でもどうやって俺を見つけたんだ?もしかしてプロフェッサーGが何か言ったとか」
「いや、私の個人行動だ。・・・ほら、出撃の時お前にわたしただろう、お守り」
「ああ、これか?」
デュオは紐で括られた綺麗な翡翠の小玉を取り出した。
「それ発信機だ」
「・・・・・マジで?」
「おう。私の作った受信機にしか反応しないヤツ。あ、ついでにデスサイズにもくっつけといてやったから」
感謝しろといいたげな、尊大な態度では笑った。
「何時の間に・・・・・・・?」
デュオはちょっと顔色を悪くした。
「・・・ここにはどうやって入った?」
「別に、堂々と」
「いいのかよ、マグアナック隊・・・」
デュオは別の意味で青くなった。
「なぁなぁそれよりさ、約束の」
デュオはようやく思い出して、に強請りはじめた。
「ちっ覚えてたか」
とかなんとかが呟いたのは気の所為と思うことにして、デュオは更に言う。
「まさか約束破るとはいわないよな、いや破るなんて言わせないぜ」
さすがにデュオも真剣になっている。
「あーあーわかったわかった」
はぐいぐいデュオを押し戻して、まだ赤いデュオの右頬にキスをした。
「・・・こっちじゃねぇの?」
デュオは唇に指を当てて尋ねた。
「ははは、ハワードの所まで戻ってこなかったからな」
「あっずりぃぞ!」
デュオが再びふて腐れはじめた。
その時、マグアナック隊の一人が「カトル様がお呼びです」とデュオを呼びに来た。
「行ってこい行ってこい。私は逃げないから」
は薄く笑ってひらひら手を振った。
OZの襲撃の発覚と、その夜襲への準備。
そんな混乱の中、デュオはを見失ってしまった。
「畜生!」
それでも、ガンダムパイロットとして彼女を探しに行く事は出来ない。
今は、自分とガンダムを脱出させなければいけないから。
我が身を犠牲に、とするマグアナック隊員達や街の人々のためにも、ここで死ぬことは二人には出来ない。
そしてデュオとカトルは無事ガンダムが格納してある輸送船までたどり着き、飛び立つ準備をはじめた。
惚れた一人も守れない自分に歯がゆさを感じながら、重い格納庫の扉を閉めようとした、その時。
「−−−行ってらっしゃい、デュオ」
の声が、確かに耳に入った。
「!」
見れば、格納庫の扉の外にが立っている。
デュオは閉まり掛けた扉から身を乗り出すようにしてに触れた。
「生きてたんだな」
「ああ」
は微笑んだ。
「デュオ・・・今回の分は特別に前払いしてやるから、絶対に死ぬんじゃないぞ」
そう言って、デュオに口付けた。
愛しいものへ贈る、深いキスを。
「いいか、もし死んだりしたら死体拾って女装させて写真とったりして悪戯してやるからなっ!
自爆でもして木端微塵になってたって意地でも復元してやるんだから!」
キスの後、が顔をほの赤くさせながら叫んだのはそれだった。
「・・・絶対、死ぬなよ」
は飛び立った輸送船を見守りながら祈るように呟いた。
「・・・前にも増して絶対に死ねねぇじゃねぇか・・・・・」
顔を青くしてそんなことを呟くデュオが居たかどうかは定かではない。
end.
後書き
女整備士ヴィレッタ様(仮名)シリーズ第二弾〜♪
前とは違った意味で死ねない不幸度+10のデュオ(笑)と前にも増して強いヒロイン・・・。
どーすんだこの始末(聞くなヨ)・・・。
その上マグアナック隊の方々が阿呆な役どころで申し訳ない・・・・(汗)いやぁ、見逃しちゃぁだめですよねぇ。
そうそう、今ごろ判明しましたが、私はフツーのヒロインちゃんが書けないようです。。
・・・笑うしかないかもしれない今日このごろ。
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