アリアの唄
「レゴラス!」
エルロンドの会議の召集が辺りの種族一帯に掛かってから、ずっとは、美しいエルフ馬を駆り、闇の森から
やってくる筈のレゴラスを待ちわびていた。
は裂け谷に住む半エルフ、レゴラスの父スランドゥイルが君臨する北部闇の森はあまりに遠かった。
必然的に、二人離れて暮らす時間は酷く長い。
故に、例え再び中つ国を支配しようとその鳴動を復活させた冥王の指輪が発見され、レゴラスはその対処のため
に開かれる会議に呼ばれたのだとしても、そんな事はにとってはどうでも良いことだった。
そして、はやっと見つけた。
手を振り、名を読んで。
走り寄るのももどかしく、レゴラスに跳びついた。
「、全然変わっていないね」
「貴方も変わらってないわ」
レゴラスは微笑んでの額にくちづけ、もくすぐったそうに笑った。
「そうかな?私は随分自分が変わったと思っていたけど」
「どのあたりが?」
「弓の腕も上達したよ。父上に誉められた」
「けど相変わらず、料理は苦手なんでしょう?」
顔を見合わせて、笑いあった。
すぐ傍まで迫る、絆を絶たんとするものの足音にも気付かずに。
「征くの・・・?」
風が谷を吹き抜ける、まだ太陽も顔を見せない朝早く。
エルロンドの屋敷の片隅、水時計がゆっくりと時を刻む小さな東屋の陰に、並んで腰を下ろしながらは尋ねた。
レゴラスは小さく笑いを・・・苦笑を零して、吐息と一緒に言の葉を紡ぎ出す。
「征くよ。影横たわる国、モルドールへ」
「そう」
は目を伏せ、じっと自分の掌を見つめた。
「男だったら良かったのに。私が」
そしたらレゴラスと共に征くのに、と呟くように言うの顔を、レゴラスが覗きこむ。
「アルウェン様は強い。その強さが・・・羨ましい」
「は今のまま、変わらなくて良いと思うけど」
「レゴラスにはわからないわ」
ふぅ、とはため息をついた。
「そうだね、私はまだ知らない事が多すぎる。君のことは、全て知りたいのに」
の頭を抱き寄せて、レゴラスは静かに言った。
心地良さそうに目を閉じ、はそれでも諦めたように微笑う。
「だれかを完全に理解するなんてできない。・・・自分のことすら、わからないんだから」
朝靄の向こう、そこに確かに在る山脈を透かし見るように、は遠くを眺める目をしていた。
「レゴラスのこと、好きよ・・・・・征って欲しくなんかない。けど、貴方は征ってしまう」
「心はいつも、の隣に居るつもりだけれど?」
拗ねた子供をあやすように、レゴラスはの柔らかい髪を指で梳いた。
「うん、きっとそうね。だけど、死んでしまうかもしれない。指輪の亡霊も、白のサルマンも指輪所持者一行の
行く手を阻む。・・・・・レゴラスが死んだりしてしまったら、悲しくて悲しくて・・・私も死ぬわ」
「だけど、死なないかも知れない。死なないよ。もう一度、君に会うまでは」
ゆっくりと、物語を語り聞かせるようにレゴラスは言う。
「もうすぐ、エルフには神話の世界に入るべき時がくる。これが最後の大仕事だよ。終えたら、必ずを迎え
に来るから」
は顔を上げて、レゴラスの瞳を真っ直ぐに射た。
レゴラスは微笑んで、瞼の上にキスを落とす。
「・・・・・・信じて、待ってるわ。絶対に、帰ってきて」
「仰せのままに」
少しおどけた風に言うレゴラスに、やっとも微笑んだ。
「約束するよ。帰ってくる」
「あなたを信じるわ」
朝日が、柔らかく降り注ぐ。
end.
後書き
すみません白状します、コレ部活中に打ちました(爆)。
やる気無さ過ぎ部長。最悪です。
短いし・・・。
でも、レゴラス王子は楽しいです。