ハルカ...
「ありがとう、フィーネおねえさま」
真珠は、アイツに何時の間にか懐いていた。
いつも唐突に姿を見せて、強引に人事に介入して来る、
まるで、自分の事のように必死になる、
『フィーネ』という人間に。
「ねぇ、瑠璃ってばー」
煩い。
正直、そう思いながら俺はソイツになるべく視線を向けないようにして、早足で進んだ。
「瑠璃っ!」
こういうのは無視だ。
後ろから纏わりついて来るが、いちいち構ってたら日が暮れる。
「瑠璃ってばー、・・瑠璃ちゃぁぁんっ!」
「アホみたいな呼び方はやめろっ!」
・・・しまった。
思わず振り返って叫んだ俺を見て、フィーネが嬉しそうな笑みを浮かべる。
「引っ掛かったーv」
「嬉しそうに言うな・・・」
だから俺はコイツが嫌いなんだ。
「それは置いといて、瑠璃」
「置かん。俺は急いでるんだ」
「そんなの見れば解るって。姫ちゃん探しに行くんでしょ?昨日はポルポタ一昨日はガト、今日は
どっこに行くのっかなー♪」
「唄うなっ!」
はぁぁぁぁ、と心底ため息が漏れた。
何なんだ、この能天気さは。毎日頭の中でパレードでもしてるってのか?
大体・・・。
「・・・・・ポルポタもガトも、強制的にお前が俺を連れてったんじゃないか」
「んーそうだけど、わたしも姫心配だし」
「それで、行く先々で珠魅が殺される、ってか?」
ポルポタではサフォーの核が。ガトではルーベンスの命と核が。
宝石泥棒に奪われた。
・・・俺の、目の前で。
「気にしてるの?」
「気にしない訳あるかっ!・・チクショウ、やっと仲間が見付かったと思えば・・!」
がづっ!と音がして、俺が拳を叩き込んだ樹の幹が揺れる。
「・・・・ごめんね」
すまなさそうな声色だった。
「何で、お前が謝る」
「謝りたいから。ごめんね」
「・・・ふん」
「ねぇ、瑠璃」
「煩い」
「珠魅じゃないと、瑠璃の『仲間』になれないかな?」
驚いた。
何を言い出すのかと、思った。
また歩きかけた足を、フィーネの方に向ける。
寂しそうに、微笑っていた。
儚げに。
「やっぱり、そうなのかな。瑠璃は、珠魅の仲間しか求めてくれないの?」
「・・・・・・そんなこと、考えた事は無い・・」
俺はずっと探していた。
滅びの運命を背負ったと言われる同胞を。
真珠姫を、珠魅の都市へ連れて行く為にも。
なにしろ珠魅は狩られる一族だ。
狩る身である他の種族は、信じられない。
けれど、こいつは。
そういえば。
真珠は、アイツに何時の間にか懐いていた。
いつも唐突に姿を見せて、強引に人事に介入して来る、
まるで、自分の事のように必死になる、
『フィーネ』という人間に。
たった一度だけ、会っただけで。
−−−ねぇ、瑠璃くん。また、フィーネおねえさまに逢えるかな?
−−−また、逢いたいな。瑠璃くんは?
−−−フィーネおねえさまは、きっと、受け入れてくれるとおもうの・・・。
「拒絶、しないで。わたしは、瑠璃も姫もルーベンスも、みんな好きだよ?」
拒絶。
受け入れてくれると。
一瞬、真珠とコイツの面影が重なった。
俺はまた、踵を返した。
フィーネに背を向けて。
「瑠璃・・」
「ロアだ」
「え?」
「この辺りで周ってないのは、ロアの街だけだ。行くぞ」
また、歩を進める。
そうだ。あまり立ち止まっていると、あの方向音痴な真珠の事だ、どうにか自力でドミナあたりに
戻ろうとして、てんで方向違いの遠いところまで行くだろうから。
「い、行くよ、待ってってば!」
追い縋って来る。
横に並ぶ。
また、いつもの笑顔だ。
「瑠璃は一人じゃ迷っちゃうもんねー♪」
「誰がだっ!」
麗らかな、昼下がり。
end.
後書き
や・・やっと出来ました、瑠璃×女主。
瑠璃君、性格が掴めなくて悩み倒しました・・・(泣)。
ああ、でも私の中の瑠璃×女主はこんな感じです。
素直になれない2人(主に瑠璃)とか片思い(主に女主)とか不器用な恋とか。
ウチの女主ちゃんが一見能天気娘な所為かも知れませんが(笑)。
あ、ちなみに。ウチの女主は真珠姫のことは姫と呼びます。姫と(強調)。
他の人はだいたい名前呼びです。多分。