定例挨拶
「・・運命からは逃れられんぞ」
知恵のドラゴン、群青の竜神メガロードに続き、紫紺の霊竜ジャジャラをも屠り、マナストーンを手に
入れた後。
フィーネとラルクは、樹に抱かれた家へ戻っていた。
ぎぃ、と扉のきしむ音と一緒に、ラルクは静かに言い放つ。
振り返ったフィーネは、ドアの取っ手に手をかけたまま、眉根を寄せる。
「あのさー・・・毎回毎回、それ言わなくたっていいんじゃない?」
そう言われて、ラルクはちょっと困ったような顔をした。
「帰り道でちゃんと言ったでしょー?家に帰ってお茶飲んで果樹の収穫してペット牧場の世話して
お風呂入って眠って、明日には白の森に行こうってー」
「いや、確かにそうなんだが」
むぅ、と頬を膨らませるフィーネに対しラルクは、気まずそうに視線を外した。
「いやもへちまも無いもん」
確かにフィーネの言い分は正しいが、それをラルクに言ってもしょうがない。
取り合えず、真紅なる竜帝をクリアするまでは・・・いや、とにかく。
「・・・だがフィーネ、この前は骨の城へ行くといって何時の間にか海賊船に乗ってただろう」
「えー、だってバーンズに頼まれ事してたし」
フィーネの至極当然そうな言葉に、がく、と自分の手斧に体重を預け、ラルクは頭を深く垂れた。
ティアマットの依頼は、つまりフィーネ自身の身に関わる事は、
海賊とはいえオットセイの頼み事より下か・・・?(堕ちたとはいえ知恵の竜だぞ)
本気で悩んだ。
どうでもいい補足だが、バーンズはオットセイではなくセイウチである。
「どーしたのラルク、気分悪い?お茶飲んでく?」
「・・・いや・・・・・・」
これ以上此処に居ても、疲れるだけだ。
ある意味、ラルクのその判断はひたすら正しい。
「帰っちゃうの?」
うっ
しかし、どうもフィーネのその寂しそうな物言いには敵いそうも無かった。
「・・・少しだけ、邪魔するか」
ふぅぅぅぅぅ、と長く吐いた息に乗せ、ラルクは呟くように言った。
「やったー♪コロナ、コロナー!お茶の葉あったっけー?」
ぴょん、とフィーネは跳ね、勢い良く扉を開けて中を覗き込んで叫んだ。
「ごめんなさい、今切れてますー」
しかし返ってきたのはコロナのすまなさそうな声。
「ああ、ならいい、俺は帰」
「じゃードミナまで行って買って来るね♪ラルク、帰っちゃ駄目だよ!」
その場でUターン、さっさと立ち去ろうとしたラルクは報われず。
きっちり念まで押され、足止めされてしまった。
フィーネは牧場からチョコボを連れてきて、その背に飛び乗り瞬く間に走り去っていった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ラルクは無言で頭を抱える。
すると、ぽんぽんと誰かが腕を叩いてきた。
そちらへ視線を向けると、そこに居たのは大きなバスケットを抱え、にこにこ微笑むコロナ。
「すいませんが、お師匠様一旦買い物に出かけると帰りが凄い遅くなるんで、果樹の収穫手伝って
いただけますか?」
フィーネがラルクの為に買い物に行った以上、ラルクが断れるはずも無い。
そして。
結局、フィーネが帰ってきたのは日も暮れはてる頃。
ラルクが果樹の収穫のみならず、ペット牧場のほうまで手伝わされたのは言うまでもない。
今更ながら、フィーネに甘い自分を疎ましく思うドラグーン、ラルクだった。
「・・・・フィーネ、白の森に行くんじゃなかったのか」
「ちょっと待ってー、今楽器作りに挑戦してるの!ねぇ、ドリアードとアウラ、どっちがいいと思う?」
「・・・・・・・・・・またこれだ」
end.
後書き
ラルク×女主、二作目ですーv私的には、これが2人の日常、みたいな感じです(笑)v
女主に甘いラルク。どうも情けないラルク。まだまだ出会ったばかりですから。これから頑張って免疫造って
ください(笑)。貫禄が出るのはまだ先。
仕事(ドラゴン退治)が一向に進まないラルク・・・。その上手伝わされてます。
それに対し、ある程度無頓着な女主。師匠が師匠なだけに、中々いい性格してるコロナ。
哀れなのは確実にラルクですな(笑)。