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ユニバーサルファッションとは、

ユニバーサルファッションというのは、私(鈴木淳)が平成8年頃に使い始めた言葉です。障害を持つ人や高齢の人にとって、身体機能を補う機能を持った衣服が必要です。しかし「障害者用」や「高齢者用」の衣服は欲しくないことから、特定の人のための特別な服を作るバリアフリーというアプローチではなく、業界全体が取り組むユニバーサルというアプローチでなければ問題は解決しないと考えたからです。

業界全体が「ファッションについての悩みや不満」を解決していこうという意思と商品を提供することで、サイズ、体型、身体機能、介護などの多くの問題に対応できる市場システムができると考えます。それが「ユニバーサルファッション」の活動を始めた理由です。

平成12年 商品開発マニュアルPDFファイル700KB>>


平成7年から8年(カネボウファッション研究所在職時)に障害者のファッション意識調査を実施
平成7から10年障害者高齢者衣服研究交流会参加
平成8年から10年 岐阜県ノーマライゼーションファッション推進事業を立ち上げ実施。
平成10年4月退社を機にそれまでのネットワークを中核にして自宅でユニバーサルファッション協会を設立。
平成11年3月ユニバーサルファッション協会発起総会開催。発起人代表 事務局長兼会長
平成11年4月四谷荒木町事務所に移転
平成11年6月今居啓子氏に会長を依頼
平成11から12年 委託事業を個人で実施し協会の収入に当て基盤整備を図る。
平成12年 銀座に事務所を移転
平成13年11月 NPO法人化 副理事長に

※活動詳細はユニバーサルファッション通信バックナンバーで確認いただけます。

以下の文章は平成12年当時のものです。

1)全ての生活者が、ファッションを楽しむために。

ファッション業界の役割は、生活者にファッションを通じて喜びを提供することだったはずですが、いつのまにか、「お客様」ではなく、「売上」という数字だけを重視するようになってしまいました。

その結果、効率化のために多くの生活者の声が無視されてきたのです。

ユニバーサルファッションは、この無視されたきた人たちにも公平に商品と購入機会を提供するために生まれました。

つまり、若くて健康で、標準的なサイズ・体型だという「選別された」一部の人たちだけではなく、年齢、体型、サイズ、身体の機能、障害等に関わり無く「全ての」生活者がファッションを楽しめる社会作りを目指すのです。

ユニバーサルファッションは障害者や高齢者の専用服や専用サービスを作るためだけのものではありません。多くの企業にとって、現在の顧客にさらなる満足を与えるための方法、新たな顧客を創造する方法でもあるのです。

ユニバーサルファッションに取組み、顧客重視の商品や売場開発をすることが、結果として利益を企業にもたらせてくれるのです。

顧客が何によって満足を得るかは、作り手や売り手ではなく顧客自身が最も良く知っています。ですから、顧客の声を生かす「理念」と「プロセス」こそが重要なのです。ユニバーサルファッションの開発とは、「顧客と共により良いものを創り上げていく」ことなのです。

ですから、たとえ障害を持つ人のために創られた商品でも、加齢に対応した商品であっても、着用者を無視して企業の都合が優先されたり、デザイナーの勝手な思い込みや自己表現だけで創られた商品はユニバーサルとは呼べないのです。

2)日本は世界で最も早く高齢化が進む

いますぐに対応しなくては間に合わない

日本は世界で最も早く(欧米諸国の3〜5倍というスピードで)高齢化が進んでいます。現在では国民の平均年齢も40歳を超え、世界でも最高齢の国になっています。

しかし、日本のファッション業界は依然として若くて細い平均サイズの商品ばかりを生産しつづけ、高齢化の対応は著しく遅れています。

お客様志向や顧客満足という言葉が使われて久しいのですが、最近ではますます「欲しい服がない」「着られる服がない」「体型に合わない」という人が増えているようにさえ感じられます。これは、高齢者だけには限りません、障害がある人、サイズが大きい人、最先端ファッションを好む人など、様々な人達から不満の声が発せられているのです。

少子高齢化の現在、「ファッションは若くて細い人のもの」という固定観念は、ファッション業界を苦しめてようになってきています。

9号サイズが着られない女性は、自分の身体を恨み、卑屈になり、消費を控えます。また、ファッションは若い人のものだと考え、興味を失う高齢者も多いようです。

ところが、ヨーロッパでは、齢を重ねるほどにおしゃれになります。ファッションの主役は、生活も人格も充実した高齢世代です。

アメリカでは多くの人種や体型が混在しているため、サイズや体型の選択肢が驚くほど豊富です。

最先端モードの世界でも、太ったモデル、義足のモデル、白髪の高齢モデル等が登場するなど、年齢や体型、障害に関わらず誰もが美しいという美意識の見直しが始っています。

既に欧米では、「ユニバーサル」であることが前提となっているのです。

大量生産一辺倒により歪んだ市場を正常化し、ユーザーが本当に満足できる商品とサービスを提供することにより、ファッションから離れていった人達を呼び戻さなくては、ファッション業界に未来はないのです。

日本も早くこのような欧米型のユニバーサルな意識と市場に変革しなくてはならないでしょう。この市場のギャップを埋めるものこそが、ユニバーサルファッションなのです。



ヨーロッパ  高齢者がファッションの主役である

アメリカ  人種やサイズ・体型の違いがカバーされている

日本   健康で標準サイズの若者だけがターゲット

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3)バリアフリーとユニバーサルデザイン

「ユニバーサルデザイン」とは、年齢・体格・人種・障害などに関わらず、誰もが自分の力で自由に好きなことができるような社会環境を創ろうという思想です。

都市、建築、交通、家電、情報等の業界ごとに「ユニバーサル」に対する取組方法は異なりますが、全てに共通することは、全ての人の生活を公平に、豊かに、幸せにすることを目指そうという理念と、生活者を主役とした開発プロセスを重視していることです。

よくユニバーサルと混同される言葉にバリアフリーがあります。

バリアフリーは、既にある不便さを無くしていこうという考え方です。障害者や高齢者の専用品を作っていく活動ともいえるでしょう。

衣服における不便さが存在する以上、バリ アフリーという「障害者」や「高齢者」のための対処療法的な取り組みも重要ですが、ファッションは、自分が「こうなりたい」という理想像や憧れを大切にするものです。「障害者向けの服」「お年よりの服」等の特別なものになってしまっては、ユーザーに敬遠されてしまいます。

障害者や高齢者のための「バリアフリーファッション=専用服」を作るのではなく、彼らの不便さや不満から学ぶことで「一般商品」の機能や性能を向上させ、対象を広げることが重要なのです。



福祉 :(障害者や高齢者など)社会的弱者を保護・支援し、豊かな生活を保障すること

バリアフリー: (障害者や高齢者にとっての)不便さや不自由さを取り除いていく対処療法的「行動」

ユニバーサルデザイン :障害者や高齢者を含めて)全ての人が便利で快適な社会を作る「思想」「プロセス」:

ユニバーサルファッション :年齢・サイズ・体型・障害に関わり無く誰もがファッションを楽しめる社会を作る「思想」と「プロセス」

4)多くの選択肢を提供するユニバーサルファッション

ユニバーサルデザインの考え方は、都市や交通、建築などから始まったために、「全ての人が使う究極の商品」をイメージしがちですが、ファッション分野における顧客にとっての豊かな状況とはなんでしょうか?

それは「着られる服がないのは、こんな身体になってしまった自分が悪いからだ」と、顧客がファッションの犠牲者にならずに済むような状況ではないでしょうか。寝たきりであっても、障害があっても、サイズが特殊でも、「自由に好きなファッションを選べる」ことが豊かな状態なのです。

UDの一分野だからと建築や交通に習って、 「誰にでも着られる1枚の服」を目指すことは、必ずしもユーザーにとって豊かな状況にならない場合があります。ファッションは自己表現、自己実現のために欠かせないものです。自由に好きなものを選べるためには顧客の声に基づく「多くの選択肢」を提供することが重要なのです。

UDでは1つの製品だけでUD商品として完結することができる場合もあります。しかし、ユニバーサルファッションでは、業界全体がそれぞれの企業毎にターゲットを決め、役割分担をしながら様々な商品を供給してこそユニバーサルな状況といえるのです。

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5)ユニバーサルファッションのターゲットは?

「これまでのファッション市場では欲しいものが手に入らない」という『潜在顧客』こそ、ユニバーサルファッションの対象者ということができます。

・自分の体型にあう素敵な服がない。

・自分のサイズには欲しい商品がない。

・ヤングのブランドが好きだが自分の体型には合わない。

・身体が不自由なので着脱しやすい服が欲しい。

等などの不満や要望は、これまで少数派のニーズとして無視されてきたのではないでしょうか。

これまでは、『顕在顧客』つまり、POSで売上実績が把握できる平均的な消費者を顧客として認識していました。

しかしPOSデータでは、売れなかった理由、顧客が離れた理由はわかりません。わかるのは売れた結果としての平均的ニーズだけなのです。

消費者がほんとうに望むものがわからないので、過去の実績を重視し、「限定された顧客の平均的ニーズ商品」だけを提供するために、欲しいものがない、満足できないという顧客を増やしてしまい、売場離れを起こさせる結果になっています。

現在の商品の中には欲しいものがない(少ない)という「潜在的な顧客」こそターゲット

6)新たな顧客満足向上法として

  売上効率を追求することは、顧客を選別すること。

  売り場から締め出された顧客の不満はどうなるのか?

売上効率を追求するためには、売れ筋商品に重点化していくことは、これまでビジネスの基本として考えられていました。

しかし、顧客の生活や職業、体型、サイズなどが多様化している現在、商品を絞り込むということは、それだけ「売り場に欲しい商品がない状態」を作ってしまう可能性が高くなります。どんなにPOSデータを追いかけても、売り場になかった商品は数字には表れないのです。

効率化のために、売り場から締め出された商品を求めていた多くの顧客は、ますます欲しい商品が無くなっています。何度売り場を訪れても、自分の志向や体型に合う商品がなければ、不満をもった顧客は、黙って売り場から離れていきます。

できるだけ、多くのお客様に満足してもらうためには、多様な顧客の要望に適う商品を提案することが不可欠なのです。たくさんの提案は無駄のように思われるかもしれません。しかし、同質化商品による低価格競争によって喜ぶのはごく一部の顧客だけということを考え直さなければなりません。

将来を見据えたとき企業にとって不可欠なのは、自社商品を愛してくれる顧客をどれだけ多く確保するかということなのです。一時の売り上げのために、顧客に不便さを強いたり、不満を与えていては、売上や利益は低下していき、企業の存続もできなくなります。

ユニバーサルファッションは、顧客の満足度を高めるための方法です。

このユニバーサルファッションの考え方を経営の中に取り入れ、自社の利益を高めることが、顧客にとっても、企業にとっても、互いにメリットがあるビジネスとなるのです。

顧客にとって欲しい商品が無いのは、

標準ではないニーズを持つ顧客が悪いのではなく、

そのような商品を提供していない業界の怠慢が原因。

ユニバーサルファッションによる提案が顧客満足度を高める。

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