終章 『見えない女』
『何だ、これじゃあ抽象的過ぎて何にもわかんないじゃないかぁ』

オフレポと称する資料を机において結城五郎は呟く。結城五郎は探偵である。

このオフレポはひどく抽象的であり、特に誰が誰かを特定することが困難であるように思う。

『それなら、最初からそのオフに参加すればよかったのではないですか』

机におかれた資料を手に取り、片付けながら助手の藤岡綾子はこう続ける

『侍も、刀で相手に斬りつける場合、刀の柄を当てる気持ちで踏み込まなければ刀は相手に当たらないそうです。

先生も資料を取り寄せるだけでなく踏み込んで、オフに参加すべきだったのです』

『うーん』

相変わらず藤岡綾子の意見は的確だった。

ただ、話はとてもわかりやすかったが、藤岡綾子がなぜ侍の刀でたとえをしたのかはどうしてもわからなかった。

(了)