でんしゃのしくみ

第1回・鉄道信号のしくみ


もともと鉄道での信号は、道路における信号と役割が少し違っています。

道路の信号は、交差している複数の交通の整理が主目的ですね。 (たとえば自動車と自動車、あるいは自動車と歩行者のように)

鉄道の場合は上のような目的もあるにはありますが、基本的には、

「前に進んでも安全か否か」を示していると言えます。

たとえば、自動車の場合は前の車について走っていて、前車が止まったら自分もすぐに止まることが出来ますが(あるいは、ハンドルを切ってよける、ということも考えられる)、鉄道の場合、すぐ前の列車が止まったとしたら、当の列車はすぐには止まれません。 勿論同じレールの上を走っているわけですから、よけることもできません。

このようなわけで鉄道では、前の列車との間隔を充分にとっていなければ次の列車は走れないようにしなければならないのです。で、前の列車と充分に間隔をとる方法として、

「ある区間には1本の列車しか走れない」

というように決めているわけです。この仕組みを「閉塞」と呼びます。

この区間というのは、路線によって長さは色々ですが、数100m〜数Kmといったところでしょうか。

列車の本数が多いところほど、1区間の長さは短くなっています。

図で説明すると(複線の場合)、


(いくらか単純化した図です) #この図で停車場は線路が2本に分かれていると思って下さい。

列車は停車場(主に駅)を出るところにある「出発信号」をまず見てこの信号が(「進行!(すすめ)」という意味)だと 停車場を出ることが出来ます。 停車場から本線に入るまでの区間は閉塞区間となっていて、1区間には 1列車しか入れません。そのためこの列車が閉塞区間(1) にいる間、 その入り口にある「出発信号」は(「停止」の意味)を示して、次の列車をそこに入れないようにするわけです。

その先にある「閉塞信号」も青だと本線(停車場じゃないところ)に入ることが出来ます。この区間(閉塞区間(2))に列車が入った後も同じように閉塞信号は赤を示します。

さらに、1つ手前の区間には列車がいなくなるために、出発信号は(「注意」…一つ先は停止だという意味で)を示します。
(路線やダイヤの都合によっては赤のままの場合もありますが)

(その2)で描いた図では本線には1つしか閉塞区間はありませんが、実際にはいくつかに分かれていることが多いです。
(閉塞区間の数しかその停車場間では列車が走れないので)

2つの停車場間にいくつかの閉塞区間がある場合、手前から順に

「第n閉塞」、「第n-1閉塞」……「第1閉塞」(nは自然数)

という風に番号を付けて呼んでいます。

#番号がだんだん小さくなっていくのは、「あと幾つあるか」が分かるようにしているためだと思われます。

各閉塞区間のはじまりには、それぞれ信号機があり、同じように働きます。

#TrainSimulatorなどでよく運転士が「第1閉塞進行!」などと言っているのは、

 「第1閉塞」信号が、「進行」を示している

 ということを自分に言い聞かせているわけです。

…少し話がそれましたが、

次の停車場に近づくと、今度は「場内信号」というのがあります。 図では信号機が2つ描いてありますが、これは停車場が2本の線路に分かれているためです。分岐の数がもっと多い場合もその数だけ信号があるはずです(1箇所にある場合はまれですが)。

この場合、列車から見て右側(図上では下側ということになる)の線に列車が 進入可能な場合、右側の信号が青(場合によっては黄色も)を、左側の信号が 赤をそれぞれ示して、どちらの線に列車が入れるかを知らせています。

停車場に列車が入ると、その線についての場内信号は赤になります。 ここで停車場の分岐するポイントを切り替えて、左側の線に 入れるようにすると、左の信号が青または黄色となり、進入可能となります。

これで後続の列車も同じ停車場に入れるわけです。 列車が駅で待ち合わせをしているときなどがこの例にあてはまります。

…これが複線区間での停車場間での信号システムです。 各停車場間について同じように信号が設置されていて、 それぞれが動作しているわけです。

これまで複線区間の信号のシステムについて書いてきましたが、 単線の場合もあまり変わりません。

単線では、本線に対向してくる列車がいるかも知れない、というわけで、

「対向列車がある場合、その区間の信号はすべて赤になる」

という要素が加わるわけです。

すなわち、停車場間に対向列車がいるという事は、自車は停車場を出ることが出来ないということです。

なお同じ方向に2列車が続けて走る場合は複線と同じといえます。

・終わりに 最初に書いた、「ATSなどの元となる信号システム」というのが どういうことかと言うと、 それらの保安装置は「信号に従うための補助装置」 であるからです。信号が故障していない限り、信号に従っていれば 事故は起こらないはずです。今までいくつかあった列車衝突事故は すべてこの基本を守らなかったために起こっています。
(先日の大月事故もこの一例)

#信号は守ろうね!

ということで、この講座は終わりにします。


参考文献  運転取扱基準規定 昭和39年12月運輸省通達第33号

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