とんちんかん道具館


取材編「砥石」
刃物の硬さで使い分け

 刃物は研ぐ事によって、切れ味が維持される。家庭で使う刃物を研ぐならまず砥石を使ってみよう。今回は、砥石についての基礎知識である。

 砥石には、天然と人造とがある。天然は、地中に埋蔵されていたもの。砥石山から掘り出す。人造は、カーボン、研磨剤、接着剤を練り合わせたもの。

 天然砥石は、研いだ後の切れ味が長続きする点で優れている。水は、研ぎながら表面に補給する程度でいい。水に長くつけておくと割れることがある。天然砥石は、大村砥(和歌山県)、対馬砥(長崎県)などと産地名で呼ばれるものが多い。

 人造砥石は、組成が均一で割れにくい。刃付けは早く、価格が安い。ただし、研ぐまえに数分間水につけておかないといけない。研ぐときの気分は天然にはおよばない。

 天然、人造とも、粒子の粗さによって、粗砥、中砥、仕上げ砥、に分かれる。粗砥は、刃が欠けたときとか、刃の具合を修正するときに使う。家庭で粗砥を使うことはほとんどない。刃の切れ味が落ちたときには中砥、切れ味を持続させたいときには仕上げ砥、でいい。家庭用は、この二種類で十分。一種なら中砥にしよう。

 硬い刃物には柔らかい砥石を、軟らかい刃物には硬い砥石を、というのが選ぶときの基本ルールだ。「和鋼」といわれる日本古来の鋼でつくられた高級刃物、たとえば日本刀、和包丁、大工道具の研ぎを仕上げるには、京都で産出される合わせ砥のような硬い砥石を使う。ステンレス鍋のような硬い材質の包丁を研ぐには軟らかい砥石が合う。

 砥石は固定しないと危険だ。大きくて重量のあるものは、ぬらした布を敷くだけで安定する。小さいものは初めから、台付きのものを買おう。台が付いていないものには、固定する台を用意すればいい。金属パイプで締め付ける方式のものはかなりしっかりと固定できる。価格は1500円程度。プラスチック製の固定台は6〜700円。

 セラミックとすり合わせて刃を研ぐ包丁研ぎ器や、研ぎ棒もある。これらは1000円もしない。

 

 

 
(小林 好孝)
 
尚、この記事は「朝日新聞」1999年5月23日付に掲載されたものです。

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