ログハウス 自宅用にも


健康とぬくもり求め
手間・費用かかるけど/不況の中で急成長

 自宅用にログハウスを建てる人が増えている。バブル時代は別荘用の購入が多く、その後はキャンプ場の建物など公共事業の注文が目立った。現在は「木のぬくもりに安心する」「ハウスダストが少ないのでは」という夫婦に人気だ。防火の規制も次第に緩和されてきており、メーカーは「住宅業界は不振だが、ログハウスは今後の成長株」と期待している。
 1月、ログハウスメーカーのアールシーコア(本社・東京)は、若者が集まる東京・代官山に新しい展示場をオープンした。ガラス張りのドーム形、和風建築との折衷形など、さまざまな種類のログハウスが展示されている。約25億円をかけて買った自前の用地だ。
 1986年は4棟だった販売戸数も98年は500棟、年商50億円を達成する勢いだ。7割が自宅用という。「この業界に限って不景気とはいえない。2年後に株の店頭公開、将来は北米を中心とする世界市場をめざす」と意気盛んだ。  98年1〜9月の住宅着工数は前年同期比13.7%減と低迷。住宅業界全体としては不振だが、ログハウスメーカーは軒並み好調だ。この時期のアールシーコア社の自宅受注棟数は前年同期比で67%増。
 2年前から自宅用ログハウスの販売を始めた越井木材工業(本社・大阪市)は、「契約が倍増した。3億円近い売上になる」という。逆に、別荘用、キャンプ場の建物など公共事業の受注は、横ばいか減少傾向という。
 日本のログハウス業者はすでに北米と同じレベルの約300社に達しているという。この人気にあやかろうと、大塚食品(本社・大阪市)は昨年、「ログハウス」という名前のレトルトカレーを発売した。きのこを使って自然派のイメージを打ち出したという。
 専門誌も約10誌発行されている。そのひとつ、「ログハウスプラン」の小田桐充編集長は「カナダでログの魅力にはまった人々らが建て始めたのが、15年ほど前。2000万円程度が売れ筋だ。木を多用しているため、従来の住宅に比べて割高だが、ハウスダストが少ないといわれるなど、健康住宅として人気が出ている」という。
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 山梨県に自宅用ログハウスをもつ美術大学教授の井上悦治さん(47)は「ログハウスに全く興味がなかったが、木の温かみが、子供を育てるのにいいと思った」と言う。雑誌カメラマンの堤長則さん(47)は、「アウトドアの延長線で、家にも人工的なものは少なくしたいと思った。自然の中が一番。木や、まきストーブのにおいにほっとする」と話す。
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 ログハウスを含む木造建築物には、防火の規制がある。昨年7月、防火性能についての規制が緩和された。@規定の太さ以上のマシンカット材を使い、A防火措置としてログの重なり部分に熱膨張性の発泡材料を挿入するなどすれば、市街地でもログハウスが建てられるようになった。
 しかし、越井木材工業では「まだまだ前例が少ないので、役所に受理してもらうのに苦労する場合もある。もっと浸透すれば、かなり需要は増えていくのではないか」とみる。
 メンテナンスの難しい面もある。3年に1度程度は塗料を塗る必要があり、丸太のくぼみの掃除も手間がかかる。乾燥すると丸太がバリバリと音を立てるのに驚く人もいるという。6軒のログハウスをもつタレントの清水国明さんは「独学で建てたが、その大変さも喜び。より自然に近く暮らせるところが、ブームの理由だと思う」と話している。
尚、この記事は「朝日新聞」1999年1月27日付に掲載されたものです。

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