マナーに注意 ベランダ園芸


隣戸の不安・不満招く例も
洗濯ものに水漏れ/避難通路ふさがる

 ガーデニングブーム。マンションなどの集合住宅でも、ベランダに 鉢を置きたいという人は多い。育てる側には楽しみや安らぎにつな がる植物だが、見方を変えれば、避難通路として使えない、水漏れ して洗濯ものがぬれる、など不安や不満の対象になることもある。
 こうした事態を防ごうと、「ガーデニング可能」をうたい文句に売 り出されたマンションでは、入居後にマナーを含めた講習会を開く ところも目立ってきた。
 「上の部屋のベランダでかけていた水が漏れ洗濯ものがぬれてしまった ことがある。隣からは、成長した木がはみ出してくる。ガーデニング は、楽しむ方は面白いでしょうが、しない人には迷惑千万です」と、 横浜市のマンションの一階に住む40歳代の女性はいう。
 「植木鉢をめがけて飛んで来る虫が洗濯ものにまとわりつく」「排水口 が詰まって水が下に漏れる」「災害が起こったとき避難できない」。 トラブルは、後を絶たない。
 ガーデニングを楽しみたい側の人々も、戸惑いを隠せない。
 東京・三軒茶屋に住む奥田康夫さん(72)は、15年前、一戸建てからマ ンションへ引っ越した。庭いじりができなくなることが気がかりだっ たが、「マンションでも、ベランダに庭ができます」という販売会社 のひとことで入居を決めた。  一戸建てと同じ感覚で庭ができると思い込み、40〜50センチの高さに 土を入れボタンなどを植えた。ところが、後で管理規約を見て驚いた。 ベランダに土を入れてはいけないと明記されていたのだ。
 その後、ベランダの改修工事のために土を取り除いた。これを機に、 本格的な庭つくりは控えることにした。
同じような問題は今も起こりうる。奥田さんは「どの程度のガーデニ ングができるマンションか、直接確かめたほうがいい」と助言する。
 集合住宅管理組合センターの有馬百江事務局長は、マンションでベラ ンダ園芸を楽しむには限界がある、という立場だ。「できるかできな いか管理規約があいまいで、水漏れなど何か問題が起きるとトラブル に発展する。戸建て住宅と同じ感覚ではいけない」という。
ガーデニング仕様の物件/「気配り講習会」つき登場
 避難通路のことを考えて広いルーフバルコニーを設けるなどして、ガ ーデニングが楽しめる設計をうたったマンションも出ている。その中 にはマナーの指導をするところも目立ってきた。
 今春売り出された東京都葛飾区の「ライオンズマンション木根川中央 公園」には、奥行きを広くしたルーフバルコニーがある。ここでこの 夏から開かれているのが、「ガーデニング講習会」だ。
 季節ごとに楽しめる花の説明とともに、@水やりは下の階で洗濯もの を干していないか確かめてからAベランダは共用部分なので避難通路 のスペースはあけておく、などを徹底して教える。三階に住む杉野朗 子さん(32)は「前に住んでいたアパートはベランダが狭く、通路の確 保を考えたらガーデニングなどできなかった」と話す。
 主催している造園会社、日比谷アメニスの加藤仁・住環境デザイン室 長は「水やり一つ取り上げても、下に住んでいる人がふとんを干して いるかもしれない、というようなことは気づきにくい。ガーデニング 需要の掘り起こしにもつながるし、葛飾を手始めに、各地で講習会を していきたい」と話している。
尚、この記事は「朝日新聞」1998年10月31日付に掲載されたものです。

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