都市経営論

これからの都市経営において考えるべきこと


これからの都市経営においては、市民によって都市が選別される、という可能性について常に頭に置かなければならない。暮らしにくい都市に市民が永住しなければならない理由は何もなく、市民は暮らしやすい都市を選んで居を構えるようになると考えるならば、都市を経営するときには、住み心地の良い街・住んでみたくなる街をいかにして創っていくかが、最大の課題であると言える。その為には、都市を経営する主体である行政には、自分たちの都市をどのようなものにしていくかのビジョンが必要であり、市民がどのような街を望んでいるのかという調査、いわばマーケティングを行う必要がある。市民に最大限の住み心地の良さを提供する為の資金は基本的に税金なのだから、都市経営を行う者は常に税金を市民にとって有効に活用する事を心がけねばならない。それはすなわち、財政的に都市を破綻させないようにすることや、開発などにおいて根拠のない見栄だけの投資などは絶対に避けなければならないということである。
都市は市民が生活していて初めて都市たりえるのであり、都市の主役はあくまでも市民であり、その主役にいかに気持ちよく生活してもらうか、という点も都市経営の基本的視点として重要であると思われる。では、市民が気持ちよく生活するためには、具体的にどのような都市経営の方向性が必要になるだろうか。まず、何よりも、都市において求められることは、行政が、何を考え、何をしようとしているのかを伝える情報公開と、市民が何を行政に求めているのかを知る情報収集の2点が挙げられる。現代の都市経営においては、市民と行政の間に、情報の双方向コミュニケーションを成立させ、双方の信頼関係を築く事が何よりも大事な視点なのではないだろうか。次に、都市経営への市民参加・住民参加という事も重要になってくる。行政と市民が一緒に議論を進めていくなかでこそ、よりよい街づくりができるのではないだろうか。このようにして、市民のニーズをつかみ、市民と一体となって都市経営を行っていくには、都市に起こる様々な問題に迅速に対処していく必要がある。そこで、複雑化した今日の都市においては、行政システムが環境変化に対して自立的且つ能動的に対応し、問題に対処していく能力を身につける必要があるのではないだろうか。都市経営における視点として行政のシステムが変化を続けられるようにする、というものも必要なのではないだろうか。


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