都市政策特論
【9章】マイカル明石への提言
マイカル明石は開業から1年、予想以上の良い結果で推移しているが、このまま何もせずにいても現在の好調さを維持できるほど甘くはないのではないだろうか。そこで、マイカル明石に対していくつかの提言を行ってみたい。
@ JRのアクセス改善
マイカル明石の最寄り駅であるJR大久保駅には各駅停車しか停まらず、新快速は通過している。現在の乗降客の動きから考えれば、西明石までしか来ていない各駅停車を大久保駅まで一駅伸ばすとか、新快速を停めるといった措置も、休日の昼間に限っては行うべきではないだろうか。休日の大久保駅の混雑模様は、特に夕方を中心に限界に近いように感じられ、15分に一本しか電車が来ないという現状には厳しいものを感じさせる。列車の増発あるいは、新快速の停車によって、これまで以上にマイカル明石への来客が増える事は、マイカル明石だけでなく、JRにとってもメリットが大きいように思われる。少なくとも、姫路方面・神戸方面からの鉄道でのアクセスが改善されれば、さらにマイカル明石を訪れる人が多くなる可能性は非常に高いと思われるのだが。
A 駐車場問題の解決
マイカル明石は、開業当初から4000台というかなり大規模な駐車場を保有していたが、それでも週末を中心に幾度と無く駐車場が満車となり、付近に車が列を作るといった状態が発生している。このままでは、地域の交通を阻害する要因として槍玉にあげられる危険もある。出来得るならば今すぐ駐車場を増設することが一番であるが、それが無理ならば、鉄道利用や徒歩・自転車利用の促進の為の手段を考えるべきではないだろうか。これは、@のJRのアクセス向上と関係するが、JRのアクセスが向上すれば、車利用から鉄道利用に切り替える人も増えるかもしれない。特に、「マイカル明石往復割引切符」などをJRと共同で発売し、この切符に何らかの付加サービスを付ければ、車から鉄道への利用者の移動は十分考えられると思う。いずれにしても、駐車場は現状のままでは苦しいと思われるので、可及的速やかに駐車場の増設を行うべきであると考える。
B「楽しさ」の演出
マイカル明石は、確かに複合的施設の魅力を存分に発揮した時間消費型施設であるが、何度もマイカル明石を歩いているとどうしても飽きが来てしまう部分がある。特に、ショッピングゾーンや飲食ゾーンでは、日常の変化がそれほど大きくない事から、我々のインタビューでも頻繁に利用している人ほど「便利だけど、少し飽きてきた」といった言葉が聞かれた。この問題は、施設の改装等で解決していくと莫大なコストがかかる事は間違いないので、施設改装ではなく、施設の演出を考える事で解決できるのではないだろうか。
例えば、毎週違う形のイベントを週末毎に間断なく行う事で全く違った魅力を毎週発揮し続ける事が可能であると思われる。毎週、テーマを設定して、それに関するイベントを行えば、飽きが来る事はないと考えられる。このような、毎週違った演出を行う事で「変化」と「楽しさ」を生み出し、人々を集め続ける事が可能なのではないだろうか。
C 情報の交流と発信
マイカル明石には、映画館・アミューズメント施設が整い、2つの大規模店が多くの客を集めているが、そこに集まってくる人たちの間には殆ど交流がない。これらの客が交流するスペースやイベントを行う事で、今までにないスタイルのショッピングセンターが生まれてくるのではないだろうか。確かに、客の交流など非常に難しいが、いくつかのブロックに分けて交流コーナーを設けるとか、掲示板を創ってみるといった事だけでも十分何かが生まれる可能性を持っていないだろうか。又、それらの交流に対してマイカル明石が手助けを行う事によって、マイカル明石に強力なサポーターが生まれる可能性も秘めていると思われる。
逆に、マイカル明石から情報を顧客に発信して、そこから客とマイカル明石との交流を生み出す、という事も考えてみてもいいかもしれない。いずれにしても、マイカル明石が一方的に何かを提供するのではなく、客とマイカルが双方向で対話をしながら店創りをしていけば、今までと違った店が生まれる事は間違いない。
戻る
Copyright(C)1999 Tomohiro Ogawa All Right Reserved