都市政策特論
【第8章】大型店出店への既存店の対抗策を考える
ここまで、マイカル明石を中心に、大型ショッピングセンターの出店に関する影響について考えてきたが、ここでは、大型ショッピングセンターが出店したときに、既存のショッピングセンター・大規模店や商店街にはどのような対抗策があるのかについて考えていきたい。
まず、大規模店対大規模店での対抗策についてだが、これは非常に難しいと思われる。何故なら、大規模店の場合には、既存店の特徴を上手く利用しつつ、既存店が持っていない特徴を新規出店の場合に行うことが容易であり、また実行されているからである。これに対して、既存店はバーゲンや店舗の一部改装・品揃えの見直しなどによって対抗することがほとんどであるが、大抵は小手先の対応になり、抜本的な対抗策にはならないと思われる。抜本的な対抗策として比較的有効と思われるのは店舗の全面改装であるが、これに関しては費用がかなりかかる上に、改装期間中の休業というデメリットもあり、あまり行われてはいない。では、どのような手段があるのだろうか。これは今現在まで答えが出ていないと思われるが、あえて考えるならば、顧客を店のファンにしてしまい他店を利用する気を起こさせないような店づくりを日頃から行う、他店がまねできないような何かを持った店づくりをする、といった抽象的なものになってしまう。この考え方とは別に、スクラップアンドビルドを頻繁に行い、新規出店には新規出店で対抗し、既存店は少しでも業績悪化のきざしが見られたならばすぐにクローズするという戦略も考えられる。ただし、これでは、大手チェーンストア同士の体力勝負にしかなりようが無く、また、地域経済や地域商業に対して無責任な行為と言わざるを得なくなる。現実には、このスクラップアンドビルド戦略を行っているスーパーは多いが、このまま行けば、いずれ1社か2社のみが勝ち残るか、あるいは全てが共倒れになるかのどちらかしかありえないのではないだろうか。このような状況を続けていく事は、「出店こそが成長」という妄想の下での「収益大幅低下」という海原へ向かって突き進み、今まさに崖から落ちんとするレミングにたとえる事ができ、文字どおりチェーンストアの世界が「レミングの行進」を続けているという事が出来る。このような事態を回避するために、顧客を囲い込める店舗の開発と実施が必要なのではないだろうか。
次に、地元の商業地域、特に商店街の対抗策であるが、これに関しては、商店街を挙げての対抗策と、個店での対抗がの2通りの対策が中心となる。とはいえ、品揃えが豊富で値段の安い大規模ショッピングセンターと商店街の商店では品揃え・価格のどちらでも勝負するのは大変厳しいことが多い。そこで、個店での対策としては、大規模店が大量仕入れに向かない為にあまり置いていないが、それなりの需要のある商品を品揃えの中心にするといった、商品政策の面での対抗策と、大規模店では出来ないようなきめ細かな商品の説明や相談などへの対応といったソフト面での対応の、2つの方法が一般的に考えられる。また、商店街全体としての対抗策であるが、これは、商店街としての1つの方向性を打ち出し、例えば歴史的な町並みを前面に押し立てたり、イメージ戦略で新鮮さを打ち出して消費者にアピールするなどの手段を用いて大規模店に対抗する、あるいは、大規模店と無関係に生き残れる構造をつくっていくという方法がある。
いずれにしても、大規模店が1つ出店すれば、周囲の既存店は存亡を迫られるということであり、その対抗策は非常に打ち出しにくいということは間違いない。
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