都市政策特論

【第7章】マイカル明石から考える


今回、我々はマイカル明石の開業による周辺商業地域への影響について調査してみたが、調査を続けていく過程でマイカル明石のケースが、三田が現在抱えている大型店出店問題のモデルケースになるのではないかと考えるようになった。そこで、マイカル明石の出店をモデルケースにして、新三田駅前へのジャスコ出店・ウッディタウンへのマイカルタウン(ウッディタウンサティ)の出店の2つのケースについての予測と、特に既存の地域商業への影響について考えてみたい。

@新三田駅前へのジャスコ出店に関する予測 太陽電線の新三田駅前の工場が豊岡へ移転して、その跡地にジャスコを核としたショッピングセンターの出店が計画されていることが新聞等で報道されるようになってほぼ1年が経った。この間、三田市や商工会側の反対運動とゆりのき台自治会等ウッディタウンを中心とした出店を歓迎する側との意見対立が深刻化しているが、ジャスコが新三田駅前に出店することによってどのような事態が起こるのかという点については、実はあまり深く検討されていないような気がする。そこで、国道176号線のすぐそばでありJR新三田駅前という立地条件が、国道2号線・250号線に挟まれJR大久保駅前に立地しているというマイカル明石の例を検討しながら、ジャスコが新三田に出店することによってどのような事態が起こるのか考えてみたい。
まず、ジャスコ新三田ショッピングセンター(以下ジャスコS・C)が現在の計画通りに出店した場合、176号線沿いのサティ三田店・フラワータウンのダイエー・ウッディタウンの阪急オアシスなどが最も競合する店舗と考えることが出来る。又、現在計画中のものでは、ウッディタウンに出店が予定されているウッディタウンサティ・下深田への出店が計画されているウェルマート、そして三田駅前に出店が計画されている阪急百貨店などが競合店となると予想される。さらには、多紀郡方面(新篠山市)との競合も十分予測される。特に、地理的な面から考えると、阪急オアシスが現在のままの状態でジャスコS・Cの出店を迎えると非常に大きなダメージを受けるのではないかと予想される。
又、国道に近いという立地とウッディタウン方面からの大量の来客が見込まれる為、駐車場問題が非常に大きな問題となると考えられる。マイカル明石の場合、遠距離の来客が土・日・祝日に集中したために、休日には周辺道路に渋滞を巻き起こす原因となってしまったが、ジャスコS・Cの場合にも同じ事が起こる可能性は十分予想される。現在のところ、店舗の屋上部分1フロアを駐車場とする計画の模様であるが、特に休日にはその程度ではおさまりきらないのではないかと思われる。その結果として国道176号線や新三田とウッディタウンを結ぶ道路に車が列をつくる可能性は否定できない。さらに問題なのは、新三田駅前は日常的に朝夕の送り迎えで一般車が頻繁に出入りしていることである。これは、ジャスコS・Cの開店によって、夕方に家族を迎えに行くと同時にショッピングが行える可能性が考えられ、ウッディタウン方面の住民には非常に便利な状態となることが予測出来るが、そのために、交通渋滞を引き起こすのではないかという懸念も生まれてくる。少なくとも、現在の計画のままで開店すれば、交通渋滞が起こる可能性は非常に高いと言わざるを得ない。
次に、他の大型店との競合についてであるが、現在の日本における大型店は、後発店ほど有利というのが一般的である。その考えからいけば、ジャスコS・Cはかなり有利な位置にあるということが出来る。ジャスコS・Cより後に出店が予定されている大型店は現在のところはなく、同時期に阪急百貨店が開業予定となっているだけで、それ以外の大型店は全てそろっていると思われるので、ジャスコS・Cは先発店の様子を見ながら、随時軌道修正をした上で開業することが出来、リスクを減らすことが可能であると同時に、他店舗に無い独自色を打ち出しやすいのではないだろうか。ジャスコS・Cが現在の状態のまま開業すれば、間違いなく他の三田周辺の大規模店は影響を受けることになる。具体的に、どの店がどのぐらい影響があるかは、今の段階では予測できないが、位置的に近い関係にある阪急オアシスや(マイカルサティの開業後も残っているのであれば)サティ三田店などが特に大きな影響を受けることは間違いない。また、予定通り開業していれば、下深田のウェルマートも大打撃を受ける可能性は十分に予想される。また、ウッディタウンサティとの激しい競合も予想されるが、こちらの方はマイカル側の規模等によって立場が変わってくることは十分考えられる。また、後のウッディタウンサティの出店問題に関する予測のところでも述べるが、ウッディタウンサティの場合には、マイカル明石と同じ様な時間消費型の店舗を目指す可能性が高く、通常のショッピングセンターとの関係で非常に強い立場に立つ可能性が高い。その為、ウッディタウンサティの場合には現在のスタイルのままでジャスコS・Cが開業してもそれほど大きな影響を受けないのではないか、という予測も出来る。

Aウッディタウンへのマイカルタウン(ウッディタウンサティ)の出店に関する予測 ウッディタウンの中核ゾーンであるセンチュリーパークに、マイカルグループと新阪急ホテルが進出することが明らかになったのが1997年12月である。それから約1年ほどの間に、ある程度の全容が見えてきた。1998年末から99年1月にかけて、三田市サイドがシネマコンプレックスに難色を示したりするなど、ウッディタウンのマイカルタウン(以下ウッディタウンサティ)の進出に対しても、地元行政や商工会が消極的な動きを見せているが、このレポートでは、当初計画通りに開店が行われるという前提のもとで予測を行っていきたい。
ウッディタウンサティは、神鉄ウッディタウン中央駅から南ウッディタウン駅にかけての位置に広がり、建物は5階建て一部塔屋付きで、敷地面積が約17000m2、延べ床面積は約63000m2が予定されている。このうち店舗面積はマイカルが約22000m2、専門店が約7000m2の予定となっており、店舗面積では新三田駅前のジャスコS・Cとほぼ同規模になると考えられている。しかしながら、ウッディタウンサティの場合には、位置的にほぼ連続する形でワーナーマイカルシネマズやボーリング場・レストラン、さらにはほぼ同時期に神戸三田新阪急ホテルが開業を予定しているため、これらを複合的・有機的に展開することによって、マイカル明石にも劣らない大型時間消費タイプの施設が完成するものと思われる。
では、マイカルサティが開業したときに、競合する大規模店について考えてみたい。この部分に関しては、@のジャスコで記した店舗とあまり変わりはなく、三田近郊の大型店の全てが競合店となることは間違いないであろう。しかしながら、シネマコンプレックスやレストランなどを整備している分、三田駅前の阪急百貨店との競合が激しくなる可能性がある。また、マイカル明石の場合と同じように、遠距離からの来店者が多くなる可能性も秘めている。特にシネマコンプレックスやホテルという条件は、三田以北では全く見あたらないため、場合によっては篠山はもとより、柏原・福知山方面からの来客も見込まれる可能性は十分に考えられる。ウッディタウンは三田幹線沿いにあり、舞鶴自動車道三田西インターから非常に近いため、福知山からでも1時間少しで訪れることが可能であり、マイカル明石の例から考えれば、十分に訪れる客はいると考えるのが妥当である。商圏を設定するならば、一次商圏として三田市・神戸市北区・篠山市(1999年4月以降)が入ると考えられ、2次商圏には丹波・但馬地方全域が入る可能性を持っていると考えられる。
ただし、問題点もいくつかある。マイカル明石が4000台の駐車スペースを確保していてすら周辺地域に渋滞を巻き起こしている現状を考えると、マイカル明石の規模では6000台〜7000台の駐車スペースが必要と考えられる。ウッディタウンサティを含むセンチュリーパークの商業施設部分では合計で2500台程度の駐車場を確保する予定のようだが、明石方面に比べて、鉄道の便がいいとは言い難く、自家用車の使用比率が他地域に比べてかなり高いと思われる三田において、2500台で果たして足りるのかという点は、開業までに解決しておかないと、交通公害を引き起こす危険が非常に高い問題である。マイカル明石においては、姫路・加古川方面からの来客者の中にも、鉄道利用者はかなり多かったが、ウッディタウンサティに仮に篠山・福知山方面から訪れる場合には、鉄道利用というのはアクセスの悪さから考えてもほとんどないに等しいと考えるのが妥当であり、車を利用した来店者はかなり多いのではないだろうか。そう考えると、駐車場はセンチュリーパーク全体で最低でも3500〜4000台はあった方が良いのではないだろうか。また、他の大型店との関係では、ジャスコS・Cと同じく、南ウッディタウン駅前の阪急オアシスやエルムプラザに対して大きな影響を与えることは必至であり、この影響が悪く出ると、阪急オアシスの撤退やエルムプラザの空き店舗増加などが十分考えられる。

Bジャスコ新三田ショッピングセンター・ウッディタウンサティの出店による地域商業への影響 マイカル明石で調査したとき我々が驚いたのは、既存の商店街の人々があまりその影響を口にしなかったことである。確かに一部の業種の商店主などからは影響があるとの声も聞かれたが、ほとんどの店舗で「既に他の大型スーパーに客を奪われていて、今更一つ増えたぐらいではあまり影響はない」といった感じの声を耳にした。これは、ある部分では三田の地域商業にも同じ事がいえる可能性はないだろうか。
例えば、三田駅前地区の商店街は、現在再開発計画が進行しているが、再開発が始まる以前に殆どの店が大規模テントの競争に敗北してしまっていた、というのが正直な我々の感想であり、再開発によってもう一度大型店に挑もうとしているのが現状ではないだろうか。又、本町センター街などの、今現在は再開発計画があまり動いていない地区に関しても、既に大型店との闘いは終了している、と考えるのが妥当であると思われる。以上の分析に基づけば、新三田へのジャスコS・Cの出店もウッディタウンへのウッディタウンサティの進出も、三田の地元商店街にはあまり大きな影響を与えない、という見方ができる。無論、三田駅前の再開発された地区は再び大型店との競合を目指す可能性もあるので、その場合には大きな影響があることは間違い無いが。

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