環境社会学レポート

森林を考える

〜人間は自然とどのように関わっているのか〜
はじめに
人間は自然に対してどのように関わって行けるのだろうか。人間と自然の関係はどのようになっていて、どのような状態を目指すべきなのだろうか。森林を題材にしながら考えてみた。

1. 人間の森林に対する関わり方。
「森林」と一言でくくられる存在には、実は非常に多くのバリエーションがある。簡単に分けてみても、針葉樹林と広葉樹林、人の手が入っているか否か、など、それこそ地域ごと・場所ごとに千差万別である。そして、「森林」に対する人間の関わり方も、文字どおり、地域ごと・場所ごとに違ってくるのではないだろうか。 日本の森林に限定して考えてみれば、いわゆる「手つかずの原生林(すなわち、人間が全く入ったことのない森林)」はほとんど存在していない。であるから、"原生林保護"という、どちらかというとアメリカなどで唱えられている環境保護の方法論は日本には当てはまらないのではないだろか。自然を征服の対象として考えてきた西洋的思考の立場で考えれば、自然は保護の対象でしかないが、自然は得体の知れないものであると考えてきた江戸時代までの日本的考え方に立てば、自然は共生の対象として考えることもできるかもしれない。

2. 森林と人間の力関係
よく、環境問題の話を聞いたり読んだりしていると、「自然環境を保護しないと人類が滅んでしまう」とか「自然を保護することが生活環境の悪化を食い止める」といった内容が出てくる。この内容を言い換えれば、「現在の自然環境を残しておかなければ、人類社会に悪影響がある」という事ではないだろうか。 これを森林に関することに絞って言えば、「森林がなくなってしまえば、環境が大変悪化する」とでもなるだろうか。仮にこの話が現実だったとしても、森林がなくなって困るのは人間であって、人間が森林を保護するのではなく、人間が森林に保護されているというふうに考えるべきではないだろうか。 森林は人間の存在なしにも成立していたが、人間は森林の存在なしには生まれなかった可能性は高い。同時に、人間は森林をすべて切ってしまうことも可能であるが、森林がなくなれば人間が生きて行ける可能性は(少なくとも現在の科学力では)限りなく0に近いのではないかと考える。 人手を入れなければ、荒廃してしまう人工林や二次林が森林のほとんどを占める日本においては、森林と人間とは互いが生き残っていくために、人間が森林を整備するという関係であると言うことができるのではないかと考える。

3.現在の環境はベストなのか?
現在の環境保護運動の前提条件は、現在の(あるいはここ数十年の)地球環境がベストの(または、それに近い)状態であるというものではないだろうか。しかし、環境は常に変化しているものである。人間が影響を与えた結果として環境が変化する事態も、当然多く存在しているだろう。同時に、地球環境事態が変化をしているところに、人類社会の活動の影響が加わってしまっているものも、多くあるのではないだろうか。 人間社会の様式にあまりにも合わせすぎれば、確かに環境は異常変化をきたすかもしれない。しかし、仮に人間が自然の変化を抑えようとしても、地球環境自体が変化してしまうことも考えられる。  環境問題を考える時、その問題が、主に地球自体の変化が要因で発生したのか、人間の営みを中心に発生したのか、それともその両方が複雑に絡み合ったものなのか、考えてみることも必要なのではないだろうか。恐らくは、地球自体の変化のみで発生する環境問題はそれほど多くはないだろう。だが、環境問題を考える時に、人間の活動という視点からのみ考えることは、問題の本質を見誤る可能性もあるのではないだろうか。

まとめ(講演の感想も含めて)
人間が森林に関わっていく時、それぞれの立場・考え方によって、異なっている。森林ボランティアが、森林の保全を行うという活動以上に、生活として森林に関わる人々に刺激を与えるという形で、森林保全に影響を与えているという考え方は、私には新鮮なものに思えた。森氏の講演以前には、私は都会の人々が参加する森林ボランティアが果たして何をしに森へと行くのだろうかと考えていた。しかし、彼の講演を聞いて、森林ボランティアの活動の意義というものの一端に気付かされたような気がする。  「森林生態系は複雑であり、科学的にわかっていないことも多い。また、人々の森林との関わり方も千差万別である。」(環境とライフスタイル・第6章)。この言葉が、ここしばらくの間に読んだ環境関係の本の中で、私の森林に対する認識に最も近かった。この「複雑である」という部分を我々は忘れがちであるが、我々はこの部分こそ認識しておくべきではないだろうか。





このレポートは、授業内で行われた講演会を基に作成しました。



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