キリスト教学Aレポート2

キリスト教学A レポート

創世記より 神の概念とは?


 創世記のなかで描かれている神は、初めから唯一人であり全能であるかのように印象づけられている。そして神は、天地創造の後に自らの姿を模して人間を創造し、地上を治めさせようとする。地上における人間以外の他の被造物がいわば直接的に神の栄光を現しているのに対し、人間は神との契約という行為により間接的に地上に於いて神を代表している。このことは、地上世界に於いては人間は神の代理人であるという概念をもたらす。創世記では、神と人間との間の約束が根底にある。子孫を与え、又、その子孫に土地を与えるという約束を信じることが創世記における信仰の形である。ここでの神は、生きる者にとって最も重要な課題である子孫を残すということと生きるために必要な土地を保持することを保証するものとして存在している。創世記のなかでは、神と人間との間には契約或いは約束が常に存在しており、そのことは契約や約束が無ければ神と人間との対話は不可能であることを示している。ここに描かれている神は、自らが選んだ人間に対してのみ契約を結び、救いを約束している。旧約聖書を聖典とするユダヤ教が明らかな選民思想的宗教であることからも、神との間に契約を結んで信仰する代わりに自らが神に選ばれるという発想が、この創世記における神というものの基本的性格を決定しているように思われる。ここでは、神は自らと契約した人間に対して救いや祝福を与えるだけではなく、時として苦難や試練を与えている。人間はこの苦難や試練を乗り越えなければ神に救済されないようである。創世記の神と人間の関係は、おそらくはギブ・アンド・テイクといった相互依存的関係ではないだろうか。神も信仰する人がなければ存在することは出来ず、人間も信仰する神がなければ救済されない、だから、神と人間は契約を結び、相互の存在を確認しているのであろう。創世記の中に存在する神とは、自らが選んだ人間に対して、信仰という契約に救済(子孫や土地を与えるという形の)という返答をするものではないだろうか。

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