発展政策レポート

発展政策レポート

〜南の開発への提言〜

 
1.はじめに
 開発は、そこに住む人々の為のものでなくてはならず、間違っても国家の威信や大企業・援助国などだけの為に行われてはならない。開発によって、そこに住む人々のクオリティオブライフが向上することが、開発において何よりも求められることであると考える。
2.南の開発へ向けての提言
(1) 開発の原則とは何であろうか? 開発によって人々の暮らしをそれ以前より豊かにすることが、開発の原則ではないかと私は考える。但し、豊かな暮らしというのは、そこで暮らす人々にとっての豊かさであって、決して物質的豊かさだけを指すものではない。我々は、豊かな暮らしというと、すぐに物質的豊かさを想像してしまうが、精神的豊かさも追い求めることが開発には必要なのではないだろうか。
 では、「開発」を実行しようとしている国は、どのような未来予想図を構築して「開発」に挑もうとしているのだろうか? 明確なビジョンなしに、形だけ先進国をまねるような開発は「開発」とは呼べないのではないかと思う。まず人々が、自分達が将来どのような生活をしたいか考え・議論した上で、そこで得た結論に向けて「開発」を行うべきではないだろうか。国家や大企業等が自分たちの都合で開発を行うことは、国家の成長にあまり大きく寄与しないのではないだろうか。少なくとも、国民全体のクオリティ・オブ・ライフの向上を目指すなら、国民の意思に基づいた開発を行うべきである。 
(2) 開発途上国の多くは、開発を行うときに、急速な発展・特に急速な経済成長を望んでいるように思える。確かに、人々は開発の成果が早急に現れることを期待するものだが、大切なステップをとばして開発を行うことは、社会にひずみを生みやすく、開発の失敗に直接つながると言える。何事にも、順序というものがあり、それは「開発」も例外ではない。ここでは、経済成長の為に必要である産業開発を例に考えてみたい。
 人材を育成し、育成された人材と先進国等から導入された技術や資本を利用することは産業を開発するための有効な手段であると考えられている。実際、多くの開発途上国では、教育に力を入れ、そこから開発を進めていこうとしている。しかし、その先の技術や資本の導入の段階には、多くの問題を含んでいるように思える。例えば、開発途上国が技術を導入したり、自国で技術研究をするとき、ほとんどの開発途上国では、先進国で現在進行形で研究されているような先端技術・高度技術の導入や研究を望む。しかしながら、これは大きな間違いであるのではないかと思える。確かに、先端技術・高度技術を導入すれば、一気に開発途上国が先進国に追いつけるようなイメージを抱かせるのだろうが、実際には先端技術・高度技術を受け入れるだけの技術的下地が整っていなければ、これらの技術は開発途上国にとって何の意味ももたらさないと思われる。インフラストラクチャーが劣悪であれば、技術の定着は難しいであろう。要は、技術風土に合った技術を導入することからはじめることである。そして、技術を1つ1つ消化していくことによって、着実に産業を自国のものにしていくことが、開発途上国の産業開発に最も有効な手段であると考える。


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