第1章 中心市街地空洞化に関する問題の構造について


中心市街地の空洞化は多くの問題を抱える構造になっている。中心市街地空洞化問題とは何か、と問われたときに一つだけの答えを出すことは不可能である。では中心市街地問題とはどのような構造になっているのだろうか。
大西隆(1998)1はこの問題の主要な点として以下の5つを列挙している
1.商店街衰退への危機感
2.居住人口の減少及び高齢化への危機感
3.景観悪化への危機感
4.違法駐車・駐輪による都市機能阻害への危機感
5.環境面から見て持続可能な都市形態とは言えなくなる事への危機感
又、全国市長会の調査2による、全国の市長が感じている中心市街地における問題として、商業機能の低下・高齢化・居住人口減少・路上駐車・空き店舗の増加・くつろぐ場所がない、といった点が上位に挙げられている。
一般的には、商店街衰退への危機感が最も中心市街地問題において大きなウェートを占めていると考えられている。実際中心市街地問題が商業問題であると感じている人は多く、その事が市民全体での活性化へ向けた合意形成を阻んでいる可能性は否定できない。商店街衰退への危機感が中心市街地問題のの中心であると考えられている限りは、この問題は商業者や行政だけの問題のままであり、市民全体の問題にはならないと考えた方が妥当である。更に、大西が指摘している様に、中心市街地の商業地位や商業機能の低下は、郊外型大型店やコンビニエンスストアによる代替されており、市民にとって買い物に行く場所がなくなり困っているという状況は発生していないという事実がある。又、現在の社会情勢下においては、中心市街地で買い物をしなければならないという理由はなく、購入場所や購入方法の多様化が、かつて独占的地位を占めていた中心市街地の地位低下を引き起こす事は至極当然であり、根本的な政策転換なしに「かつての繁栄よもう一度」というのは無理があると言わざるを得ない。
また、居住人口の減少や居住者の高齢化に関する問題であるが、これらは治安の悪化を引き起こしたり災害等の緊急事態に対する街の対応能力を奪うといった問題を内包している。また、人口の減少と居住者の高齢化は過疎地域と同じ現象を都心部で引き起こす可能性が高く、その意味では過疎地域の問題と都市の中心市街地が皮肉にも類似の(或いは共通の)様々な問題を抱えていると考えられる。実際、多くの都市の中心市街地において、小学校の統廃合問題が持ち上がったり、1学年1クラスや複式学級が出現するなど、一般的に過疎地域特有と思われていた問題が都心部でも起こっている事がわかる。



戻る