追憶の1989年
追憶の1989年
高橋源一郎・著
角川文庫
結構多くの人は競馬の予想屋さんだと思っているのではないかとマジで思ってしまうが、れっきとした作家である高橋源一郎の1989年丸々1年間の日記。インターネットが急速に普及してた今、多くの個人ホームページで行われている日記の先駆けである。中身が競馬だらけという辺り、著者が競馬の予想屋さんだと思われる原因の一端を表しているような気もするが、出版界の規則とか裏話とかもわかって面白い。
1989年というと、昭和天皇崩御に始まって、中国・天安門事件やチャウシェスク失脚・処刑などの出来事が数々おこり、1990年代前半の激動の時代の前触れといった感じの年だったのではないだろうか。それほど激動を予感させるものは本文中にはないが。それに、バブルがまだはじけきっていなかったので、まぁ、バブルチックなお話の数々も本書の中にはちりばめられている気がするが・・・。
まぁ、それにしてもちょっと前まで日本テレビ系の「スポーツうるぐす」で毎週競馬の予想していた上、スポーツ紙に競馬の予想を載せてまでいるだけに、高橋源一郎という人は競馬に関する知識は半端ではない。この作品を読むと、高橋の当時の行動・考えの一部がわかる上に競馬についてもかなり詳しくなってしまえるというあたりが何ともいえない面白さを醸し出している。
ただし、浮気して、この作品によく出てきており仲が良さそうに見えた奥さんと最近別居したと「噂の真相」に書かれていたので、このころとは著者はかなり違った方向性に(作風も含めて)向かっているのかもしれない。
(1999年2月1日作成)
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