小松左京の大震災’95
小松左京の大震災’95
小松左京・著
毎日新聞社
1995年1月17日の阪神大震災を自身も被災した作家小松左京が各方面に対してインタビューをおこなってまとめた、いわば震災の記録と総合解析と言える。震災の直後から数多く出版された本・雑誌の多くが震災のある一面しかそれぞれが捉えていなかった事を考えると、最も完成された総合解析の本と呼べるかも知れない。あまたの記録集・技術書・体験談集などが出版され、私も多くの本を読んだが、やはり災害規模の大きさもあってか、一つの方向あるいは二方向ぐらいからしかアプローチされていないものが多かった。それだけに、冷静に全体像を考えるのには非常に役に立つ内容であると言える。
震災後に毎日新聞で約1年間にわたる連載という形で掲載されていただけに、本書はその時々で視点が変化している気がする。それは同時に、我々の視点の変化でもあったように思える。また、「日本沈没」などの著作を有する小松左京だけに、鋭い視点と技術的な詳しい解説にはさすがの一言である。
いずれにしても、徐々に人々の記憶から風化してきつつある震災を、もう一度考え直す為にも、そろそろ続編というか、現在の小松左京の震災に対する考え方の様なものを発表してもらいたい気がする。
(1999年3月3日作成)
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