六番目の小夜子

六番目の小夜子

恩田陸著

新潮社

1998年秋にハードカバーで復活したモダンホラー小説。もともとは、新潮社のファンタジーノベル大賞の最終候補作品という形で文庫本で出版されたものだが、当時この作品を読んで何でファンタジーなんだとかなり疑問に思ってしまった。ただし、普通の青春小説、あるいはモダンホラーとして読むならば完成度も高く、非常に面白い作品ではないだろうか。いくつもの糸が複雑に絡み合いながら、最後まで謎を残したままで作品が完結しているだけに、余計に何とも言えない怖さがある。少なくとも、私は何度読んでも、読後に何となく寒気がしてしまうところはそこらのメディアには真似のできないところであろうと思っている。
作品の内容としては、地方の進学校を舞台にした高校生達の奇妙なゲームに関するやりとり。学園祭で3年に一度行われるゲームに絡む奇妙な出来事や不可思議な伝統などが織りまぜられているが、単なる学校の七不思議などと違い、リアリティがありすぎる部分があり、それだけに恐ろしさが増していくところがある。結構伝統のある高校なんかには、こういった話や伝統は残っているのではないかと思わせる現実感・既視感と、実際に高校にいそうな登場人物達が物語を引き立てている気がする。

話は変わるが、ファンタジーノベル大賞って、リングの鈴木光司も同じ時期に賞をとっていた気がするし、意外とモダンホラー作家の登竜門なのかもしれない。結構最終候補作とかにも面白い作品が多かったし(昔は賞を獲らなかった最終候補作も文庫化されていた)。

(注)上記の文章は1998年に出版されたハードカバー版ではなく、1992年に新潮社文庫として出版されたものを基に作成しています。
(1999年1月31日作成)


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