28-31/March/1997 北欧放浪記

北へ…
 人は北へ向かう。北の魅力にとりつかれている私は、このイースター休暇を利用して、北欧へ行くことにした。拠点はコペンハーゲン。費用を安く抑えるため、コペンハーゲンに3連泊することにし、日帰りで列車の旅行を楽しむことにした。同行者は……なし!みなイタリアだのトルコだの南の方へ行くらしい。私も誘われはしたものの、やはり北がいいと言うことで、単独行動を決断した。
 3月28日のロンドンヒースロー空港第1ターミナル。ここはBA(英国航空)のヨーロッパ線が出ていることもあり、朝7時前だというのに大混雑。ここはいつも列ができる。今回は手荷物だけなので、専用のカウンターでチェックインしたのであまり時間はかからなかったが、それでも5分は待った。普通のカウンターなら20〜30分は待つだろう。そして手荷物検査へ。ここがまた並んでいる。また一人が引っかかると、次の人を通してくれない。ここでまた時間をロス。そして出国審査。これもまた並んでいる。出国を済ますまで、3回も長い列に並ばなくてはならない。これも旅の苦痛。ユーロスターの方がよっぽど楽である。
 中に入ったのは既に7時40分、とりあえずCD用の電池を買いたかったので、免税店のDixonsへ行く。ここの免税店は充実しており、市内のハイストリートに来たような店構えと品揃えである。レジ前で並んでいると、前にいるのは日本人。「多分駐在員の人なんだろうなぁ」と思っていると、その人に声をかける人が。どうやら同じ会社の人らしい。

「どうもこんにちは」
「こないだはどうも」(実に日本的なあいさつ)
「今日はどちらまで」
「ちょっと南仏の方に」
「私はイスタンブールですよ」

やはり日本人は南へ靡く。あれだけ日本人が歩いていたにもかかわらず、いざ飛行機に乗ってみると、満員の機内に日本人は「私一人」のようだ。北へのロマンが生まれてくる。

コペン”ハーゲ"ン…
 BA機は無事にコペンハーゲンに到着。どうもこの都市名、かつてテレビ番組で、現在の大阪府知事の横山ノック(山田勇)氏が、「ノックさん、コペン"ハーゲ"ンですか」と言われていたのを思い出す。まぁ、ただそれだけなのだが……。もとい、入国審査は、ヒースローとはうって変わり、写真も見ずに、開いているページにスタンプを押して終わり。実に簡単である。ロピーに出てインフォメーションへと向かう。ここで何をするのか、「コペンハーゲンカード」を買うのだ。とりあえず今日は日程は入っていないので、この首都圏内交通機関及び博物館・史跡入り放題の切符は魅力的なのだ。係員に、この切符で市内まで行けるか確認すると、大丈夫という。24時間有効の切符を買い、地図をもらった。そこで係員のおばさん「今から使うか?」と聞く。明日は9時前の列車で出かけるので、今現在から使い始めても問題はない。「今からでいいですよ」というと、わざわざバスの時間を確認してくれて、「12時発だから、12時からにしておきますね」と、カードに時刻を記入した。そう、このカード、開始時間をペンで記入する方式なのだ。利用者を信用しているこの方式、いかにも北欧。バス乗り場を教えてもらい、窓口を後にする。
 バス乗り場はいくつかに分かれている。本当は快速バスがあるのだが、最初に9番という、中央駅を経由しないが、市街地まで行くバスの乗り場を発見した。発車は12時、問題はない。じきにバスが来た。11時55分だったので、一応運転手に「乗ってもいいか」と聞いてみた。すると運転手「どこまで行くの」と親切に聞いてくれる。「City Centre"(市内中心部まで)」と答えると、「それなら250Sの方がいいよ、それなら市街地まで行くけど」と教えてくれた。しかしながら行くあてがまだない私、とりあえず行き先はバスの中で決めたかったので、前に来たときに使ったことのある駅がこのバスのルート上にあることを確認し、「オステポートまで」と答え、とりあえずバスに乗ることになった。
 バスに乗ると、おもむろにコペンハーゲンカードのパンフレットを取り出す。 「どこに行こうか」 何も考えていなかった。とにかくうろうろすることしか考えていなかったので、これが結構大変。しかしすぐに決まった。水族館である。なぜ水族館なのか。わからない。でも水族館なのである。ただ電車で行きやすそうと言う理由もあった。とりあえずオステポートまで行くことにする。
 バスはオステポートに到着。この駅は中央駅から3駅北西に来たところである。そういえば昼飯を食っていなかったので何か食べることに。電車の時間までも15分ある。デンマーク国鉄(DSB)の駅にはだいたいコンビニのようなKIOSKと、ファーストフードのMINI BARがある。オステポートも御多分に漏れずそれがあった。MINI BARで、ホットドッグでも食べようとメニューを見る。さすが酪農王国、美味しそうだ。イギリスのソーセージとは大違い。そこで気付く。「ここはロンドンじゃない」そう、デンマーク語表記なのである。やはりデンマーク語を使わなくてはいけないのか……。しかし、「デンマークでは5歳から外国語教育が始まり、第一外国語は英語である」という事実もある。大体の人は英語も話せるバイリンガルであるはずだ。そういうとき、過大に相手に英語を話すよう求めるのも失礼だと私は考える。そこでいつもやる方法、"Excuse me"と、とりあえず英語で相手の気をひく。これで、「こいつは英語で話しかけてくるな」と相手に気付かせる。そして、おもむろに指を立て"One"と数を示し、メニューを指さし"This one please"とやる。英語を話す店員だと、その後英語で話しかけてくるし、そうでないとしても、身振りなどで確認をしてくる。今回もそうやったら、「赤いソーセージしかないけどいいですか」と、英語で話しかけてきてくれた。こういうときに、「英語が通じる」国は安心できると思ってしまう。何の変哲もないホットドッグを頼んだのだが、一応揚げタマネギやきゅうりの乗せるか乗せないかなどと確認してくる。出来上がってみると、結構いいものであった。味もなかなか。
 食事をするとトイレに行きたくなるのが心情、列車に乗る前にトイレに行くことにする。デンマークの公共のトイレは大体有料である。値段は2Kr(クローネ。1Kr=¥20位)、妥当である。この駅のトイレは、ドアノブのところに硬貨投入口があり、お金を入れて、ノブを回すという形である。これが結構油断すると損をする。何気なくお金を入れてドアノブを回そうとすると、なんと「使用中」。開かない。おまけにお金も戻ってこない。仕方なくもう一つあったドアの方で再度お金を入れトライ。やっと入れた。
 心身共に落ち着きを取り戻し、いざホームへ。この駅は、首都圏の近郊列車S-togの駅。一応DSBの施設である。ダイヤは基本的に20分おきである。ほとんどの路線が中央駅を通過する形になっているので、この周辺は列車本数も多い。オステポートも同じくらい列車が多いのだが、なにせ水族館の最寄り駅へ行く路線は1つだけということで、その列車が来るのを待つ。列車は赤い塗装。1/3は喫煙車。また自転車を乗せることもできる。目的の列車は定刻どおり到着。いざ水族館へ。

水族館
 最寄り駅シャリオッテンルンドへ到着。辺りは何もない。水族館という表示も、1つはあったものの、矢印がどちらを指しているかはっきりとしないもの。とりあえず他の人が歩いていった方向へ行く。辺りは林。何もない。地図で大体の位置を確認し、海の方へ向かう。あった、と思ったら違う建物、でも敷地内に水族館があるようだ。海が見えてくると右手に水族館が見えた。入り口でコペンハーゲンカードを提示、入場料無料!。これがいい。中は、はっきり言ってパットしなかったが、デンマーク語の他にドイツ語と英語で解説があったのが、お国柄をうかがわせた。
 水族館を出、海の方へ歩いていく。すると、そこにはソーセージの屋台がある。「よし、食ってやろう」別に食わんでもいいのに思わず列に並ぶ。ホットドッグを6つも買うオヤジがいたので時間がかかったが、その間にソーセージメニューの写真を見て、どれにするか確認する。そして自分の番、話しかけて気付く 「この人、英語を話せない!」 そう、このソーセージ屋のオヤジはデンマーク語しか話せないようなのだ。困った、しかし写真付きのメニューがあるというのはなかなかなもので、指さしと身振りで何とでもなる。なんとか希望通りのソーセージを買うことができた。
 食べながら海へ。何もない。まだ冬が明け切らない寂しい海……。すぐに後にする。

Believe it or not
 市内へ帰る交通機関は……と見ていると、あったあった、バス停に、はっきりとは読めない(デンマーク語ですから)とはいえ、市街地を通るバスがあった。あと3分位で来るようなので、それに乗ることにする。乗ってまた行き先探し。あったあった、Believe it or not!という博物館。世界中の信じられないものを集めたところである。場所は市庁舎の横、完全な中心街、泊まるホテルも近い。ということで、行ってみることにする。もちろん入場料は無料になる。
 20分くらいかかっただろうか、目的のバス停へ到着。博物館を探す。この辺は雑居ビルが多く、どれがどれだかわからない。あった、結構目立たない入り口。中にはいると、受付はすいていた。コペンハーゲンカードを見せると、英語を話せるかと英語で訊いてきた。英語での解説の紙を貸してくれるそうだ。中の表記は基本的にデンマーク語ということで、こういうサービスをしてくれる。実に国際的である。
 さて中身だが、「首が後ろまで回る男」とか、「釘を飲み込む女」とかびっくり人の関係や、不思議な絵など、とにかく「信じられない」ようなもののオンパレード。コペンハーゲンにある意義はよくわからないが、おもしろかった。
 30分以上はかかった。丁度いい時間になったので、ホテルにチェックインすることに。今回はケチって、駅のそばの2つ星にしたのだが、さすが北欧、そのクラスでもなかなかのホテルである。このホテル、チェックインの際に、名前や住所を書かせなかった。普通はするんだけどとは思いながら、今回はイギリスの会社の格安パックを使っているから、事前に情報が入っているのかなぁと思い、とりあえず部屋へ。シングルだけに部屋は狭かったが、装備は万全、当たりである。そしてまだ夕食まで時間はあるが、とりあえず外に出ることにする。
 ホテルから徒歩3分で中央駅へ。実に便利な場所。とりあえず駅のスーパーで水やビールを買い込んだ。但しここのスーパーのビールは、どういう訳かアルコール分2%程度のものだけ。そういえば昨年9月に出張できた際も、夜にここでビールを買い、「酔えん!!」と職場の人と激怒したのを思い出した。また、サラミなども調達、今夜はビールで一杯行こう。
 そしてホームへ。まだコペンハーゲンカードは有効なので、乗りつぶしをしようと企てる。結局、ホテルから徒歩で5分で行ける店へ、一時間以上もかけていくことになった。これも私の趣味。

コペンハーゲンの韓国料理
 今日の夕食は「焼き肉!」それも韓国風。お店はO-Mo-Nim。地球の歩き方などでも紹介されており、また、地元の英文情報パンフレットにも載っていた。ここも昨年9月に来た際に、非常に気に入ったところで、またあの「ビビンバ」が食いたい!と思い、足を運んだ。ここの女将さんは、日本生まれの敬子さん。入ったら日本語で話しかけてくれた。ここまで全て英語だけの環境だったのでホッとした。ミックス焼き肉セットとビビンバを注文、ビールはもちろんカールスバーグ、本場である(ただ、地元ではもう一つのトゥボルグの方がメジャー)。焼き肉は……うまい!!ビビンバもうまい!!。再度足を運んだだけのことはある。また、ここの店では、日本語衛星放送JSTVを流している。日本語のニュースが流れるのも嬉しい。
 おなかもいっぱい、気分は最高の状態で店を出る。よく見ると店の前はバス停。最終ラウンド行きますか、と、丁度来たバスに乗り、市庁舎広場まで行く(はっきり言って歩いても15分の距離ですが)。丁度トイレに行きたくなったので、広場北側の、バス案内所地下のトイレに行く。そこでびっくり「どこがトイレなの」。はっきり言って、きれいすぎてどこがトイレかわからない。どうやらそこがトイレという所に入る。そこは入り口が自動ドア。広々としたホールの奥に、カウンターがあり、左右に10個づつ扉がある。よく見ると、入り口横に、「2Dkr(デンマーククローネ)」と書いた現金投入口のある機械の存在に気付いた。そこにお金を入れるらしい。2クローネ入れると、番号ランプがつく。そこで空いている番号を選択し、その扉を使う方式!説明が読めないので苦労したが、こんな豪華だけど七面倒くさいトイレは初めてである。まぁ、2クローネでこれだけ豪華ならいいが、しかし1分で出てくるのは惜しい。
 びっくりのトイレの後、歩いてホテルへ。いい運動になる。コペンハーゲンは治安がいいので、夜で歩いても危険を感じない。ゆっくり旅の疲れをホテルで癒やすことにする。今日はこれでおしまい。

一路大陸へ
 3月29日、今日もいい天気である。朝食をとりホテルから駅へ。今日は列車でユトランド半島を目指す。デンマークはヨーロッパ大陸のユトランド半島と、多くの島々から形成されている国で、コペンハーゲンも島に位置する。列車は、船に積まれ大陸まで行くという。楽しみだ。定刻ぎりぎりに列車は中央駅に入線、白の綺麗なディーゼルカー、手入れが行き届いている。中に乗ると、車内は広い。指定された席を探すと、席番号の横に、乗車区間がデジタル表示されている。「結構行き届いてるジャン」そこまではよかった。そして気付く「これって窓側なんだろうか、通路側なんだろうか?」どこにもWindowとかAisleにあたる表示はない。まぁいいかと、窓側に座る。程なく席は大体埋まり、私の隣や向かいも人が座る。大丈夫なようだ。列車は定刻を少し遅れて発車。
 程なく田園地帯に入る。真っ平らな国だけに、永遠と緑が続く。日本で言えば北海道に近いが、北海道でもここまで平らな所はない。しかしながら眺めは単調。思わず寝てしまう。Z-Z-Z-Z

ここ何処?
 ふと目が覚める。列車が停まっている。窓の横には壁が。「駅か?」そうでもない。じきにエンジンが止まり電気が消える。列車を降りる人もいる。そう、この列車は、列車ごと船の中に入ってしまっていたのだ。とりあえず私も外に出てみる。船の中には線路が引かれ、ものの見事に列車が入っていた。4本列車が入るようになっているようだ。
 階段を上り、船内へ。中には2つのカフェテリア形式のレストランとスタンドカフェ、そして結構大きな売店があった。すごいものだ。とりあえず一番上のデッキに出てみる。風が強く結構寒かったとはいえ、眺めは最高。北には、この6月に完成予定の、この連絡船の代わりになる橋とトンネルが見えた。途中の島を挟んで、列車はトンネルと橋、道路は2本の橋で大きな2つの島を繋ぐことになる。これができればかなり便利になるだろう。ただ船旅の旅情はなくなるのだろうが。
 船は一時間で港へ到着、列車の乗客は一路自分の車両へ戻っていく。

新たなる試練
 列車は何事もなかったように船から出た。そして発車。違う島に移ったとはいえ、田園風景は続く。とにかく単調。自動車でぶっ飛ばすのにはいいような気もするが、列車ではそうも行かない、何となくうつらうつらとしながら、時間が過ぎる。窓から大きな橋が見える。これは自動車橋のようだ。そして列車はいつしか海の上を超え、ヨーロッパ大陸に進入、私の目的地フレデリシアに着いた。ここまでの所要時間約3時間。
 なぜフレデリシアに行くことにしたか。理由は簡単、トーマスクックの時刻表を見ていて、「大体乗車時間は3時間が限度だろう」と決め、何となくこの駅まで買ったのだ。周りに何があるかはわからない。とにかく駅前の地図を見てみる。がしかし、 「何もない」 予想通りである。帰りの列車は17時33分、それまで5時間、何をすれば……がしかし、一応代替案は持っていた。この町の北にあるオーフスというところが、結構いいという情報が入っていた。ということで、窓口で切符を買い、そこまで行くことにする。切符売り場は人影もまばら。ちょうど空いていた窓口に行く。

"Excuse me? One return to Århus please."
"???????"

やばい、英語が通じない。まぁ、確かにここは田舎だし、大体にして観光地じゃない。まずい。しかしこういうときは、言葉ではない。おもむろに今回の旅程表を出し、一応代替案で書いていたオーフスの文字を見せると、向こうも納得したようだ。そして指で往復のサイン。そして無事、切符は発行された。
 ホームへ行き、切符を見る。すると、そこには Fra(From) Fredericia Til(To) Århus とある。「これって片道?往復?うまく通じなかったかなぁ。」思い悩むも、とりあえず列車に乗り込む。今度はローカル列車。座席は広い。自転車も積めるようだ。じきに検札があった。そこで車掌さんに英語で尋ねると、この切符は往復らしい。少々ホッとする。言葉の問題は、やはりつらい。

オーフス
 列車は1時間で目的地のオーフスに到着。ここで使える時間は2時間余り、しかしながら昼食をとらなくてはならないので、使える時間は少ない。結局「来ただけ」状態になってしまうのは確実、実に私らしい行動。とりあえず飯を……と言うことで歩いていると、駅前に変な看板発見!漢字で「物」と書いてある。店の名前は「JAPAN PHOTO」ただのカメラ屋。一応日本製品を扱っているようだが、どういうネーミングだろうか。まぁ、いきなりのバッタモン攻撃にはびっくりしたものの、記念に写真に収め、商店街を歩く。と、そこには「Chinese Buffet」の文字が。英語と中華、もう懐かしの感があった。吸い寄せられるように入店。59DKrっだったので、それほど高くない。
 店員がやってきた。バフェでということを英語で伝えると、席に案内してくれた。しかしその後の誘導はなし。勝手にバフェコーナーに行き、料理を取る。品数は少ない。春巻きは少々揚げ過ぎの感があった。まぁ、アジア系だから何とかなるだろうと、思いっきり皿に盛り席に戻る。そこへウェイトレスが来た。そしてデンマーク語で何か話しかけた。「おいおい、俺わかんないんだよ」と言う感じで、"Perdon?"というと、綺麗な英語で、"Would you like something to drink?"と聴いてきた。うーん、英語教育が行き届いている。私はジャスミンティーを頼む。茶を飲みながら中華、味はロンドンよりかなり落ちるが、こんな所で食えるとはと感心してしまった。と、一つのことに気がついた。

「このジャスミンティー、烏龍茶じゃないの?」

そう、ジャスミンの香りがしない。どう考えてもこれは烏龍茶。まぁ私は烏龍茶の方が好きだからいいものの、この町の人はこれをジャスミンティーと思っているのかも知れない。詐欺だよこれ。
 さて、会計、ウェイトレスがビルを持ってきたので見ると、100DKrを超えている。えぇぇ?と、ウェイトレスは英語で「御免、間違えてる」と早口で言い、その場でペンで修正した。どうやら夜の部の値段を書いたらしい。それにしても英語の早口、英語教育の浸透に脱帽。
 満腹で町をふらつく。歩行者天国には、ソーセージやハンバーグを売る屋台がたくさんあった。さすが酪農王国デンマーク。イギリスのそれに比べ実に美味しそう。だが、思いっきり食った後なので味見もできない。とにかく歩く。てくてく歩き、バスにでも乗ってみようという気になった。バス停に行き、路線を見るそして気付く、 「読めない!」 どれが駅だかわからない。今のバス停がどれだかわからない。コペンハーゲン市内なら、今のバス停からの路線と、そのゾーン名が書いてあるのだが、ここでは、各路線毎の全路線の図があるだけで、どこがどこかわからない。まぁ、今回はあきらめ、とにかく歩くことにする。そんなことをしているうちに、時間が過ぎてしまった。本当に何をしに来たのだろう。ここには「デンマークの明治村」とも言えるような博物館があるそうだが、結局そこに行く時間もなし。駅に戻り、帰りの列車に乗る。

いったに何しに行ったんだろう?

 駅の売店で地図を買う。行く前に買えばいいのだが、忘れていた。もう来ることもないだろうこの町だが、何となく買ってしまった。そして列車へ。今度は来た道を戻るだけ。また単調である。ただ、乗り心地がいいのが救い、海が見えてくればフレデリシアは近い。そしてICに乗り換える。今度は船にはいるところを見逃さないようにと、頑張って起きている。その甲斐あって、何とか立ち会うことができた、がしかし、別に何のことなく列車は船の中に入っていった。
 船から、また建設中の橋を見た。人間の技術というのはすごいもんだと思う。夕日に映える橋のシルエットがなかなかだった。
 コペンハーゲンに着く頃には、夜もとっぷり暮れていた。無事中央駅に到着、夕食を駅の中でとることにする。ここにはカフェテリアコーナーのようなものがあり、そこでいろんな物が食べられる。どれにしようか見て回る。そこで発見!

SUKIYAKI

なぜにすきやき、それもサラダやラザニアを売っているコーナーでである。実にインチキ臭い。これは食べてみないと駄目だ。ということで、オーダーしてみる。すると「終わりました。今はラザニアだけ」というつれない返事。まぁいい、最終日の昼にでもトライしてみるということで、今回はラザニアを注文。それほど美味しくはない物の量はあった。それにしても、今日って何をしに行ったんだろう???

スウェーデンへ
 3月30日、夏時間が始まり、今日の朝は昨日より1時間早い。眠い目をこすりまたまた中央駅へ。今日は船でスウェーデンへ渡る予定。まず、今日の夜から使う予定の24時間乗車券を、駅の窓口で買う。機械に入れてから使い放題ということで、結構使い勝手が良さそうだ。そして列車の出るホームへ。昨日と同じく船に列車が乗るタイプのものだが、今日のは国際列車。貫禄が違う……と思いきや、列車のデザインは昨日と同じ。編成が短く、流動が国内より少ないことを物語っている。中も結構空いていた。列車は中央駅を出て、昨日と同じ様な自然の中を走る。北の人間にとって、この景色は実に心地いい。1時間もしないうちに、ヘルシンゴーに到着、駅を抜け、道路の上の線路を走る。と、列車は船の中にスッと入っていった。実にスムーズ。
 今日の船の行程はたったの30分、短い。昨日の船よりも小さいようだ。しかしながら、デッキに上がるとそこには「両替所」、さすが国際船。また、中にはなんと免税店。アイスクリームを買うだけでも免税、やはり国際派。そうしているうちに、私は、デッキの角にあるあるゲームの存在に気付いた。"Bubble Bobble"、私が高校生の時にハマったゲームである。懐かしすぎる。当然の如く、2秒後にはコインを探し、ゲームを始めていた。勘は衰えていない、結構面が進む、と、「もうすぐ到着!」のアナウンス。えぇぇぇぇ、いいところなのに!。しかしながらどうにもならない、と、ミスがおき、結局終了。でもハイスコアを出し、なぜかCBCと名前を入れる。
 そして列車はスウェーデン・ヘルシンボリの大地へ。一度駅を通過し、スイッチバックして、地下の新しい駅に入った。駅は綺麗、そして発車、そこは、北の木々が立っている寂しい大地だった。こういう寂しさ結構好きです。うーん、旅情編だなぁ。1時間ほどで列車は終点のハッセホルムへ。

今日はイースター
 なぜハッセホルムへ来たか。何となくである。けど最大の目的は、この先のマルメまで、スウェーデンの超特急X-2000に乗るためだ。しかしながらロンドンのエージェントで「列車の予約ができない」という話を受けていたので、一応掲示板で確認。

えぇぇぇ、ない

列車がない。確かに15時発のX-2000があったはずなのだが載っていない。しかし、他の列車はトーマスクック時刻表通りである。おかしいと思い、切符売り場へ。そこには国鉄オリジナルの時刻表があった。それで確認。 降車専用です 乗れないのだ。停まるのに乗れないのだ。そりゃ予約できないはずだ。妙に納得。しかしながら予定が狂った。と、トイレに行きたくなる。表示を見て行くと、ドアのところに1Skrとある。そこで気付く。

スウェーデンクローネ持ってねーや

デンマーククローネならあるが、スウェーデンクローネは持っていない。うぅぅ、とりあえず銀行を探す。駅を出ると人がほとんどいない。今日はイースターだからしょうがないんだろう。駅前に銀行を発見、シティーバンクカードでお金をおろす。と、「500Skrからです」との表示、欲しいのは1Skr、でも背に腹は代えられない。しょうがなくおろすと、何と出てきたのは500Skr紙幣。 使えんわい! そのままでは使えない。仕方なく、駅に戻り、売店で9Skrのガムを買い、お釣りをもらう。店のおばさんも露骨に嫌そうな顔をしていた。でも仕方ない。これで何とかトイレに行けた。しかしながら、何も考えずに国境を越えると大変なことになる。
 街を歩く・・・も、イースターなので、どの店も閉まっている。おまけにこの街は小さい。本当の田舎町である。ただ駅が分岐点にあるというだけ。まぁ、日本で言えばさしずめ米原辺りを想像していただけばいいと思う。いやぁ、何もすることがない・・・ということで、さっさとマルメまで行こうとするのだが、こんどは列車がない。腹が減ったが、飯を食うところがない・・・八方塞がりである。
 駅の中に、簡単なカフェテリアがあった。まぁ、ここで飯を食うことにしよう。しかしながらあるのは、ケーキとホットドッグ位、ここも英語が通じなかったので、何とか指さしでホットドッグとジュースを注文、わびしい昼食となった。それでも時間が余る・・・ウダウダするしかない。でも、何もない・・・やはり行く前にどの程度の街の規模か確認しておくべきであった。反省反省。
 14時前の普通列車がやってきた。結構混んでいたが、何とか座ることができた。一路マルメに向かって出発進行!!と意気込んだが、疲れのためか、睡魔が襲ってきた・・・・・
Z-Z-Z-Z

マルメ
列車はマルメに到着。さすがスウェーデン第3の都市である。駅は大きい。しかしながらここもイースター休暇のため、街が閉まっているようだ。とりあえず駅を出て街に出てはみたものの、映画館を除いて、店が全部閉まっていた。人もまばら。そこでまた思う。一体何をしに来たんだろう・・・本当に無駄な旅行が好きな私である。街の広場には大きな銅像が・・・しかしなんだかわからない。スウェーデン国旗が多数はためく場所があった。これをみてやっと「スウェーデンだ!」という気にはなれたものの、はっきり言って寂しい。本当なら活気のある街なんだろうに、まぁタイミングの悪いことに・・・と悲しくなった。
 結局街を歩き、駅前に戻ってきた。と、スタンドでいろいろ売っているのに気付き、メニューを見てみる。すると、シュニッツェル(ドイツのビフカツ)がメニューにあるではないか。どうせ屋台のメニューなのだが、ここで挑戦するのが私流(何度涙を飲んだことか・・・)、早速注文。出てきたものには、なぜか一味唐辛子のようなものがかかっていた。これまた不思議。お味の方は・・・醤油が欲しい!と思った。しかしながらまあまあの味である。
 あと何もすることがないので、予定を1時間繰り上げ、コペンハーゲンに帰ることにした。コペン行きの高速艇乗り場は、駅のすぐそばにある。何と1時間おきに船は出ており、所要時間は45分。ストックホルムより近い。17時、暗くなってきたマルメの街を後にした。高速艇の中では、免税品の販売や、飲み物・食べ物の提供があった。しかしながら歩き疲れた私には、ただ外の景色を眺めるのがやっとであった。

コペン最後の夜
 船は無事港に到着。入国審査も何もなく、外に出ることができた。港からはレストラン街と商店街を永遠と歩き、中央駅まで。ホテルに戻る前に豪華なディナーである。場所は中央駅構内にあるBistroというレストラン。北欧式バイキングをやっているところである。ここでは北欧特有の酢漬けの魚や、分厚く切ったスモークサーモン、ローストポーク、魚のフライなど、いろいろなものが食べ放題である。私も恥も外聞もなく食べた食べた食べた・・・。デザートのアイスクリームが品切れだったことを除けば、何も問題のない、いいレストランであった。さぁ、飯も食べた。ちょっと腹ごなしに・・・ということで、朝買っておいた24時間カードを使うときがやってきた。とりあえず南のコーゲまで行ってみることにした。夜の何も見えない時間帯に何をって、ただの乗りつぶしなのだ。終点に着き、折り返す。途中の駅からバスに乗るのだ。コペンハーゲンには、3桁ジャストか、50番のついたバスが走っており、これは停車バス停が少なく、電車が走っていない地域の、快速バスとして利用されている。時刻も一定で、使いやすい。今回はこのバスで、他の駅に向かい、そこからまた新たな路線を乗りつぶすという、完全にマニアックな行為に走った。これが、悲劇の始まりだったのだ。
バスは何もない平坦な道を走る。私はバスにあるバスの時刻表にあるバス停名を、目を皿のようにして確認しながら、降りるバス停が来るのを待っていた。目的地は、
S-togの駅のある 。途中、CITY 2という大きなショッピングセンターの横を抜け(といっても日曜の夜なので、看板に明かりが入っているだけだったが)、大通りを曲がったところに、S-togの看板発見!勇んでボタンを押し、降車・・・が、そこで少し不安になった。

「駅が見えない」

バスを降り、バス停の表示を見てわかった。「一つ前のバス停で降りたんだ!」間抜けである。おまけにここは完全な郊外。街灯などほとんどない。次のバスまで30分待ち。考えるまでもない「歩くしかない」

 

以下、鋭意作成中


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