sense off/PC
 
 
2001.3.19
 
 新進気鋭の(いい加減このフレーズも使い古されてきたな…)ニューブランドotherwiseの第一作目。
 このゲームの大まかなバックストーリーやキャラ設定などについては、メーカーサイトの製品情報を見てきてもらうのが一番正確でわかりやすいのですが、大雑把にまとめると
 
 ある日自転車で転んだ主人公は、たまたまそれを目撃した世話好きなおばさんに救急車を呼ばれ、そのまま病院に連れて行かれる。
 その際の脳波計測で若干特殊な波形が認められたため、病院からどこかの施設へと誘われた。
 その施設の名は、「認識力学研究所」。
 
 …といったところです。
 この「認識力学研究所」という施設名称に惹かれるものがあるなら、それだけでも買い。
 それくらいにデキが良いです、このゲームは。
 
 
 
 さて、ではゲーム内容について。
 基本的なゲームシステムは、お馴染みのkey・ビジュアルアーツ系ADVシステムそのまま。
 この「ビジュアルアーツ系ADV」という言い方はあまり好きじゃないんですが、これが一番通りが良い紹介でもあるので仕方ない。
 さらには、コミカルタッチな前半+シリアスなヒロイン個別シナリオ、という作りも同じ。
 だから非常にスムーズにプレイできます。
 肝心のシナリオに関しては…、ネタバレになるので詳しくは書けませんが。
 発想が凄い。
 とにかく凄い。
 よくもまぁそんな事を考え付いたな、というくらいの突飛な発想ですが、しかしシナリオライターの元長柾木氏は本当に力のある人だということが感じられます。
 電波系と言ってしまえばそれまでなのですが、比較すれば電波度は「雫」と同じくらい。
 きちんと整合性があって十分楽しめるシナリオとなっています。
 …とゆーか、個人的には「雫2000」という感じ。
 Leafが注目を浴び出した時期から数えれば「雫」が一作目に当たり、otherwiseも「sense off」がデビュー作なのですから。
 さらに言えば、音楽に関して折戸伸治氏が係わっている点も雫と同じ。
(とは言え、本作においては折戸氏はあくまでゲストですが)
 難点はCGくらいで、今の売れ線の絵とは若干タッチが違うため、パッと見では他のゲームに比べ地味な印象があることくらい。
 でもやってりゃすぐ慣れるんですがね。
 
 
 総合的に見て、非常にハイレベルであることは疑いようの無い一本。
 粒ぞろいだった2000年エロゲのダークホースとして、今からでも良いので是非遊んで欲しい一本です。
 なお、このゲームにはドラマCDが出ているのですが、ドラマでは本編のネタバレをバリバリやっているので、ゲームをコンプリートしてから聞くべきでしょう。
 
 
 
 以下ネタバレ感想。
 
 主人公・直弥の能力が「他人の運命を強制的に変えてしまうこと」だというのが明らかになった時は、
「うまいこと言うなぁ〜」と思いました。
 確かにエロゲの主人公たるもの、そーゆー能力を持っているものですが、それを直弥の特殊能力としてしまうとは。
 思惟生命体というアイディアも凄いし、惟子シナリオ後半でのノベルはその余りの文章力・構成力に
「あんた作るゲーム間違ってるよ、ADVじゃなくてノベル作んなさいよ」と突っ込んでしまった。
 これら全てを元長氏一人で書いたというのがまた凄い。
 元長氏は第二の高橋龍也となれる可能性がある。
 他にも、サブライターが書いたというおまけシナリオの出来がこれまた良い。
 少女Aシナリオ、ネタ自体は「Only You」などで使われていたけれど、そこからスタートする物語というのは新鮮だった。
 最後の「私、最後まであなたのこと、忘れなかったよ」にはかなりグッときましたね。
 隅々にまで手を抜かずに作られた、とても良いゲームでした。
 こんなに良いゲームが無名で埋もれているなんて、やっぱり間違っている。
 
 
 最後に一言。
 彰人は凄く美味しい男キャラでした。
 タニシ好きという設定だけでこんなにも面白いキャラになるなんて。
 つーかエロゲでタニシなんていう単語初めて見た。
 いやホント、よくもまぁこんなバカバカしい(でもすごく面白い)設定を考え付いたものです。