DANCING BLADE
かってに桃天使!/PS 1999.2.4
コナミがやるドラを作ったらこうなるという見本のようなソフト。
やるドラではなく、「殺るドラ」
になっているような気が。
見方とプレイする人によっては、決してクソゲーとばかりも言えませんが、少なくとも万人にお勧めできるゲームじゃないのは明らか。
よって、こちらのカテゴリーに入れることにしました。
・桃天使って一体何? 編
ひょっとして、マジでこのソフトを知らない人もいるかもしれないんで、ちょっと真面目に。
上記の通り、いわば「コナミ版やるドラ」です。
もっとも、本家とは違い、オタク向け光線バリバリ〜ッてな具合ですが。
日本の伝統的昔話「桃太郎」のメインキャラクターを美少女に置き換えて、「特に取り柄はないがなぜかもてる」オリジナル主人公キャラを付け加えたわけです。
もちろんアニメ絵全開。
まさに、オタクのオタクによるオタクのためのゲームです。
・驚くべきシナリオ構成! 桃天使の真実! 編(国際的調査組織FREC社中間結果報告書より抜粋)
かねてより極秘に進めていた内定調査の結果、「かってに桃天使!」には、全四パターンのエンディングがあることが判明した。
我々のエージェントが某ルートより入手したソフトのマニュアルにもこのことが記載されているため、誤認ではないだろう。
早速我々は、ムービー・ストーリー・エンディング・キャラクター性等を総合的に分析することにした。
検査を依頼したのは、アニメストーリー作成に定評のある赤ほりさとる事務所。
運良く、所長である赤ほりさとる氏(超一流小説家)にお会いすることが出来、当調査依頼を行ったところ、赤ほり氏も本件に多大なる関心を持たれ、本来多忙である赤ほり氏自ら、我々の調査を行うと言って下さった。
依頼を受けてもらえた事に安堵した我々は、ソフトを赤ほり氏に渡すと、一旦本部へと引き上げることにした。
しかし、数日後、驚くべき事態に遭遇してしまったのだ。
驚くべき事態とは、一体何か?!
この後全てが明らかになる!
コナミルック・ニュース!
「かってに桃天使!2」は、2月25日発売を目指し、鋭意制作中!
桃天使、ときめきメモリアル、みつめてナイトなどのグッズも大好評発売中!
各種グッズのご購入は、日本各地の「こなみるく」で!
超大人気一流小説家赤ほり氏に、「かってに桃天使!」の調査依頼を行った我がFREC社。
スポンサーからの調査依頼を無事果たせると思い、やっと落ち着いた時を過ごせたのも束の間。
わずか数日にして、驚くべき事態が発生した。
それまで鰻登りに右肩上がりだった氏の人気が、空前絶後の勢いで急落してしまったのだ。
同氏の代表作とも言える作品「セイバールイージネットJ」の売り上げ部数は、それまでの平均日売冊数3000冊から、平均日売2冊へ。
TVアニメ版「セイバールイージネットJ to R」の視聴率も、90度近い角度で下落。
コンスタントに35%以上の数値を叩き出していた物が、わずか0.01%以下にまでなってしまったのだ。
この異常事態に衝撃を受けた我々は、即座に赤ほりさとる事務所へ急行した。
しかし、当の赤ほり氏は至ってにこやかに我々を迎えてくれた。
そして、桃天使ソフトをエージェントに手渡すと、「いやぁ、これ面白かったですよ。私もこんな話を書きたいと思って、小説家やってるんです」と語った。
詳しく話を聞いたところ、氏はこの数日というもの、ずっと桃天使をプレイし続けていたそうだ。
ちょうどこれから詳細分析に入ろうとしていた矢先、仕事が入ったため、当分分析は行えそうになくなり、それで我々にソフトを返そうとしていたところだったと言う。
我々は、当調査依頼と、現在の同氏の人気急落の関連性を訊いてみたが、赤ほり氏は、
「ご心配には及びません。人気はすぐ回復しますよ。なんたって、私は天才小説家ですからねぇ。はっはっは…」と朗らかに笑って下さった。
我々としても、これ以上同氏に迷惑はかけられないため、すぐにその場を立ち去った。
現在、桃天使の分析を他の研究機関へと再依頼。
その分析結果が届くのを待っている状態である。
追加情報が入り次第、追って新情報を報告する。
補足事項。
赤ほり氏の人気は、この後も底知らずの下落を続けている。
我がエージェントの一人が考察するに、赤ほり氏はもうかなり前から人気を失っていたらしい。
その原因は、彼のシナリオのレベルの低さにあるそうだ。
何より一番悪い点は、絶対的大多数が、彼のシナリオのくだらなさに嫌気がさしているにもかかわらず、本人は面白い物を書き続けている一流の脚本家だと思いこんでいる点にある、と。
今後、彼が人気を回復できるかどうかは、彼自身にかかっていると言えるだろう。
・意外な出来映え! 素晴らしくなめらかなアニメーション! 編
まずは「かってに桃天使!」ディスク1をPS本体にセット。
なんとこのソフトは、ディスク三枚組なんです。
やるドラでさえ二枚なのに。
はーい、あたしわぁ、ぷれいすてーしょんしょうがっこうさんねんせい、「かって・もも」でぇーす。
にねんいちくみに「あかさかみつき」ちゃん、にねんにくみに「まゆ」ってゆうおともだちがいまーすっ。
何はともあれ、まずはOPムービーを見ます。
特にこの手のオタク向けアニメ絵ゲームでは、OPムービーも大きなウェイトを占めます。
人間に例えれば、OPムービーは脳味噌、ゲーム本体は心臓ってくらいに重要です。
で、問題のOPムービーですが。
とんでもなく出来がいい!
アニメ絵400%な作風に相応しく、OAVのOPアニメーションを思わせます。
もしこのムービー部分だけを、何も知らない人に見せたら、十人中八人くらいは、ホントのOAVと誤解すると思います。
スタッフネームもきちんと表示されますから。
ムービー内容も、主人公とヒロイン桃(活発な幼なじみ)、それにお狗ちゃん(天然ボケお嬢様)、猿吉(無骨な巨人)、キジメ(セクシーオネーサマ)の三人、いわば「いぬさるきじ」が揃うまでのシーンを抜き出して描いているため、より一層OAVっぽい…いや、この構成は、むしろ連続TVアニメーション的ですね。
ムービー終了後、タイトル画面表示。
意外な良さに、「ひょっとして、このソフトは掘り出し物?!」と多少期待しつつ、ゲームスタートッ!
・オタク御用達! 泣いて喜ぶお約束ストーリー! 編
スタートすると、まずはどっかの社みたいなところが襲撃されるシーン。
子安武人さん声のキャラが少し喋って、終わり。
ま、よくあるタイプの出だしのシーンです。
続いて表示されたのは、なんとなく日本橋的な場所から、その襲撃跡から立ち上る黒煙を遠くに眺めている主人公、猿吉、キジメの三人。
直後、街中から桃とお狗ちゃんが走り寄ってきます。
…ちょっと待てい!
「この五人がどんな風に出会ってどんな感じでパーティを組んでどこを目指して旅しているのか」等の説明はどうした!
ここで注釈。
メインキャラクター五人がどんな感じで出会ったか云々は、説明書にはまっっっっっっっったくかかれていません。
にもかかわらず、いきなり唐突にストーリーは始まります。
あたかもTVアニメ「かってに桃天使! 第五話 京は大騒ぎ!」とでも言うかのように。
…はっ、まっ、まさか?!
OPムービーが、それを説明していたというのかッ?!
たったあれっぽっちでッ?!
…いやはや、意表をつかれました。
各キャラ同士の出会いを描くというのは、ストーリー・キャラクターに感情移入してもらう上で、重要なファクターだと思っていたんですが、どうやらコナミではそう思われてはいないようです。
その後に続くストーリーは…もう、あんまりお約束過ぎて、思い出すのもイヤ。
ストーリーはシリアスとギャグの二本しかないし、各ストーリーでエンディングが二つずつの計四つ、シナリオ途中での選択肢は若干の展開の変化と好感度チェックしか関係ないし。
それでも、敢えて言いましょう。
取り柄がほとんど無い優柔不断なだけの主人公がもてる話は、もう食傷気味なんだよ!
・一件落着! 桃達は新たなる旅路へ! 編
最後くらいは、ちょっと真面目に。
ここまで書いてきた通り、このソフトのターゲットは、アニメ絵・お約束ストーリーが大好きな人に限定されます。
これが好きではない人には、まず楽しむことなど不可能でしょう。
逆に、この手のノリが好きな人なら、それなりには楽しめます。
なぜ「それなり」かと言うと、他の面での問題が多すぎるからです。
まず、絶対的にストーリーが短い。
それこそ1プレイ20分程度で終わってしまいます。
さらに、一度見たシーンのスキップ機能がないため、同じシーンをもう一度見る羽目になります。
それでも、全エンディングを制覇するのに、1時間30分程度でしょうか。
一応、見たムービーシーンのうち、好きなシーンの再生機能がついていたり、ハッピーエンドを見たキャラは、ディレクターズカット(そのキャラにもっとも相応しいストーリー)が見られる機能がありますが、それくらいではマイナス面が強すぎるんです。
少なくとも、定価¥5800で買ったなら、100人中100人が物足りなさを感じると思います。
高くても¥2800程度…それくらいまでなら、まだ買う気も起きますが…。
ムービー自体は、全編非常に滑らかで高クオリティですし、シリアスシナリオの終盤シーンはそれなりに格好良いんですが、そのためにシナリオのボリュームを増やすことができなかったんでしょう。
まもなく2が発売されますが、こちらもやはり定価¥5800。
ボリュームアップがなされているそうですが、どの程度変わったものか…、何よりお約束の「取り柄もないのに何故かもてる主人公」というシナリオは全く同じらしいですし。
まぁ、少なくともシステム面の不備と、シナリオのボリュームを増やせば、もうちょっとはオタク受けするゲームになるでしょう。
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