2000.5.23
トンキンハウスが出したサウンドノベル。 ぼくはトンキンハウスのソフトはほとんど遊んだことがないので、「あんまりノベルゲーを出してないメーカーだよなー」くらいの認識でファーストプレイを遊びました。 …が、これが大間違い。 もの凄い出来でした。 以下そう思った根拠を述べていきます。 また、最初にことわっておきますが、これを書いている時点で、ぼくはまだ一度しか通して遊んでいません。 見たのは「星原百合」シナリオだけです。 まず、このゲームの世界観ですが。 今ぼくたちが生きているこの「現実界」と、幽霊・死神・ヴァンパイアなどの亜人間が生きている「幻想界」が、それぞれ別個の物として確実に存在している、ということになっています。 この手の設定自体はよくありますし、とにかくそういうことになっているんだと納得するより他にありません。 次に、パッケージや画面写真などから受ける印象はまさにギャルゲーそのもので、学園物ということもあり、誰しもTo Heartを連想すると思います。 しかし、それは大間違いです。 確かに登場キャラは女の子ばかりで、声入りなのもヒロイン級の女の子だけですが、これは決してギャルゲーではありません。 少なくとも、THやKanonのような「恋愛を主眼としたシナリオ構成」からはかけ離れたストーリー展開を見せてくれます。 これは、やるドラ第一段の「ダブルキャスト」を思い出してもらえればわかりやすいと思います。 あれも一見ギャルゲー風でしたが、内容はギャルゲーとはとても言えない物でした。 本作「Lの季節」も、ちょうどそんな形なのです。 だから、パッケージに惹かれ、ギャルゲーを期待して買ったら、肩すかしを喰らうでしょう。 しかし、その分シナリオはもの凄いです。 上にも書いたとおり、まだ一人分のシナリオしか見ていないのですが、このシナリオはとてつもない凄さでした。 ギャルゲー的要素は薄いのですが(まぁ多少は入っているが)、それだけにシナリオをキャラで誤魔化す事が出来ず、結果としてプレイヤーにじっくり読ませるだけの本当に面白いシナリオに仕上がっています。 特に後半〜終盤の展開の巧みさや、「現実界」と「幻想界」の繋ぎ方なんか、あまりの上手さに背筋がゾクゾクしました。 (ちなみに、『シナリオをキャラで誤魔化している』最良の例がTHの来栖川芹香シナリオ。でもそれが悪いと言うつもりはありません。シナリオ作りの一つのやり方です) さらに音楽もハイクオリティな物ばかり、CGも若干クセはあるものの上手いし、声優は力のある人ばかりでキッチリ演じてくれています。 演出効果もしっかり考えられており、実に楽しく遊べました。 あと、とりあえず今まで遊んで気付いた欠点、ですが。 まず難易度がベラボーに高いことがあります。 手元にガイドもあるのでちょっとパラパラっと見たところ、どうやらEDフラグが存在しているらしいのです。 つまり初回プレイでは必ずバッドエンドに到達するようで。 (痕のEDシステムを思い出して下さい、アレですよアレ) 次に、文章が若干くどいこと。 また、主人公の思考がプレイヤーの思考とあまり一致しないということもありますね。 まぁこれはこの手のタイプのゲームなら必ず言われることなんですが。 あと、セーブが一ファイルにつき一ブロックで最大三ファイルまでしかセーブできない、というのは今時のゲームにしてはやや不親切かも。 セーブロードの待ち時間もごくごく平均的です。 でも、ファーストプレイをした限りでは、難点はこれくらいですね。 シナリオの素晴らしさを思えば十分許容範囲内です。 まだ一人分のシナリオしか見ていないので何とも言えませんが、もし他のシナリオもこれだけのレベルなんだとしたら、この「Lの季節」はコンシューマノベルゲーとしては屈指の出来です。 今後ゲームを進めたらまたレビューを書き加えようと思います。 では、最後に星原百合シナリオ終盤の展開に対する考察を書いて、本日分のレビューは終了しようと思います。 (ネタバレ! 百合シナリオクリアしてないと意味わかんないです) 百合シナリオ終盤の展開を「ご都合主義だ!」と切り捨てる向きが、ひょっとしたらあるかもしれません。 しかし、このゲームはそもそも「不思議な『力』を持つ者が住んでいる”幻想世界”が存在している」という大前提の元でストーリーが展開されていくのです。 だから、百合シナリオラストをご都合主義だと否定するなら、「Lの季節」というゲームそのものが根本から崩れ去ってしまいます。 なので、百合シナリオラストについてケチをつけるのは筋違いな文句なのです。 2000.5.26 このゲーム、やっぱギャルゲーかも。(←挨拶。…ってパクリはやめよう) プレイ時間が20時間弱に達し、もう十周以上遊びました。 色んなエンディングを見て、このゲームについてだいたいわかったので、前回書いた通りレビューを更新します。 まず言葉の足りなさを補足します。 上で「ベラボーに難しい」と書きましたが、どのよーに難しいのかを書き忘れていました。 これは、シナリオ分岐が異常なくらいにややこしい、という意味です。 基本分岐は選択肢によるヒロインの感情度の増減なのですが、このゲームにはオリジナルのシステムとして「口出しシステム」なるものがあります。 これは、平たく言えば「”プレイヤー”が”主人公”に『このキャラに好意的な態度をとれ!』」と言うことのできるシステムです。 これだけならむしろ既存のゲームより易しくなりそうなのですが、これが実に難しい使われ方をしています。 「口出しした際になんと言ったか」で後々に表示される選択肢が変わるのです。 もちろん、「どの選択肢を選んだか」でもシナリオは分岐します。 これに感情度による分岐も加わり、さらにそれぞれの条件も複雑に制御されています。 とにかく、ぼくの知る限りこれほど入り組んだ分岐を持つノベルゲームは他にありません。 ガイドを参照しながらプレイしていても分岐の複雑さに頭が痛くなるくらいなので。 とにかく難しいゲームです。 次にシナリオについて。 このゲームが「現実界編」「幻想界編」に分かれていることはもう書きましたが、どうも色々やってみたところ、それぞれの世界で基本となるシナリオは大別すれば二本のようです。 トータルで四本分のシナリオがあり、それにヒロイン毎のシナリオがくっつくわけですね。 中でもぼくが一番面白いと思ったのは、前回も書いたとおりの現実界・星原百合シナリオ。 今のところ、これが一番出来が良いと思ってます。 シナリオのラストの真相もキッチリ見ましたが…これは好みが分かれるだろうなぁ、とゆー真相でした。 まぁ悪くはないです、ええ。 それなりに筋は通ってますから。 それから、このゲームをギャルゲーと見るようになった理由ですが。 前回も書いた通り、シナリオ中ははっきり言ってギャルゲー要素は薄いです。 せいぜい「かまいたちの夜」程度です。 しかし! その分ヒロインとのハッピーEDはギャルゲーエッセンス大爆発。 「シナリオライターが鬱憤を晴らそうと思いっきり悪ノリして書いたのではないか?!」と勘ぐりたくなるくらいにものすごぉ〜くラブラブなEDです。 特についさっき見た「星原百合グッドエンド」は、ギャルゲーを遊び慣れているぼくでも気恥ずかしさを感じるくらいにらぶらぶでした。 ぼくはつい「ウィザーズハーモニー」を思い出してしまいました。 この「Lの季節」のギャルゲー度は、ちょうどウィザーズハーモニーと同じくらいです。 最後に、システムについて。 このゲームは、「ルート達成率」「CG回収率」が表示されますが、これを100%にするためには、一つのファイルに上書きしていく必要があります。 よーするに「やるドラ」のシステムなわけです。 また、一応メッセージスキップはあるのですが、上記の「口出しポイント」ではスキップは止まりません。 止まるのは選択肢だけです。 せっかく既読スキップになっているのに、これは非常に残念です。 口出しポイントでも止まるようにすりゃー良かったのに。 でも、システム的な不備はこれくらいです。 オプションとかに色々面白い機能がついてるし、セカンドプレイ以降は1プレイ1時間程度なので、基本的には遊びやすいゲームだと思います。 この「Lの季節」を総じて見れば、音楽は良いし演出も良いしCGも綺麗だしシステムもそこそこ整っているし、何よりノベルゲーで最も重要なシナリオがかなり面白いので、非常に質の高いノベルゲームだと言えるでしょう。 ただし難易度が鬼のように高いため、全ED見ようと思うならガイドブック必携です。 もう一つだけ。 このゲームを形容するのに「やるドラ」とか「ウィズハー」とかを引き合いに出しましたが、実はこれら以外で「Lの季節」をそのものズバリ言い表せるADVが存在します。 そのゲームと「Lの季節」はとんでもなく似ていて、違いと言えばジャンルがADVかノベルタイプかということくらいです。 それ以外に関してはほとんどそのまま。 (…と言っても、システムの親切さという点のみに絞れば、そのADVの方がずっと上ですが) しかし、困ったことにシナリオのオチまで似ているんです。 だからネタバレになるのでここには書けません…と言いたいのですが、せっかく思いついた事を書かないのも癪なので、いつものよーにネタバレガードでこの下に書いておきます。 このゲームはYU-NOにそっくりだ。 |