別紙
開発項目「多型開発マイクロアレイ応用化技術の研究開発」 平成11年度成果報告書
目 次
研究開発の成果と達成状況
(1)研究開発の成果
要約
本文
緒言
実験材料および方法
DNAマイクロアレイ用プローブの設計
DNAマイクロアレイの作成
HCVウイルスの抽出およびサンプル調整
HCVサンプルのDNA配列とDNAマイクロアレイ上の塩基の比較
実験結果および考察
DNAマイクロアレイ用プローブの設計
DNAマイクロアレイ作成
HCVウイルスのサブタイプ同定へのDNAマイ
クロアレイの適用
結論及び今後の研究課題
結論
今後の課題
引用文献
まえがき
近年のDNAマイクロアレイ技術は、ゲノム研究およびDNA産業に不可欠な次世代テクノロジーとなるであろうと注目されている。しかし、現状のDNAマイクロアレイの応用としては、その具体例は少なく、利用は余り進んでいないのが現状である。DNAマイクロアレイ技術が、次世代のテクノロジーとして認知されるには、様々な領域への応用は必要不可欠であり、その為のサンプルの収集、基礎実験、解析手法の確立は、今後のマイクロアレイの実用に重要なキーテクノロジーとなり得る。
また、ゲノムDNAの解析プロジェクトの進行に伴いDNA多型解析が注目されている。DNA多型解析では、親子鑑定、個人識別、先天性遺伝性疾患、後天性遺伝性疾患などへの応用研究が進んでいる。
本研究は、特に日本国内に患者数が多く、海外と比較して、検体・知見の蓄積、分子レベルの研究も進んでいるHCVを研究対象とし、そのサブタイプを同定するためのDNAマイクロアレイを作成し、実証実験を行うとともに、統計学的手法等の情報処理技術をを用い、結果の有用性を実証及びデータベース開発を行った。
1.研究開発の成果と達成状況
(1) 研究開発の成果
要約
本研究は、多型解析の分野でのDNAマイクロアレイ技術の応用を目指すものである。
そして、多型解析DNAマイクロアレイをより具体性のある、実用性のあるものとする為、サンプルを限定する。 そのサンプルとしては、特に日本国内に患者数が多く、海外と比較して、検体・知見の蓄積、分子レベルの研究も進んでいるHCVを研究対象とし、実証実験を行う。 そのためには、まず1番目に多型解析用のマイクロアレイおよびハイブリダイゼーションプロトコルの作成、第2にサブタイプ同定用の領域の選定およびに、その領域を含む形でのRT-PCR、第3に実サンプルのハイブリダイゼーションによるシグナル値の検出を行った。
マイクロアレイの作成においては、市販されているコート済みのスライドガラスを使用して、DNAの末端をアミノ化したものをスポットして製作した。 ハイブリダイゼーションには、蛍光標識した合成DNAサンプルを使用することにより検証し、結果は極めて良好であった。
HCVサブタイプの同定に使用する領域には、変異の少ないCoreの領域を選定し、各サブタイプ毎に80%以上のゲノム一致のコンセンサス配列を作成し、サブタイプ毎のコンセンサス配列を比較することにより、1塩基変異のある部分を切り出しサブタイプ同定用の25merの配列を作成した。 C型肝炎患者由来の血清よりゲノムRNAの抽出、逆転写酵素によりcDNAを作成した後に、選定した領域を包括する部分でRT-PCRを行った。 2nd-PCRの際に蛍光標識を施し、作成済みのマイクロアレイとハイブリダイゼーションを行った。
シグナル値の検出の結果、PCR産物の完全一致の部分でシグナル値を検出、また、1塩基変異の部分でシグナル値の著しい減少、2塩基変異の部分でシグナルの消失を確認した。
これらのことにより、サブタイプの同定がマイクロアレイを使用することで可能であることが証明された。
今回の実験では、ターゲットをHCVに限定かつHCVのサブタイプも一部に限定して行ったが、サンプルはPCR産物であれば1塩基変異を特定できるので、様々な分野に応用可能である。
本文
緒言
近年のDNAマイクロアレイ技術は、ポストゲノムを担うDNA産業に不可欠な次世代テクノロジーとなるであろうと注目されている。 しかし、現状のDNAマイクロアレイは、様々な生物種からのcDNA産物をガラス基板上に植え付けることによる発現解析で利用され、他の研究目的での利用は余り進んでいないが現状である。DNAマイクロアレイ技術が、次世代のテクノロジーとして認知されるには、様々な領域への応用は必要不可欠である。
また、ゲノムDNAの解析プロジェクトの進行に伴いDNA多型解析が注目されている。DNA多型解析では、親子鑑定、個人識別、先天性遺伝性疾患などへの応用研究が進んでいる。
本研究は、多型解析の分野でのDNAマイクロアレイ技術の応用を目指すものである。 そして、多型解析DNAマイクロアレイをより具体性のある、実用性のあるものとする為、サンプルを限定する。 そのサンプルとしては、特に日本国内に患者数が多く、海外と比較して、検体・知見の蓄積、分子レベルの研究も進んでいるHCV(C型肝炎ウィルス)を研究対象とし、実証実験を行う。
HCVは全長約9kベースのRNA型のゲノムを持つウィルスである。感染経路は、主に血液を介して行われるため、現在は感染することが稀になっているが、HCVの発見や予防方法が確立されていない時期の輸血や予防接種などの際に、劇的に広がったとされている。
HCVは、その高い変異性から、多数のサブタイプに分類され、さらに宿主免疫監視機構からの逃避に寄与しているとされており、治療を目的としたワクチンの開発や有効性の障壁となり、HCVのインターフェロン治療有効性にかかわっている。また、病気の進展と共にゲノムの多様性が増大するという報告例もあり、宿主内のウィルス変異を同定する手段が治療手段の研究、治療の有効性の指標、また、病態・病気の判断に有効と考えられる。
現在のウィルスの同定法としては、PCR法が用いられている。PCR法は、現在の同定法の中では、被験者のウィルス感染からウィルスの同定が可能な時期までの期間が一番短いとされている。ただし、一組のPCRプライマーではサブタイプの同定までは不可能であり、サブタイプの同定を行うには、シーケンスや、あるサブタイプに特異的なプライマー等を使用する必要性がある。本研究では、国立遺伝学研究所で構築しているHCVデータベースより、サブタイプ同定のために最適とおもわれる領域をコンピュータ上で選定し、選定した領域のDNAマイクロアレイを作成し、名古屋市立大学の協力により、実際に患者から提供された血液よりサブタイプ同定をRT-PCR、DNAマイクロアレイとのハイブリダイゼーションにより、DNAマイクロアレイ法によるHCVサブタイプ同定の応用化技術の確立を行う。
実験材料および方法
DNAマイクロアレイ用プローブの設計
サブタイプの選択と領域の決定
HCVには8種類のサブタイプが既に判明しているが、これらをSNP等を利用してタイピングできるマイクロアレイを設計するために、実証試験に有効であろうと考えられるサブタイプの選定と、領域の選定を試みた。
サンプルのHCVデータは、国立遺伝学研究所のHCV
Databaseを利用した。
本データベースにエントリされているデータの総数は7,265であり、内訳は以下の通りである。
表1 HCV
Databaseの構成
|
region |
numbe of
entries |
|
|
nucleic
acid |
amino
acid |
|
|
5’UTR |
864 |
- |
|
core |
256 |
248 |
|
E1 |
303 |
275 |
|
NS1-E2 |
124 |
118 |
|
NS2 |
114 |
109 |
|
NS3 |
107 |
102 |
|
NS4 |
105 |
101 |
|
NS5 |
93 |
91 |
|
Full CDS |
93 |
87 |
|
Full
genome |
93 |
- |
総数7,265のエントリのアラインメント結果(図1)より、サンプル数の多いサブタイプとして(1a, 1b, 2a, 2b, 3a, 3b)を今回の解析の対象として選択した。

次に、各サブタイプのタイピングを行うための領域を、上記の8部分(full CDS、full genomeを除く)から選抜するために、各領域に関して弊社既開発のソフトウェア「GeneLime」を用いて変異率の計算を行い、結果、coreを適当な領域として選定した。
プローブセットの基本設計
HCVサブタイプのタイピング用プローブの設計の為に、HCV-DB に登録されたHCVの全長ゲノム配列のマルチプルアラインメントを参考にして、非常に保存されているが、異なるサブタイプ間に1塩基変異がみられる領域を特定する作業を、遺伝研のHCVデータベースのツールを弊社ソフトウェア「GeneLime」を用いて実施した。
チッププローブの設計
このうち1a,1b,2a,2bについて、サブタイプ同定用のマイクロアレイを作成した。
スポットしたサンプルは下記の25merと33merの計8サンプルである。
25merサンプルは以下のとおりである。(ポジション 100 〜 124 of core)
|
スポットサンプル名 |
配列 |
|
1a-25 |
gtttacttgttgccgcgcaggggcc |
|
1b-25 |
gtttacctgttgccgcgcaggggcc |
|
2a-25 |
gtatacttgttgccgcgcaggggcc |
|
2b-25 |
gtttacttgctgccgcgcaggggcc |
33merサンプルは以下のとおりである。(ポジション 100 〜 132 of core)
|
スポットサンプル名 |
配列 |
|
1a-33 |
gtttacttgttgccgcgcaggggccctagattg |
|
1b-33 |
gtttacctgttgccgcgcaggggccccaggttg |
|
2a-33 |
gtatacttgttgccgcgcaggggccccaggttg |
|
2b-33 |
gtttacttgctgccgcgcaggggccccaggttg |
(ii)DNAマイクロアレイの作成

通常のcDNAのマイクロアレイと違い、オリゴDNAのマイクロアレイ作成手順における注意点として、UVクロスリンクによるDNAの固定は、短鎖DNAにはDNAの切断、カップリング等が起こることによりハイブリ効率を著しく低下させるために不向きである。 そこで、一般的にプロトコルが知られているPCRプロダクトのスポッティングマニュアルは使用できない。そこで、最近になってマイクロアレイ用に種々のコーティングをスライドガラスにほどこした製品が販売されており、その中でアルデヒドコートを施したスライドガラスを使用する。スポッティングに用いるDNAはアルデヒドとシッフベースを形成するように、末端にアミノ化したものを使用する。
反応の概略を図2に示す。
次に、合成したオリゴDNAはC−18カートリッジにて精製を行った。
逆相HPLCにて純度検定をおこなう。
条件は以下の通り。
Column : Wakosil 5C18N (4.6*150mm)
Flow Rate : 1.0 ml/min
Sample Volume : 180 microliter
Detection : Absorbance at 256 nm
Solvent : 100% TEAA-100%TEAA(5min)-[liner gradient]-
60%TEAA,40%ACN(20min)-20%TEAA,80%ACN
temp : R.T.
次ぎに、DNAマイクロアレイを作成するにあたって、何点かについて基礎検討を行った。
内容は以下の4点についてである。
・マイクロアレイに使用するスライドガラス
・スポットに使用する合成オリゴDNAの塩基数
・スポットする際に、サンプル調整に使用する溶液組成
・スポットに使用する合成DNAの濃度
具体的には、スライドガラスは、BM機器製のアルデヒドコートのスライドガラスとグライナー製のアルデヒドコートのスライドガラスを、合成オリゴDNAの塩基数は、15〜17merを、サンプル調整に使用する溶液組成はPBS、SSC、BM機器製スポッティングソルーション(略号SS)、水を、スポットに使用する合成DNAの濃度は2.5 ug/ulから2倍希釈で3種類の濃度に調整したものを使用した。
さらに、固定能測定のため、スポットのために合成したDNAは3’末端はC7アミノ基導入、5’末端はCy3導入をしており、スキャンアレイでの検出を行った。
次に、スポッティング手順は以下の通りとした。
3’末端にC7アミノ基を導入したオリゴDNAを合成合成オリゴはC-18カートリッジ精製したものを使用、濃度 5 ug/ulに超純水で調整








超純水(25℃)で1分間洗浄を2回行う
還元溶液組成
1.3g NaBH4
375ml PBS(リン酸バッファー(Sigma DULBECCO’S PHOSPHATE BUFFERED SALINE))
125ml エタノール
HCVウイルスの抽出およびサンプル調整
ウイルスRNA抽出
血清からのウィルスRNAの調整は、三光純薬のSepaGeneRV-Rを使用した。
SepaGeneRV-Rは非フェノール性試薬と蛋白質凝集剤を使用し、相分配法に基づいて、比重の違いにより中間に凝縮層を形成させる凝縮分配法(Agglutination
Partition method: AP法)を用いている。
プロトコルは以下の通りである。(SepaGeneRV-R説明書より抜粋)
予め滅菌済みの1.5mlマイクロチューブにGuanidine Thiocyanate(HCV粒子の膜溶解作用と蛋白質の変性作用)共沈剤(HCV−RNAの目視効果)を300ul分注する。
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フィルター付ピペットマイクロアレイで血清(又は血漿)100ulをマイクロチューブの試薬内に注入し、ピペットにより泡立てないように均一に混和する。 ミキサーによる混和の場合は、攪拌後必ず遠心分離でスピンダウンする。

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12,000rpm(11,750xg)、4℃で10分間遠心分離する。
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マイクロチューブの底に付着している青色ペレットに注意しながら、アスピレーター又はピペットで上清を完全に除去する。
b.ウイルスRNAからの逆転写(cDNAの作成)
cDNAの調整方法としては、以下の方法に従う。
組成・温度調整を以下に示す(1枚のマイクロアレイ当たりに必要な量) SolutionA: HCV-RNA 合計5μl ランダムプライマー 濃度1μg/μlを1μl DEPC処理DW 適量

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DW 20μl, 0.5M EDTA 5μl,1N NaOH 10μlを加え、65℃で1hr インキュベートする。
25μl 1M Tris-HCl(pH7.5)を加え、中和する。
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サンプル溶液をMicrocon−30に入れ、10〜20μlに濃縮する(8000rpm×約4min遠心する)。
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250μlのTEを加え、10〜20μlに濃縮する(8000rpm×約9min)この操作を2〜3回繰り返して未標識のdNTPを除去する。
Core領域におけるRT-PCR
Core領域の増幅のために、以下のとおりPCRを行った。
PCRの条件は以下に示すとおりである。
組成
F-primer (10 pmol/ul) 1ul
R-primer (10 pmol/ul) 1ul
dNTP MIX (2mM each dNTP) 2.0ul
10+PCR Buffer 2.5ul
Taq 0.1ul (0.5U)
DDW 17.4ul
product (cDNA)
1ul
Total 25ul
サーマルサイクラー設定
94.0度1分
60.0度1分 35サイクル程度
72.0度1分
1stPCRプライマー
S2: 5-GGGAGGTCTCGTAGACCGTGCACCATG-3 (pos. -24-3)
A2: 5-GAG(AC)GG(GT)AT(AG)TACCCCATGAG(AG)TCGGC-3 (pos. 417-391)
2ndPCRプライマー
S7: 5-AGACCGTGCACCATGAGCAC-3 (pos. -12-8)
A5: 5-TACGCCGGGGGTCA(TG)T(GA)GGGCCCCA-3 (pos. 341-316)
2ndPCRの際に、Cy5-dCTPをdCTPの50%を混入させたものを使用して、PCRを行った。
HCVサンプルとDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション及び洗浄の方法は、以下のプロトコルに従った。
ハイブリダイゼーション溶液は、最終濃度 0.2% SDS,4xSSCとなるように調整する。
スライドガラスをスライドガラスフォルダーに置き、1000rpmにて1分間、遠心する。 (洗浄液を飛ばす)
スキャンアレイにて読み取りを行う。
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(iv)HCVサンプルのDNA配列とDNAマイクロアレイ上の塩基の比較
1a、1b、2a、2bについて、ターゲットとなるDNA配列をDNAオートシークエンサを用いて決定し、DNAマイクロアレイとHCVウイルスサンプルとのハイブリダイゼーション反応結果の検証に用いる。
実験結果および考察
プローブの設計
総数7,265のエントリのアラインメント結果(図3)より、サンプル数の多いサブタイプとして(1a, 1b, 2a, 2b, 3a, 3b)を今回の解析の対象として選択した。各サブタイプのタイピングを行うための領域として(core, E1, NS1-E2, NS2,
NS3, NS4, NS5)の8部分に関して弊社既開発のソフトウェア「GeneLime」を用いて変異率の計算を行った結果(図4)として、Coreを適当な領域として選定した。


DNAマイクロアレイ作成
HCVサブタイプ同定用DNAマイクロアレイを作成した(図5)。具体的には、1a、1b、2a、2bの4つのサブタイプに対し、core領域でそれぞれのサブタイプ内で保存されている領域の25merと33merのプローブをスポットしたDNAマイクロアレイが完成した。

HCVウイルスのサブタイプ同定へのDNAマイクロアレイの適用
サブタイプごとのHCVから作成したcDNA由来の2nd-PCRを行った結果、サブタイプ2bのPCR産物には増幅が見られなかった(図6)。そこで、今回のサブタイプ同定には1a,1b,2aを用いることとし、ダイレクトシーケンスを行った。しかし、1b、2aに関しては、DNA配列を決定することができたが、1aはうまくいかなかった(図7)。これは、HCVのPCR産物が、時として多種のクローンが存在するためであると考えられる。
DNAマイクロアレイのプローブとサンプル1b、2aの配列間のアライメントを、図8に示す。サンプル1bはDNAマイクロアレイ上のプローブ1bと完全一致、プローブ1aと1塩基違い、プローブ2a、2bとは2塩基違いであった。また、サンプル2aは、DNAマイクロアレイ上のプローブ2aとは完全一致、プローブ1aとは1塩基違い、プローブ1b、2bとは2塩基違いであった。
HCVサンプルとDNAマイクロアレイ上のプローブのDNA配列間のアライメント結果を踏まえて、サンプル1a、1b、2aとサブタイプ同定用のマイクロアレイのハイブリダイゼーションを行った読み取り結果を図9に示すとともに、DNAマイクロアレイのプローブ長25merについては、サンプルとDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションの蛍光強度をヒストグラムとした(図10)。
プローブ長25merの方が、プローブ33merより蛍光強度が高かった。このことより、マイクロアレイを使用した1塩基変異の同定には25mer程度が適切といえる。
サンプル1aは、プローブ長が25merのDNAマイクロアレイで、1aと2aで強いシグナルを示したことから、DNAマイクロアレイを使った実験から、サンプルは1aないし2aいずれかであると同定できた。サンプル1bは、プローブ長が25merのDNAマイクロアレイで、1bで強いシグナルを示すことから、DNAマイクロアレイを使った実験からサンプル1bはサブタイプ1bと同定できた。サンプル2aは、プローブ長が25merのDNAマイクロアレイで、2aで強いシグナルを示すことから、DNAマイクロアレイを使った実験からサンプル1bはサブタイプ1bと同定できた。
3つのHCVウイルスから抽出したRNAを元に、DNAマイクロアレイによるサブタイプ同定した結果、2つについては正確にサブタイプを同定することができた。1つは、この4つのプローブセットだけでは、1つのサブタイプに同定できなかったが、少なくとも2種類に絞り込むことはできた。1aに関しては、シーケンスの結果はまだわかっていないが、シグナル値は1aと2aとが等しくなっていることより、1aと2aを見分ける1塩基変異の部分で変異がおこっているのかもしれない。
今後、HCVのサブタイプを同定するマイクロアレイの作成においては、今回選定したような領域を複数個スポットすることにより、より確実性を増したものとなるだろう。
また、今回の実験ではターゲットとしてHCVのゲノムを使用したが、1塩基変異の検出はPCRプロダクトならどのようなものでもかまわないので、様々な分野に応用可能である。





結論及び今後の研究課題
(i)結論
多型解析へのDNAマイクロアレイ技術の応用という目的で、本研究開発を推進してきた。実際のHCVウイルスのサブタイプ同定という具体的な目的に対し、コンピュータを用いたプローブ設計、DNAマイクロアレイ作成、HCVウイルスの用いた実証という一連の解析の流れを構築することができ、且つ1a、1b、2aと3種類ではあるが、DNAマイクロアレイを使って、十分サブタイプ同定が可能であることが実証できた。この成果を基に、さらに同定するサブタイプ数を増やし、HCVサブタイプ同定マイクロアレイとしての確立を進める目処が立ったといえる。そして、HIV等他のウイルスの同定も、この手法を基にして開発可能であると考える。また、プローブ設計等ソフトウェア技術の応用化を進める為の基盤が出来たと考える。今後、サブタイプ同定のみならずSNP等多型解析への応用を進め、DNAマイクロアレイの応用化基盤技術の確立を進める。
(ii)今後の課題
マイクロアレイを作成する以前の問題として、HCVゲノムからのサンプル調整(RT−PCR)において、サブタイプを同定するのが目的であるために、すべてのHCVゲノムに対して共通のプライマー及びに共通のサーマルサイクラーの設定でPCRを行わなければならず、一部のサンプルにおいて増幅効率が著しく低かったり、また、まったく増幅がみられないことが多々あった。
今後も、HCVゲノムに関する情報の蓄積により、より効率のよいプライマーの設計等が重要視される。
シランコートされたスライドガラスは、かなりの疎水性を持つために、スポットしたサンプルの形が、円形にならず、クロスカットをほどこしているピンでのスポットのために形が、一部星型になっているものが見受けられる。
溶媒を100%水でなく、一部に不活性な有機溶媒等を加えることにより、使用しているスライドガラスに適したスポッティングソルーションの開発が望まれる。
工業化するにおいては、DNAの合成は、現在様々な所で行われており、値段的のもかなり低コストで合成可能であるが、今回のマイクロアレイ作成ではDNAのアミノ化が必要不可欠であり、アミノ化を依頼した場合のコストがかなりを占めた。
今後、より安価なマイクロアレイを提供するにあたっては、アミノ化の部分を低コスト化することで、マイクロアレイがもとめやすいものとなる。
引用文献
なし
(2) 目的に照らした達成状況
多型解析へのDNAマイクロアレイの応用として、本研究開発によって、HCVウィルスのサブタイプ同定を実施例として、研究開発を行い、DNAマイクロアレイを使って、サブタイプ同定が可能であることが証明できた。まだ、商用化にはコスト的な面で改善しなければならない部分はあるが、引き続き検証して行く中でクリアできるものと考えられる。HCVだけでなく、また、他の応用実験への適用を進める中でより完成されたものができると考える。