住みつないでいく新たな試み

<再生前と工事中の様子>

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 この建物は、戦中に疎開先として先代が購入されたもので、以降、今日まで大切に住み継いでこられた住宅である。 最初に建物を拝見したときは、まず玄関の梁の太さに驚かされた。
 和室等の造りも非常に良くできており、台所は寒さを防ぐために床が張られていたが、高い吹抜の空間は整然と組まれた梁組と貫を現しとして、寺院の庫裏に入ったかの印象を受けた。
 全体に多少の歪みはあったものの、戦争中、これだけの普請がなされていたことに感心したことを今も記憶している。

 今回の計画は、建物をどういう形で継承するかが焦点となったが、単なる保存ではなく、あくまでも生活することを前提として、安全性と利便性を付加することが条件となった。
 検討を重ねながら、最終的には、建物を一旦解体し、鉄骨造のフレームの中で再構築するという、通常の保存再生とは異なる手法を採用している。玄関から和室にかけては出来るだけ現状維持を心掛け、旧台所部分は吹抜を生かして、開放的なサロンとして再生した。
 エレベーターの設置を含めてバリアフリー化を図りながら、プライベートな居住部分は2,3階に配置している。全体としては公と私の空間を縦に区分する構成となっているが、1階の独立性が確保され、接客空間としての機能がより鮮明になったと思われる。

<再生後の様子>

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