歴史的建築物の保存活用条例を適用した本坊庫裏改修 -大本山 東福寺ー

<再生前~工事中の様子>

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 臨済禅師1150年の遠諱大法会が、大本山東福寺において平成28年に勤修された。全国の臨済宗、黄檗宗各派の僧侶が一堂に会する50年に一度の大法要で、東福寺ではこれを機会に本坊庫裏としての必要な広さと機能を備えた厨房(典座)の整備を希望された。
 本坊庫裏は東福寺境内の中心に位置し、明治14年の火災による焼失後、明治43年に再建された建物で、文化財の指定は受けていないものの、禅宗寺院の庫裏として文化的価値を十分に有する貴重な建物である。
 今回の計画はその庫裏の東に接続する厨房の建替にあたるため、増築扱いとなり、構造上切り離しても庫裏およびその他の建物に現行の建築基準法が遡及されることになる。実状を京都市に相談したところ、「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を適用することの提案を受け、今回の改修に至った。
 条例の適用においては法的緩和を受ける一方、既存部分についての耐震性確保や新設する厨房部分からの出火時の延焼を防ぐための消防設備の増設など、長期的な視点で建物の保存と安全性を確保するための措置が求められる。通常の建築行為と比較すると複雑な検討や手続きは必要となるが、文化的価値の高い建造物を合法的に保存活用していくためには有効な手段である。現在は京都市以外でも歴史的な建築物に対して法規制緩和に向けた条例の制定が広がりつつあり、保存するだけでなく、建物の活用面での選択肢が広がることが期待される。

<再生後の様子>

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