先代の思いを胸に-古民家の耐震改修

<再生前の様子>

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 建築主は長年のお勤めが一段落し、ご子息夫妻と同居されることを前提に建物の改修を計画された。 規模の大きい古民家で、当初は耐震性の心配から新たに建替えることも選択肢とされていた。
 建物調査では、主な礎石には不動沈下もなく想像以上に大きな礎石が据えられており、建築当時に水害の経験を生かした強固な造成が施されたことが伺えた。また、柱は全て石場建で、梁組に立派な材を用いて構造的にしっかりと造られていることが分かった。 限界耐力計算による検討の結果、既存の軸組みの歪みを補正し、一定の補強を行えば、今後100年の使用にも十分耐えられると判断した。尚、耐震補強として"荒壁パネル"を採用し、基礎の補完なども行っている。
 全体の構成としては、1階と2階とで玄関を別に設けた二世帯住宅とし、中央に配置したエレベーターで行き来できるようにしている。補強のため、壁に変えた開口部もあるが、既存の軸組を生かしながら、それぞれの生活様式に合わせた間取りになっている。
 主屋の改修工事と同時に、表門・土蔵や塀の補修、芝庭への改修及びアプローチの整備など外構工事も行っている。中でも、座敷に面する前栽においては、既存の植栽を剪定し、庭石の輪郭を明確にするなどの手入れを行うことで見事に作庭当時の面影が蘇り、建物との一体感が増したことが感動的だった。 改修工事が終わった後、その前栽に面した座敷の壁には、改修前と同じ位置に先々代の肖像画が掛けられた。また、小屋裏には新旧2つの棟札が並んでいる。

<再生後の様子>

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