旧家の名残を残す新築住宅

<再生前の様子>

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 建て替えを検討しておられた建築主が、近くで設計した当方の建物を見て気に入って下さったのがきっかけで、設計の依頼を受けることになった。
 既存の建物は昭和初期に建てられ、漆喰塗の外壁。開口部には格子戸。そして屋根は今では珍しい本瓦葺。内部は田の字型の小間と土間が残る典型的な日本家屋で、老朽化が進み雨漏りも生じていた。
 今回の建て替えでは、梁や差鴨居などの構造材から建具まで最大限再利用できるよう、現在の生活スタイルをとりれつつも間取りや意匠は既存を継承するプランとなった。 ご高齢のお祖母さんが同居されているために間取りの大きな変化を避けられたこともあるが、なによりもご家族全員が既存のお住まいの雰囲気を気に入って愛着をお持ちで、畳の生活を好まれていたことから、いまどきにはめずらしく畳の部屋の方が多い間取りとなった。高齢者もお住まいなので、床の段差はできるだけなくして手摺を設けるなど今後のことにも配慮しているが、至る所に以前の住まいの面影が残っているためあまり違和感なく生活して頂いているようである。 また、外観から見えてはいないが屋根には太陽光発電パネルも設置されており、古材の利用も含めて環境に配慮した建物になっている。
 堺という歴史ある街にあって、このあたりにはまだ戦前の建物も少なからず残っている。それらの建物と規模等は変わるが、面影を残すことで通りのもつ雰囲気の変化は少ないと思われる。以前に再生したN邸も近隣にあることから、景観構成の1つのモデルケースになれば大変有難いと考えている。

<再生後の様子>

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