石清水八幡の借景と大広間を文化財へ ー中村家住宅大歌堂ー

<再生前と工事中の様子>

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 中村家住宅は、石清水八幡宮の東麓の門前町にあり、放生川にかかる安居橋と共に八幡市の重要な景観要素である。毎年9月に行われる「石清水放生会」では、この橋の上で稚児が胡蝶の舞を舞う際などは景色として上蔵が必ず映り込む。また、敷地内の建物は「大歌堂」の額を掲げた大広間を中心にして、西の間、旧主屋、上の蔵などで構成され、近代書院の形式を現わす建築として、平成24年に一連の建物は国の登録有形文化財となっている。
 オーナーの中村様はこれらの背景を十分理解し、次世代へこの建物を残していきたいいという強い思いをお持ちで、今回は大広間と主屋に限定し、意匠の修復と保全、構造耐力の向上を目的に改修工事を行った。

① 瓦葺を空葺工法(葺土なし)に改め、建物自体の荷重を軽減
② 小屋組全体の締め直しや劣化部材の修繕、接合部材等を補完
③ 不同沈下の調整や傾斜や歪みの補正、基礎の新設など
④ 改変部分の修復では、玄関廻りの意匠の修復、鋼板を銅板屋根へ、 また合板を無垢材に修正
⑤ 実用性の確保として、浴室、トイレ等の水回りを整備など

 男山を借景とする非常に格式の高い大広間の修復工事が完了し、今後はこの建物の有効な活用方法を検討していくことが課題となる。

 ※文化遺産オンライン(文化庁が運営するポータルサイト)

<再生後の様子>

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