古民家を改修したデイサービス  -「名塩ケアステーション」-

<再生前の様子>

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 建築主は「元気なお年寄りも楽しめるデイサービスを」という夢を実現するため、この古家付(戦前)の土地を購入された。設計依頼を頂いた当初、敷地に高低差があるため建物にも段差が多く、高齢者福祉施設として改修可能かどうか不安を抱いたが、建築主が他にもデイサービスを運営している経験豊富な方であり、「一般的な施設」ではなく「居心地のよい住宅」を目指しておられ、段差の問題についても独自の見解をお持ちであったことから、こちらも勉強させてもらいながらの現場となった。

 改修にあたって建物を調査したところ、数回にわたる増改築の形跡があり、床レベルのばらつきや腐朽・劣化による不陸や多少の傾きが生じていた。また、つし2階を居室として使用していた時期に、顔の高さぐらいにある「地棟」の西側半分が切り取られていたりもしていたため、梁を新たに足し、腐朽が見られる床組は柱の根継ぎを含めて大幅に更新するなど、建物全体の構造的な補強も踏まえながら改修案を検討していった。

 建築主は長年福祉関係の仕事に携わり、常に介護についての問題意識をお持ちの方で、独特の着眼点とユニークな発想で、新しい環境に溶け込むのが難しいお年寄りのためにいろいろと創意工夫をされてる。今回設置した薪ストーブが、高齢者施設の雰囲気を感じさせない。一見危険なように思われるが、入所見学に来られる方には好評で、出来るだけ防護柵は設けずに使っていきたいと言われていた。利用者の深層心理にある懐かしさに似た記憶を蘇らせ、「居場所」を見つけるために、「箱は大事なんです」とおっしゃったことが印象的であった。

<再生後の様子>

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