桜の名所 吉野の寺院庫裏の改修   -如意輪寺庫裏-

<再生前の様子>

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 吉野山如意輪寺は延喜年間の創建と伝えられ、後醍醐天皇の勅願寺とされた寺院。楠木正行が足利軍との戦を前に訪れ、辞世の歌を刻んだとされる”正行辞世之扉”をはじめ、南朝ゆかりの古文書のほか蔵王権現像(重文)などが残る。また、寺の裏山には後醍醐天皇塔尾陵があり、吉野の観光名所の一つにもなっている。
 本堂の西側にある現在の庫裏は、火災による焼失後、江戸後期に他の寺より移築された建物といわれており、唐破風の式台を中央に配し、東側を書院などの接客、寺務空間とし、西側を居住用に充てられてきたが、昭和40年代の改造で土間には床が組まれ、壁や天井は新建材で覆われた状態であった。
 今回の改修では、改造で違和感の生じた外観を整備、土間を再現し、拝観者が庫裏の北側にある宝物殿等まで、建物内部を通って行ける動線を確保することとなった。吉野は桜の名所であり、桜の季節に拝観者が一気に増えるため、土間の入口はできるだけ広く確保し、建具も全開出来るようと、季節に応じた対応が求められた。
 土間の北側に喫茶スペースを設け、今回の工事に併せて整備された庭園に面して設置し、拝観者の休憩場所となっている。また、庫裏は山の西斜面配置され、西側は石垣で造成されおり、石垣の脇にある地下室的な空間は、石垣をそのまま見せる形で拝観者用のトイレを設けた。 既存の軸組や天井は、幸いにも損傷は比較的少なく、補修を施す程度で再用できた。腐朽や虫害のある部材は取り替たが、住職とも話し合った結果、人工的な古色付けは行わず、経年による木材の自然な変化を待つことにした。

<再生後の様子>

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