npo法人古材バンクの会をとおしての再生物件

<再生前の様子>

拡大画像

 京都市の東部、周辺にはまだ畑などもあって、大変のどかなところに位置する。建物の老朽化が進んでいたことから、建築主も以前から建て替えを検討されていたが、これまで3世代にわたって住み継いだ建物を簡単に廃材にしてしまうのはあまり気が進まず、「古材文化の会(旧:古材バンクの会)」に相談にこられたのがきっかけで今回の計画が具体化することになった。
 既存の建物は明治初期に建築されたもので、田の字型の和室に玄関と台所が付属する典型的な農家型の間取りとなっていた。場所によってはかなり傷んでいるところもあったが、再利用できる部材も少なくないと判断し、計画はこれらの古材を利用することを前提として進められた。
 古材の見せ方としては、旧建物のイメージが継承できればと考え、できるだけ当初と同様の位置で、同様の組み方を再現している。古材は一旦新しい空間の中に組み込まれると、以前とはまた表情を変えて独特の雰囲気を造り出してくれる。今回、屋根に使われていた葺土も新規の壁土に混入して使っている。壁土は古い土を混ぜることによって強度を増すとよく言われるが、実際に乾燥時に生じる干割れも非常に少なかった。古土を混ぜたことによって、壁土の材料としては大変良好なものができたと思われる。
 何代にもわたって建物を継承していくことは、今日では非常にまれなことになっている。これまで既におよそ100年を経てきた建物の部材や素材が、また新たなかたちで次の世代に引き継がれるということは、大変意義深く、価値のあることではないだろうか。

<再生後の様子>

>再生実績1へ戻る