1. 原理

 SEMの原理を図1に示す。真空中でエネルギーを与えられた電子は、軸対称の磁場あるいは電場の電子レンズによりその軌道を変えて、電子線を一点に収束させることができる。すなわち、SEMでは電子銃で発生した電子線を2段ないし数段の電子レンズで細く絞り、偏向コイルの磁界により偏向して試料表面をX,Yの2方向に走査させることができる。
 試料への電子線照射により試料から二次電子や反射電子が放出される。二次電子は検出器に印加された10KV(通常SEM観察に用いられる加速電圧)の正の電位に引かれて、また反射電子は自らエネルギーで、いずれも検出器表面に塗布された蛍光面に衝突して光に変換され、この光は光電子倍増管(PMT)で増幅される。この信号はさらに増幅されたあと観察用および撮影用の陰曲線管(CRT)に供給される。CRT上では信号量の違いによりその輝度を変調することができる。試料表面上の電子プローブが位置するある点と、CRT画面上の試料像の相当するCRT内の電子ビームの位置は常に完全に正しい相対関係が保たれるのでCRTの蛍光面上にSEM像をえることができる。SEM像はTEMのように像一面が一度に移されるのではなく一点ごとに構成されていく。試料表面を走査する走差面の大きさはCRT画面よりずっと小さいから最終画像は試料表面の拡大像になる。

1 SEMの原理図

 試料表面から放出した二次電子のエネルギーは、たかだか数十ボルトであることと、検出器に印加された10kVの電場は試料表面全域におよんでいるため、検出器から見て影になっている部位から放出した二次電子も検出器に捕捉され、試料表面の凹凸による情報の欠損はあまりない。しかし、二次電子では傾斜角効果とエッジ効果とよばれる試料表面の形態に依存してその放出が増減する現象があるため、得られる二次電子像においては試料表面の凹凸に依存するコントラストがつき立体感のある像になる。この傾斜角効果とは、図2のように電子線の入射方向に対して試料が傾いている場合,試料内に進入した電子線の拡散領域が傾斜していない場合に比べて試料表面に近くなり,したがって、試料内で発生した二次電子が試料表面に到達しやすくなり、結果的に試料表面からの二次電子の放出量が増大する現象である

2 二次電子放出の傾斜角効果

またエッジ効果とは,図3に示すように、試料表面の角や突起物の先端から二次電子が多量に放出され,二次電子像においてその部分が他の部位に比べて極端に明るくなる現象である。

3 二次電子放出のエッジ効果

 二次電子像のコントラストは、前述の試料表面の凹凸によるほか、試料の構成元素によっても変わる。ただし反射電子の放出は原子番号が大きくなるにしたがい増大するが、二次電子の放出は必ずしも原子番号の順ではないため、二次電子像で明るい部位が暗い部位に比べて平均原子番号が一概に大きいとは言えない。

 試料表面の凹凸や組成によらない二次電子像のコントラストを形成する他の要因としては、試料表面の電位差に依存するものがある。例えば、生物試料などの非導電性試料を観察する時に、試料表面が電子線照射により帯電する。これが、試料からの二次電子の放出に影響を与え,異常なコントラストを示すことがある。これを避けるには、試料表面に金属などの導電物質をコーテイングするか、加速電圧を低くして試料が帯電しないように心がけなくてはならない。ただし半導体デバイスなどでは,逆にこの電位差コントラストを利用して,デバイスの診断に用いられる場合もある。

 また二次電子像のコントラストは試料へ入射する電子線の加速電圧によってもかわる。加速電圧が変化すれば二次電子の発生率が変わるばかりではなく、電子線の試料内での拡散領域が変わるため前述の傾斜角効果やエッジ効果にも大きく影響を及ぼすためである。

 一般のSEMの二次電子検出器では,特に試料からの反射電子を除く手段を持たないため,検出器には二次電子だけでなく反射電子も捕捉されている。二次電子捕捉のためには検出器に正の電位(10kV)を印加しているが、この電位を印加しないとエネルギーの小さな二次電子は検出されなくなるが、反射電子は入射電子とほぼ同程度のエネルギーであり試料から放出した方向へ直進するため、検出器に向かって放出された反射電子のみが検出器に捕捉される。このようにして得られた反射電子は二次電子像とは異なり、試料の凹凸に対応した情報の影響ができる。図2-4は試料表面で放出された二次電子と反射電子の二次電子検出器に対する挙動を模式的に表している。

 反射電子の放出量は試料を構成する物質の原子番号に依存するため、反射電子像そのものを有効に利用するために専用の検出器も考案されてきた。

4 二次電子検出器に対する二次電子と反射電子の挙動