マダムとポチの 

Mt.Kinabalu登山記

2006.7.1〜7.5

    

 ヒマラヤ以南でアジアの最高峰、ボルネオの

キナバル山、4,095.2mの登頂を目指しました。

 天候に恵まれ、順調にローズピークに登頂できるかと思いましたが、体力が続かずチェックポイント(3,668m)を過ぎたところで引き返すことになり、夜明けまで仮眠して下山しました。


7月1日(土)東京—雨

 7:44発のバスで武蔵小金井駅に向かい、中央線、山手線を乗り継いでJR上野駅に到着する。京成上野発8:58の特急で成田空港第二旅客ターミナルに10:05到着する。

 託送したスーツケースを受け取り、H-カウンターで航空券を受け取る。G-7カウンタターでマレーシア航空の搭乗手続きをして、スーツケースを預ける。ショールダーバッグとハンドバッグという軽装になり、4Fのレストラン、PAUSEでビール、コーヒー、ホットサンドの軽食をする。

 マレーシア航空MH-071便、ボーイング777-200型はGate-91を定刻の13:30に離れ、13:50に離陸した。機内食はポチが肉、マダムは白身魚で、赤ワインで頂く。パーサーが赤ワインのお代わりを薦めたが、明日からの登山のため、2杯で断る。

 クアラルンプールのKLIA到着は19:25、定刻よりややはやく、C-25ゲートに到着した。日本とマレーシアの時差は1時間、約7時間のフライト中良く眠った。

 エアロトレンでメインロビーに移動し、入国審査とセキュリティーチェックを受けて国内線出発ロビーに向かう。国内線の出発ロビーは国際線ロビーと違って、時々到着便から降りてくる客やアナウンスの声が聞こえてくるが、店も少なく時間も遅いせいか閑散としている。唯一あったカフェ、ES Spres Kafeでオレンジジュースとミロを飲みながら出発時間を待つ。

 KLIA発コタキナバル行きMH-2626便の07A & Bの座席に乗る。周りを見ると、日本からの客も多い。A-6ゲートを21:35に離れ、21:58に離陸したボーイング777−200型機は定刻の翌7月2日の0:05コタキナバル空港に到着した。離陸直後に機内食が出てきたが、殆ど食べず、アルコールも口にせず、ひたすら睡眠に努めた。

 到着待合室にはHISの現地担当者が迎えに来ており、人数の揃うのを待ってバスでステラハーバー・リゾートに向かい、0:30到着する。

  明朝の出発が早いので、ガイドの説明が終わると、スーツケースを自分で持ってルームNo 963に急ぐ。明朝の準備をして2:00就寝。

 

7月2日(日)晴 スコール

 5:50に起きて、カップヌードルとあんぱんの朝食をする。

 7時に迎えに来たWildlife社の車でキナバル公園本部(HQ)に向かい、8:30到着する。

リュックの中身チェック:雨具、着替え、傘、手袋、ヘッドランプ、カメラ、サングラス、コンパス、地図、ホカロン、靴(上履き)、水、酸素水、食べる酸素、アンパン、ドラ焼き、カップヌードル、台湾の梅干、ナイフ、ライター。

HQで入山申請書にパスポートNO、住所、氏名を記入し、署名して提出し、パスポートを提示する。引き換えに入山許可のID カードが渡され、これは記念として持ち帰ることが出来る。これらの手続きは全て今回のガイド、Dennis ( Doinis Saibeh) とSopain Ben Sintehさんがしてくれた。後で聞いたところによると、彼らは従兄弟同士で、いずれも四十代とのこと、私たちの子供達と同年代であった。彼らのご両親も私たちとほとんど同じ年齢だそうである。Sopainさんは立派なひげを蓄えた威厳ある顔立ちで、週に3回はこの山に登るそうである。

用意してあった昼食用の弁当(サンド、卵、バナナ)と水が渡され、車で4km先の登山ゲートに向かい、10分程で到着する。登山ゲートはチムポホン・ゲート、Timpohon Gateと呼ばれ、1,866m地点にある。

9:05登山ゲートを出発する。だらだらと坂道を下って滝の前の橋を渡る。この滝はカールソン滝と呼ばれ、水しぶきを上げて流れ落ちている。

 

これからいよいよ登りである。道は良く整備されており、アイアンウッズという固い木や石で階段状になっており、所々には鉄製の手摺

もあるが、段差が高すぎるところがあるため、杖や手摺に頼って登る。この動作が徐々に体力や足の力を消耗させたようである。林の中の道は日陰も多く、熱帯雨林にしては意外と涼しく、快適である。道端や林の中の花や樹木、こけ類は高度が上がるにつれて変化して行く。

 タンポポに始まり、キナバル・バルサム、シャクナゲ、ルモット、いろんな種類のラン、ウツボカズラ、オオシダ、老人のあごひげと呼ばれるコケ。

 2人のガイドのうちSopainさんは私達の速度に合わせて、ゆっくりと先頭を、Dennisさんは後から来ていると思ったら、いつの間にか先になって途中で待っていたり、仲間のガイドと話し込んだりして、私達の前後を歩く。

 ゲートから500mおきに緑色の標識がある。最初は「K0.5」とルートマップがあり、9:20に通過する。

 最初のシェルターが1km地点にあり、9:40に通過する。Pondoc Kandis と書かれた屋根付き、ベンチがある四阿である。水洗トイレ、蛇口付きの水タンクもある。頂上までの間にあるシェルターはいずれも同じ造りである。

1.5km地点のシェルターで9:55から5分程休憩し、水分を補給する。2km地点では10:25から5分間休憩し、その上のシェルターを10:35通過しようとしたら、ボルネオ地リス、Borneo Ground Squirrelがチョロチョロとあらわれて、食べ残しの食物をくわえては林の中に逃げ込んで行くのを見つけ、しばらくその様子を見守る。

2.5km地点からは岩混じりの細い道となり、11:35に3kmを過ぎると急な階段となる。周りの景色は熱帯雨林らしく、大木にシダ類が群生したり、野生のランが寄生しているのが見られる。

ラヤンラヤン・ハット、Layang-Layang Hutは標高2,680mにあり、ここが今日の行程の約半分になる。12:20に到着し、12:50まで昼食をする。持参した弁当のうち二人とも卵とモンキーバナナ3本、サンドイッチ1個は食べたが、サンド2個は残し、水と共にガイドに差し上げる。

後半の行程は急な坂と階段状の登りが続き、森林限界を超えた辺りから露出した岩場となる。13:40、4.5km地点でスコールに会い、合羽を着て歩く。スコールは14:25、5.5km(3,060m)辺りで止む。

これからの0.5kmはきつかったが、ラバンラタ・レストハウスが見えてくるとほっとする。

ラバンラタ・レストハウス、Laban Rata Resthouseは標高3,352mにあり、レストランを持つこの地点で唯一のホテルである。周りにはいくつかの宿泊所があるが、いずれも暖房が無く、食事はこのホテルで摂る。ホテル到着は16:00、雨も上がりホテルの入口からパナール・ラバンと呼ばれる大岩壁を仰ぎ見る。戸外の温度は12℃で肌寒い。一階の部屋は2段ベッドが3個ある6人部屋で、既に6人が在室していたが、ホテル側の間違いで我々2人の分をあけてくれ、夫々2段ベッドの上段を与えられる。部屋の中は暖房が効いていて暑く、たまらなくなったので、フロントに話して温度を下げてもらったが、それでも暑く、マダムは眠れなかったようだ。なお、ガイドはスタッフ小屋がホテルの下にあり、そこに宿泊する。

夕食は17時からビュッフェ形式でご飯、焼きそば、肉、カレー、野菜炒め、バナナの天ぷら、卵などがあり、コーヒー、紅茶は自由である。Dennisさんが様子を伺いにきたので、ギネスの缶ビールを1缶20RMで2缶買い、乾杯する。英国人らしき若者が我々のギネスを見て喜んでくれる。中国人らしき若者には、私達の年代でここに来るのは珍しいのか、記念写真を撮られ年齢を聞かれる。

しかし、レストランの中のメジャーなグループは韓国の団体で、2組程が夫々10人以上で、賑やかにおしゃべりをしたり、持参したキムチやカップヌードルを食べたりしていた。残念ながら途中では日本人の若者と声を掛け合ったりしたが、このホテルでは姿を見なかった。

18時に食事が終わり、夕焼けを期待したが、残念ながら見えず、19時にはベッドに横になる。夜中に暑いと言ってマダムに起こされたが、疲れていたせいか良く眠った。

 

7月3日(月)曇 スコール

1:50目が覚める。顔を洗って水を飲み、眼を覚ます。約束の2:30にSopainさんとホテルの玄関で待ち合わせ、出発する。

ヘッドランプを頼りに、坂道を上り、ロッジの前を過ぎると高い段差で急勾配の階段が連続し、しかも各グループの登山者が一列になって登るので、何度も渋滞待ちをし、ペースが乱れる。上を見ると一列になったライトがのろのろと動いている。岩場にさしかかるとロープを頼りに滑りそうな足場に気をつけながら登る。道は北に向かっており、南の方を見下ろすと、街の灯りがちらちらと輝いている。

岩場を登り終えて、7km地点を3:30に通過し、斜面を迂回するとサヤッ・サヤッ小屋が見えてくる。ここにチェックポイントがあり、

IDカードのチェックを受ける。

チェックポイント到着は3:45、標高3,668m地点である。チェックポイントからわずかに登ったところでマダムの脚力が限界となり、ポチも頂上まで登る自信がなくなってきたので、サヤッ・サヤッ小屋の仮眠ベッドに横になり、夜明けを待つ。

6時頃になると辺りが明るくなってきた。ガイドに起こされて小屋の外に出てみると、わずかに朝焼けした空や、はるか下の方には雲海が見える。暗くて見えなかった景色が段々見えてくると、右に左にそそり立つ岩壁や岩山が迫ってくるが、ロウズ・ピークの姿は見えなかった。

滑りそうな岩上を慎重に歩いて下り、グンティン・ラグダン小屋、標高3,322mの標識が見えてくると間もなくラバンラタ・レストハウスに7:35到着する。気温は9.2℃。

朝食は焼きそば、卵焼、持参のあんぱん、スープ、サバティーで、疲れていたせいか、食欲が無い。食後、下山の準備をしてレストランのバルコニーからはるか下の町並みを眺めていると、雲上の仙人になったようだ。同室の残り4人のうち2人は全く登らず、ベッドに横になっていたそうである。

9:00下山し始めると、膝や足が痛くなってきた。こんなに早く筋肉痛になる訳は無いので、階段の上り下りと筋力低下が原因ではないかと思う。マダムも同じ状態らしく、ゆっくり下りることにする。その内、膝の痛みが酷くなり、階段は横向きになり、杖で支えてやっと下りる状態である。リュックは2人のガイドに持ってもらい、何時歩けなくなるかハラハラしながら下山するはめになった。

残り1kmのところでスコールがやってきた。合羽を着て滝の下を通過する時はほっとしたが、それからの上り坂がきつかった。登山ゲート到着は14:10、5時間10分かけて下山したことになる。

こんなに苦労するとは思わなかったが、下山途中で出会った若者に年齢を聞かれ、再三珍しがられるところを見ると、我々みたいな高齢者がこの山に登ることは珍しいことなのかもしれない。

登山ゲートで待っていたWildlife社の車でHQに行き、登山証明書をもらい、ここでSopainさんと別れる。昼食の用意もされていたが、昼食には時間も遅く、疲れきっていたので、引き続いてDennisさんに車でホテルまで送ってもらう。途中の果物屋に立ち寄ってもらい、バナナ1房1RMとパイナップル1個2RMを買う。

ホテル到着は16:15、ナガーイ1日であった。

ホテルに帰ると、先ずはシャワーを浴びてさっぱりし、コーヒーとバナナで小腹を満たす。マダムは持参のタイガーバームを足腰に塗り込んで筋肉痛対策をする。

雨は降っているし、近くにマダムご希望のスチームボートの店も無いとのことで、ホテルのCafé Boleh-DN Foodで夕食をする。マダムはワンタン入りスープと白身魚のフライ、ポチはフィシュ&チップスを夫々烏龍茶とタイガービールで頂き、デザートはフルーツの盛り合わせである。食後、テータレがあるとのことで、庭園の夜景を眺めながらRobby Loungeで赤ワインとサバティーのテータレを頂く。

部屋に帰って買ってきたパイナップルを頂き、20時にはベッドに入り、そのまま朝までぐっすり眠る。

 

7月4日(火)晴 

 4:55起床する。8時からこのホテルで初めての朝食をし、マゼラン・ウイングや海岸を散歩する。10:30チェックアウトしてスーツケースや手荷物をクロークに預け、11時発のシティー循環バスでコタキナバル市街に向かう。

 バスをセンター・ポイントの前で降り、センター・ポイントの中のスーパーマーケットや専門店を歩き、お土産などを買い求める。ホテルへの帰路はタクシーで、13:40帰着する。

 昼食は昨夜食事をしたCafé Boleh-DN Foodでサラダ(キュウリ、ジャガイモ、山芋のような芋、卵、豚肉、キャベツ、インゲン&ピーナッツ入りソース)とサンドイッチ&ポテトをタイガービールとジャスミンティーで頂く。

 15:00 HISがチャーターした車で空港に向かう途中、土産物屋に立ち寄り、15:45空港に到着する。ガイドは到着した時と同じボンさんで、以前会ったことがあると言われる。しかし前回訪れた時はプライベートだったのでHISのお世話にはなっておらず、人違いだろう。

搭乗手続きをして、スーツケースを預け出国審査を受けて搭乗待合所で搭乗を待つ。

マレーシア航空MH-2609便KLIA行きボーイング737-400型機は17:54 No.4ゲートを離れ、ほぼ定刻の18:03離陸した。飛び立って間もなく近くの島にあるラブアン空港に着陸し、18:25から19:05まで乗客や荷物の積み降ろし、積み込みをする。KLIAまでの途中でこの島に立ち寄るとは知らなかったので、驚いた。この島を飛び立つと、20時には機内食が出されたが、美味しくなくパスする。

KLIA到着は21:15、B-5ゲートに到着する。トランジット用のイミグレーションで出国手続きをし、エアロトレンでサテライトの国際線搭乗口に向かい、土産物屋を散策し、出発時間までCafé Hopicalで生ビールとカフェラテを飲みながら過ごす。歩くと足や膝が痛いので、なるべく歩かないようにする。特に階段の上り下りやスロープは応える。

マレーシア航空 MH-088便はC-22ゲートから23:45に離陸し、成田空港第二ターミナルの33ゲートに7:27到着した。

 

7月5日(水)曇 小平—雨

成田空港到着時の天候は曇、気温22℃。4:45頃には雲海の上の朝焼けが奇麗だった。5:15には機内食が出たが美味しくなく、今回もパスする。生憎、今回は機内食には恵まれず、機内食の質が落ちたのかと疑う。

健康状態の申告書を提出し、入国審査と税関検査を経てスーツケースをNPS—スカイポーターに預け、8:36発の京成電車のモーニングライナーで日暮里に向かう。そこから東京駅を経て中央線を武蔵小金井で下車し、バスで11:23帰宅する。 

今回の旅では体力の衰えを感じ、足の悪い人の苦労を実感した。


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