概論
1.旧約聖書と新約聖書
福音書が「律法と預言者」と言う場合、「70人訳聖書」を指します。
現在の旧約聖書の範囲は、ファリサイ派を中心とするユダヤ教によって紀元70年〜90年のヤムニア会議で決められました。
旧約聖書の範囲について、現在のキリスト教はこれに準じていますが、当時のキリスト教は、現在、外典・偽典として知られているものも参考にしています。
新約聖書の成立は、紀元4世紀から5世紀にかけて、キリスト教内の異端との戦いを経て、現在の27巻にその範囲が決められました。
* 「旧約聖書」については、旧約聖書の概論をご覧ください。
2.福音書と使徒書
新約聖書は「4つの福音書」と「23の使徒書」からなります。
使徒書は「手紙・歴史・黙示」からなります。
4つの福音書が書かれたのは、紀元65年から100年にかけてです。
23の使徒書が書かれたのは、紀元50年から150年にかけてです。
新約聖書の中では、パウロの「テサロニケの信徒への手紙・第1」がもっとも古く、「ペテロの手紙・第2」がもっとも新しいものです。
この他、紀元5世紀まで、使徒の名前が付けられた福音書・使徒書が書かれ、中には現在の新約聖書に置かれている書より古い物もあり、その正統性から参考にすることができます。(クレメンスの手紙・イグナティオスの手紙などの初期の教父たちの手紙を指します。しかし、その他のほとんどは異端として排除されています。)
ヨハネの黙示録は東方教会では10世紀になって聖典と認められ、ヘブル人への手紙は西方教会では最後までその正当性が疑われました。
宗教改革時のプロテスタント諸教会も、聖典とされた27の書だけを新約聖書として認め、現在にいたっています。
3.礼拝式文
教会生活を守る中で、礼拝のための礼拝式文・讃美歌、信仰教育のための教え、論争のための弁証・論駁、イエスの奇跡物語り・言葉集などが、福音書や使徒書より先に成立していたと考えられています。
これらの言葉は、特にパウロの手紙の中に多く見つけられています。
4.Q資料
マタイ・ルカ両福音書は、マルコによる福音書を下敷きにして、それぞれの福音書を書いていますが、同時に、イエスの語録集であった「Q資料(「Quelle」「資料」を意味します)」を両者は参考にしていることが分かっています。
Q資料は、おそらく初期のパレスティナのどこかにあった教会で編集されました。
彼らは、人の子イエスの再臨を強く期待し、預言者活動を行い、ユダヤ教の指導者を厳しく批判し、ユダヤ教伝統にのっとって、自己に対して徹底した律法尊主を求めています。
5.文学類型
新約聖書は、その文学類型から「福音・歴史・手紙・黙示」に分けられます。
福音は、新約聖書にだけ見られる文学類型です。イエスの十字架と復活を頂点に、イエスの言行とその証言からなります。これはイエスの伝記でも、歴史的叙述でもなく、イエスをキリストとする信仰から「順序正しく」書かれた、一連の教え集です。
歴史は、「使徒言行録」を指します。当時「行伝」と呼ばれる物語風の歴史書があり、そのジャンルに位置づけされ、「使徒言行録」は、著者の神学的・歴史的解釈によって色づけされています。
手紙は、ほとんどは「パウロの手紙」で占められ、パウロは具体的問題に答えるために手紙を書きました。これに対し、パウロ以後の手紙には、公開されて読まれることを前提に、教えを語る公的性格が見られます。
黙示は、「ヨハネの黙示録」を指します。旧約聖書の黙示文学の流れを汲み、当時迫害されていた信徒を励ますために書かれました。現在の迫害は終わり、苦しんでいる者には究極的な救いが、苦しめている者には究極的な滅びが待っています。終末論的に解釈された現在と未来が語られています。