律法
1.名称
各書の名称は、ヘブル語聖書ではそれぞれの書の1番先頭の言葉が表題に当てられ、ギリシャ語聖書とラテン語聖書では内容から表題が付けられ、日本語聖書の表題は中国語聖書から採用されています。
2.律法(トーラー)
「律法」には、もともと「指示」「教示」と言う意味があります。
「律法」は法律や判例だけを指すのではなく、祭司・長老・預言者・両親の教え、警告、教訓、例えを通して、神の意志を教え、指し示すことを意味します。
3.列王紀下22章
ユダの王ヨシヤは、紀元前621年に発見された「律法の書(申命記)」をもって宗教改革(申命記改革)を行いました。この「律法の書(申命記)」はヨシヤの祖父であるヒゼキヤ王が残したものと考えられています。
4.エズラ記7章
それまで別々の文書であったものが集められ、紀元前458年、エズラによって巻き物とされ、1つの書となったと考えられています。
5.5書
律法は、学問的には「5書(モーセ5書、律法5書)」と呼ばれ、ヨシュア記とのつながりを考慮して、「6書」と呼ばれることもああります。
あるいは、申命記を除いて「4書」、また、歴史(前の預言者)を含めてそれぞれ「7書」「8書」「9書」と呼ばれることもあります。
6.資料研究と伝承研究
律法は、それぞれ別のグループの中で口伝によって伝えられていた様々な教えが集められたものであり、その資料は、伝えて来たそれぞれのグループ名をつけ、ヤハウェー資料、エロヒーム資料、申命記文書、祭司文書と呼ばれています。
このグループは、それぞれの頭文字を取って、J(紀元前9世紀成立)、E(紀元前8世紀成立)、D(紀元前7世紀成立)、P(紀元前5世紀成立)と呼ばれ、それぞれがさらに細かく分析され、グループの背景に迫る作業が今も続けられています。
過去にさかのぼる資料研究とは別に、誰が伝承し、どこでどう編集され、今のようにまとめられたのか、その過程の研究(編集史・様式史)も行われています。
ギルガルでの初物を捧げる祭儀をとおして「族長物語り」「エジプトにおける苦難物語り」「エジプト脱出」「カナンにおける土地取得」などを組み込んだ救済史伝承が伝えられて来たと考えられています。
また、シケムの聖所での契約更新の秋祭りをとおして「シナイ契約(シナイでの出来事の回顧と勧告、律法朗読、祝福と呪い、契約締結)」を組み込んだシケム伝承が伝えられて来たと考えられています。
これらが、それぞれの聖所(祭儀)から切り離されていく過程で文書化され、ヤハゥエ資料とされ、原初史、族長史、救済史、シナイ史を組み合わせて「6書」で一まとまりにしたという意見もあります。
また、ヨシュアの指導によるシケムでの12部族連合(アンフィクチオニー)を想定し、各部族が担っていた伝承(エジプト脱出、カナンの土地取得、族長たちとの約束、荒野での導き、シナイにおける啓示)を基本資料(G)として、JとE以前にまとめられたという意見もあります。
この中では、JとEは紀元前6世紀に1つの歴史文書としてまとめられ、その後、それをPが利用し、さらに申命記から列王紀までは1人の申命記史家が編集したとされています。
7.神の言葉
律法には、法律、判例、宣言、告知、物語り、伝説、祭儀、祈り、リスト、歌、教え、報告など、いろんなものが集められ、それが具体的な生活の場を離れることによって、神と人間を教える言葉として普遍的なものに変わっていったと考えられています。
遊牧、族長、預言者、王国、捕囚、それぞれの時代の状況の影響を受けながらも、歴史を越えるもの、普遍的なものを追い求めて、繰り返し編集され、人類が受け継ぐべきものとして「律法」が存在しています。