なみちゃん と ふわふわちゃん

ふわふわちゃんのおかげなのか、ようちえんでの生活は、びっくりするほど楽しいものでした。


ちょっと心配なことがあるとーたとえば、おともだちとけんかしてしまったりとかー、すぐにバッグの中のふわふわちゃんをさわりにいきます。すると、すぐに解決するのです。


ふわふわちゃんは、ほんとうに不思議な力をもっているようなのです。


ねんどだって、お絵かきだって、なんでもじょうずにできます。お歌もたくさんおぼえました。


ようちえんから帰って、今日いちにちのことをママに教えてあげるのが、なみちゃんの日課です。



 

……

そんなふうにして、菜の花色の春がすぎ、水遊びやプールの夏も終わり、秋がやってきました。
そのころにはもう、なみちゃんがふわふわちゃんをさわりにいく回数も、ぐっと減っていました。
さわりにいくどころか、ふわふわちゃんがいることさえ、忘れてしまうときもあるのです。

その日、りなちゃんは朝から悲しそうな顔をしていました。
りなちゃんは、なみちゃんのいちばんの仲良しさんです。

「ねえ、りなちゃん、どうしたの?」
ねんど遊びの時間のときも、りなちゃんは、しょんぼり下をむいたままです。
心配でたまらなくなったなみちゃんは、横からそっと聞きました。

「あのね・・・。ママが入院しちゃったの・・・」

おなかの病気で、夕べ、近くの病院に運ばれてそのまま入院してしまったのだそうです。
もし、自分のママが入院してしまったら、となみちゃんは考えてみました。
きっと、ねんどどころじゃないわ。
おりがみだって、お絵かきだって、おともだちと遊ぶのだって、いやになるにきまってる。
だって、大好きなママが病院でねているのに、そばにいられないんだもの。
今すぐ、ママのそばにとんでいきたくなるはずだわ。

「りなちゃん、がんばろうよ!」
「えっ?」
「あのさ、今日いちにち、いっしょうけんめい遊んだら、時間なんてすぐたっちゃうよ。
だから、なみと、たくさん遊んで、早くいちにちをおしまいにして、
そうしたら、早くママのところに行けるでしょう?」
「うんっ!」

今日、はじめて見る、りなちゃんの笑った顔です。
りなちゃんがいつも笑っているときはなんにも思わないのに、
悲しい顔のあとのにこにこ顔って、自分までうれしくなる。
おもわずいっしょににっこりしながら、そんなことを思うなみちゃんでした。

< そうだ、ふわふわちゃんに助けてもらおう! >

どうやって遊んだら、すぐにいちにちがすぎるか。
ふわふわちゃんの力をかりようと、なみちゃんは思いました。
ちょうど自由にお遊びの時間になったので、いそいでバッグのところに行きました。

< あれっ? >

もういちど、バッグの中をのぞいてみました。
手で、くしゃくしゃとかきまわしてみました。
でも、ふわふわちゃんがいないのです。
ふわふわちゃんがぶらさがっていた黄色の細い糸も、すっかりなくなっていました。

どこにいっちゃったの?? なみちゃんは、心配のあまり、どきどきしました。
なくしてしまったのでしょうか、それとも・・・。
でも、今はさがしまわっている時間はありません。
いすのところで、りなちゃんがじっと待っているからです。
不安なこころをかくして、なみちゃんはりなちゃんのところにもどりました。


(なみちゃんとふわふわちゃんより抜粋)
*全文はコチラで読めます。


有紀のコメント:飛白が「意外な選択かもよ」と言いながら最初に送ってくれたのが、この作品でした。
言われたとおり、意外でした(笑) でも、飛白の本質がすごく出ている気もしました。
本質といえばひとつのように思ってしまいがちですが、実はそんなことはない。
飛白はそう思わせてくれるような人です。
もうひとつ選んでくれた《自由なドレイ》を見ていただければ、実感できるでしょう。

なみちゃんとふわふわちゃんの絵は、全体を画用紙のイメージに創りたくなりました。
そのため、白地に広いスペースをとってあります。
切り取った文章は、なみちゃんとふわふわちゃんが仲良くしている場面に思えたので、この部分を選びました。

絵の著作権は飛白さんにあります。
文章の著作権は飛雁有紀にあります。
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