2006年01月分


2006/01/30私の戦後六〇年〜日本共産党議長の証言/不破哲三/新潮社
2006/01/30蒼火/北重人/文藝春秋
2006/01/29三島由紀夫の二・二六事件/松本健一/文春新書
2006/01/29脱出記〜シベリアからインドまで歩いた男たち/スラヴォミール・ラウイッツ著/海津正彦訳著/ソニー・マガジンズ
2006/01/18紅無威おとめ組〜かるわざ小蝶/米村圭伍/幻冬舎
2006/01/17凶犯/張平/新風舎文庫
2006/01/15武揚伝/佐々木譲/中公文庫

私の戦後六〇年〜日本共産党議長の証言/不破哲三/新潮社

私の戦後六〇年
私の戦後六〇年
ISBN:4104783013
価格:\1,785
posted with 簡単リンクくん at 2006.01.30
不破哲三著
新潮社 (2005.8)
現在お取り扱いできません。
 残念ながら不破氏の演説を生で聴いたことはないが、街頭演説やインタビューなどがテレビで放映されるとつい聞き耳を立ててしまう。決して支持者ではないが話を人に聞かせるすべは心得ている方だと思う。時には親がこどもの頭をなでながら話しかけているようにと言うかものの通りの知らない愚者に上から語りかけているような気がしないでもないんだけれど。 本書もインタビュアーの問いかけに答える形式を取っており(インタビュアーは角谷浩一氏)その文体は上に書いたようなまさに下々のものに語り聴かせる口調。聞きやすさがそのまま読みやすさにつながっていてすいすい読めてしまう。
 内容はと言えばまぁ、共産党の実績を誇りまくるものだが細川日本新党以降、期間の長短はあるが多くの党が政権に入る経験したが唯一野党で居続けた立場から見直し語る戦後史は読んでいて素直に面白い。
 社会党が左派共闘から中道へ大きく舵を切り、以後”共産党を除く”野党との合意なんて言葉が聞かれるようになって以後については少々恨み節も混ざっているか。勿論党に都合の悪いことは何一つ語っていないので全面的に受け入れるわけにはいかないが戦後史を見る一つの視点として読めば面白いかも。

蒼火/北重人/文藝春秋

蒼火
蒼火
posted with 簡単リンクくん at 2006. 1.18
北重人著
文藝春秋 (2005.11)
通常24時間以内に発送します。
ISBN:4344010574
価格:\1,600
 昨年読んだ夏の椿の続編、従って舞台背景や主人公ほか登場人物も重複するが作品として完全に独立しており単独で読んでも楽しめる。
 前作同様単なる時代劇ではなくミステリーとしても楽しめる。しかも時代考証も綿密に行われているようで前半で登場人物が謎解きのきっかけとなる疑問はなるほどその通りとうならされた。著者はもともと建築家で都市計画を専門に行っていた方だそう。江戸時代の都市事情、長屋や武家屋敷、街づくりについてもいろいろと資料を集めたのだろう。描写が細かく具体的なだけでなくその役割・当時の使われ方についてもきちんと描かれている。
 前半事件を追う主人公やその仲間たちの活躍を追っていくと派手な場面が続くわけではなくむしろ地味で落ち着いた感じだがついつい引き付けられ呼んでいて止まらなくなってくる。後半になって登場人物たちの周りでさまざまな動きが発生すると思わず声を上げたくなるほど。
 もちろん謎解きだけでなくチャンバラシーンも魅力的。書名にもなった”蒼火”を持った敵役の何とも言えないキャラクターが読んでいてぞっとさせられる。
 最初にも書いた通りシリーズ第2作でありながら単独でもきちんと楽しめる。前作”夏の椿”の感想にも書いたが続きを読みたい気分とこれで完結してくれという気持ちが葛藤してしまう。特に本作のエンディングを読むとその気持ちがより強くなってしまう。
 もちろんこれは読者側のわがままに過ぎず、北重人氏の次回作が出ればまたすぐに手を出してしまうに違いない。今から楽しみ楽しみ。
 著者北重人氏が本名の渡辺重人でデビューに至る経緯を記した文章がありました。興味をもたれた方はあわせてどうぞ。

三島由紀夫の二・二六事件/松本健一/文春新書

三島由紀夫の二・二六事件
松本健一著
文藝春秋 (2005.11)
通常2〜3日以内に発送します。
ISBN:4166604759
価格:\746
 書名は三島由紀夫の二・二六事件となっているが読んでみると後二人合わせて三人にとっての二・二六事件を扱っている。残り二人のうち一人は首謀者として事件終結後死刑になった北一輝。
 残りの一人はというと昭和天皇。三島由紀夫や北一輝が二・二六事件をどう見たかも触れられているが、この事件を通じて二人が昭和天皇をどう見たかがが描かれている。北一輝は勿論三島由紀夫もまともに読んだことがないのだがなかなか面白く読めた。
 では、昭和天皇はどうだったのか。昭和天皇が二・二六事件に対し厳しい態度で臨んだのはよく知られるところだがでは北一輝や三島由紀夫をどう見たのか、それは本書を読んでのお楽しみ。読了後なるほどなぁと思わされました。

脱出記〜シベリアからインドまで歩いた男たち/スラヴォミール・ラウイッツ著/海津正彦訳著/ソニー・マガジンズ

脱出記
脱出記
posted with 簡単リンクくん at 2006. 1.29
スラヴォミール・ラウイッツ著/海津正彦訳著
ソニー・マガジンズ (2005.9)
ISBN:4166604759
価格:\2,310
 第二次世界大戦中、ポーランド騎兵隊に属していた筆者はソビエトからスパイ容疑で捕まり25年間強制労働の判決を受けシベリヤの収容所送りとなる。ソビエトの苛酷な待遇に耐えかねた筆者は仲間を募り収容所脱出に成功。まともな衣類も食料もないまま自分の足だけで極寒のシベリヤや灼熱のゴビ砂漠を歩ききった壮絶な記録。
 脱出を決心させたソビエトの人を人とも思わない扱いの苛酷さもすさまじい。
 脱出行程の苛酷さも勿論すごいのだが、”幸い”にもソビエト軍追跡から完全に逃れられたこと、砂漠に住む人たちの暖かいもてなしを受ける部分などを読むと不謹慎ながらちょっとほっとしてしまう。
 脱出した仲間との諍いや争いがほとんど無かったこともこの脱出を成功に導いた大きな要因なのだろう。にもかかわらず脱出に成功しバラバラにそれぞれの故郷に戻っていった仲間とその後全く交流がなかったという。無事苛酷な旅を終え病院に入ってからこれまでの緊張感から一気に解放された反動なのか肉体だけでなく精神的にもリハビリが必要だったようだ。この辺りもその後の再開がなかった原因なのかも知れない。
 本作を例えば無人島漂流記や厳しい自然を耐え抜いた冒険記と同じジャンルで扱うには戦争や社会体制が彼らに与えた課題は大きすぎると思う。人間の残酷さを思い知らされる一作。
 しかし、これだけの作品が日本では50年間翻訳されなかったのはどうしてなのだろうなぁ。

紅無威おとめ組〜かるわざ小蝶/米村圭伍/幻冬舎

紅無威(くれない)おとめ組
米村圭伍著
幻冬舎 (2005.10)
通常24時間以内に発送します。
ISBN:4344010574
価格:\1,575
 毎度おなじみ米村圭伍氏の新作。表題にもあがる人気かるわざ師小蝶もそうだが怪しげな発明を行う萩乃や男勝りに剣を使う桔梗ら表紙に出てくる3人が3人ともいい。相変わらず落語・講談的なスパイスを旨く加えながら時代劇くさくない。舞台は江戸後期ながら時代劇というよりはむしろファンタジーといったほうが正しいのかも。おなじみ風見藩退屈姫君シリーズと似たような時代設定だが(本作のほうが少し後かな、田沼の時代から松平定信の時代に移っているようだし)今のところ両作品がクロスする気配はなし。といっても安心できないのが米村圭伍、いずれどちらかのキャラクターがこそっと顔を出すような気がする。表紙は柴田ゆうさん。中を開いてみるとチャーリーズエンジェルを模したロゴが笑える。本格的にこの3人が活躍するのは次回作以降で本作はまぁ顔見世ということで。もちろん楽しませてもらったんですが今から続編を楽しみにさせていただきましょう。

凶犯/張平/新風舎文庫

凶犯
凶犯
posted with 簡単リンクくん at 2006. 1.17
張平著 / 荒岡 啓子訳
新風舎 (2004.8)
通常1-3週間以内に発送します。
ISBN:4797494271
価格:\791
 作者の張平氏は中国では人気の社会派作家。同じ作家の”十面埋伏”は映画化が決定しておりその紹介記事を読んだ。が”十面埋伏”の方は図書館で順番待ち状態のため一昨年刊行されていた氏の作品にまず手を伸ばす。
 社会派と言われるだけ合って硬直した官僚主義、部外者を排除する農村の排他主義など様々な中国社会内部の腐敗を告発する内容となっている。それはそれで興味深いのだがそう言ったかた苦しいことを抜きにして緊迫したシーンが続くバイオレンス小説としてみても大変面白い。
 主人公は国有林の監視業務を行うために派遣された傷病軍人・李狗子。彼がまっとうに業務を行おうとし国有林の不法伐採と横流しで潤っている村人達と対立する。対立の果てに李狗子が興した惨劇を起点に、その数日前から惨劇の時点までを描写する章と惨劇発生後その原因を追及する過程を描く章と交互に配置することでより緊迫感が伝わってくる。  中国の現代小説ってほとんど読んだことがないのですがなかなか面白かったです。とは言え次に誰を読めばいいのかさっぱり分からないのですがあちこち探してみたいと思います。

武揚伝/佐々木譲/中公文庫

武揚伝 1
武揚伝 1
posted with 簡単リンクくん at 2006. 1.15
佐々木譲著
中央公論新社 (2003.9)
ISBN:4122042542
価格:\720

通常2-3日以内に発送します。
 文庫本全4冊におよぶ大作。おそらく榎本武揚の名前を初めて見たのは小六の社会の教科書。伊藤博文を首相とする日本で最初の内閣の構成を記した資料だったと思う。他の新明の下にはその出身母体薩摩や長州と記されていたのに彼の名の下には旧幕臣と記されていた。しかも旧幕府軍が最後まで抵抗した五稜郭の戦いの大将。一番最初に首を切られてもおかしくないはずなのに明治新政府内でも一定の役割を果たした人物。いったいどんな人物なのか興味を持ってからウン十年。ようやくその一端がつかめたと思う。この本を読んで興味深かったのは武揚の敵役、特に前半部分は薩長明治新政府軍ではなく勝海舟と徳川慶喜。この二人を振り切れなかったのが武揚の限界でもあるが又魅力でもある。
 薩長明治新政府軍が勝ち組で、徳川幕府側が負け組、あるいは明治新政府軍が開明的で進歩派、それに対して徳川幕府側は旧来の制度に固執した頑迷な保守派という単純な歴史の見方が誤りであることを示してくれる。
 歴史に”もし”は無意味であることは重々承知の上で、広く世界に向けて視野を広げていた武揚の手腕が新政府内でもっと生かされていたら明治以降先の敗戦に至る戦争の時代は大きく変わっていたのではないかと思うと残念でならない。


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