2005年08月分


2005/08/19スタジアムの戦後史〜夢と欲望の60年/阿部珠樹/平凡社新書
2005/08/18海国記〜平家の時代/服部真澄/新潮社
2005/08/08赤塚不二夫のことを書いたのだ!!/武居俊樹/文芸春秋
2005/08/03遊動亭円木/辻原登/文春文庫

スタジアムの戦後史〜夢と欲望の60年/阿部珠樹/平凡社新書

スタジアムの戦後史
スタジアムの戦後史
ISBN:4582852831
価格\777
posted with 簡単リンクくん at 2005. 8.19
阿部珠樹著
平凡社 (2005.7)
通常24時間以内に発送します。
 タイトル通りスポーツの戦後史を選手や競技・大会ではなくスタジアムを起点に振り返る。スタジアムと言われればまずピンと来るのが野球場。僕も手に取るまではてっきり各地の野球場を取り上げて筆を進めると思っていたがそれだけにとどまるものではなかった。取り上げられているスタジアムを章立ての順に列記すると
・後楽園球場
・両国国技館
・川崎球場
・日本武道館
・東京スタジアム
 天覧相撲が東京場所開催時には毎場所のようにあったにもかかわらずプロ野球の天覧試合が一度しかないこと。川崎球場と高度成長期そしてその時期の社会人野球との兼ね合い、東京スタジアムにおける永田”ラッパ”雅一が果たした役割など興味深いエピソードが多く収録されている。もっとスタジアムに焦点を当ててじっくり掘り下げてほしい気もするがさらっと読める新書と思えばこれくらいが丁度いいのかも。

海国記〜平家の時代/服部真澄/新潮社

海国記 上
海国記 上
ISBN:4104616036
価格:\1,680
posted with 簡単リンクくん at 2005. 8.17
服部真澄著
新潮社 (2005.7)
通常24時間以内に発送します。
 学校の歴史の時代に習った”平家の時代”はその後に続く”源氏の時代”のイントロに過ぎず、既に清盛は絶頂期を迎え後は没落の一途をたどる敵役でしかなかった。本書は清盛の祖父正盛の時代から始まり、以下にして平家の時代が成立したのか又それが終わったのかを再現していく。
 彼らが天下を取ったのはその武力を用いたのではなかった。中国との交易の窓口となる九州を抑え、九州と京を結ぶ瀬戸内海を抑えた。この辺りの記述は大変面白くこれまで国際金融社会を舞台にした小説を書いてきた服部真澄氏らしく時代劇と言えども実は彼女の得意分野で勝負していることがよく分かる。また瀬戸内海を自由に航行していた海の民達の存在も話をより一層盛り上げてくれる。
 しかし清盛の時代になってからは経済小説、民達の歴史の要素がどんどん薄れてしまう。これまで彼を支えていた父や友人達が次々と姿を消し孤独になった彼が一人右往左往する場面が延々と描かれている。武将が主人公で合戦も行われているにもかかわらず戦闘シーンが皆無な歴史小説になっている。(それはそれで面白いんだけど)政治的な駆け引きが多くなり経済小説の要素を取り込むことが難しくなったのかも知れないが民達を活躍場面は後半にももう少し取り込めたのではと思うと少し残念。
 あともう一つ、女性の台詞が所々今で言うところの京都弁風に描かれている。勿論舞台は京都であるしお公家さんやそれに使える人たちが多く登場するから強風の言葉遣いであったかも知れない。それにしても登場人物の一部の更に台詞の一部だけを京風にして残りは皆今の標準語に近い言葉遣いになっているのはどうしてなんだろう。女性を京風に話させるのであれば男性も当然京風に話さないとおかしいのでは。中途半端に京風の言葉を交ぜるだけなら全く使わなかった方がよかったのでは。
 面白く読ませてもらったんだけどもっと面白くなったのではと言う思いがどうしてもぬぐえない。残念。

赤塚不二夫のことを書いたのだ!!/武居俊樹/文芸春秋

赤塚不二夫のことを書いたのだ!!
赤塚不二夫のことを書いたのだ!!
ISBN:4163670807
価格:\1,680
posted with 簡単リンクくん at 2005. 8. 8
武居俊樹著
文芸春秋 (2005.5)
通常24時間以内に発送します。
 当たり前だが漫画雑誌の編集者というのはよく締め切りにいらいらしながら原稿が上がるのを待ちダッシュで印刷所に掛けだしていく原稿回収だけが仕事ではない。原作者であり企画者であり又データマンでもある。もっと言うとプロデューサーでありブレーンである。この本の著者武居氏もまさに赤塚不二夫のプロデューサーでありブレーンであった編集者の一人。少し前に同じく赤塚不二夫のブレーンであり良き理解者でありながら最後に袂を分かった長谷邦夫氏の作品とダブる点がある一方でやはり最後まで近くにいた人と袂を分かった人とは同じ事柄でも描き方が違うなぁと思いながら読んでいた。((http://d.hatena.ne.jp/chomo/20040727#1090929510))。赤塚不二夫と仕事をしてきたことに対する誇りが御感からあふれ出るように伝わってくる。正直その誇りが鼻につく気も少ししたが。他にも漫画家や編集者、雑誌間の駆け引きなど当事者でなければ書けないエピソードが満載。昭和の漫画に触れたことのある方、興味のある方なら絶対に手に取った方がいい本。

遊動亭円木/辻原登/文春文庫

遊動亭円木
遊動亭円木
ISBN:4167316072
価格:\590
posted with 簡単リンクくん at 2005. 8. 3
辻原登著
文芸春秋 (2004.3)
通常2〜3日以内に発送します。
 落語がでてくる小説として以前からあちこちで噂は聞いていたがようやく読むことが出来た。何というか不思議な小説だった。確かに噺家が登場人物におり重要な役割を果たす。彼が落語を演じる場面もあるしまた過去の名人上手の噺家とその名人が演じた噺がここかしこに引用されている。だがこの噺を落語小説(あるいは落語家小説)と呼ぶことに抵抗を感じる。決して面白くなかったわけではない。むしろ面白かったんだけどだから余計にこれは落語小説ではないように思う。
 主人公でこの本のタイトルにもなっている遊動亭円木は中途半端な存在だ。目を患って以来限りなく廃業に近い休業状態であるにもかかわらず周りが彼を見る目は噺家を見る目だ。遊動亭円木自身もすぱっと噺家に見切りをつけられず、噺家を廃業しようとしながら廃業してなんになるのか決められず又その中途半端な状態を楽しんでいるように読める。またこの小説内における彼の立場も中途半端。タイトルロールでもあるし間違いなく主人公でこの小説の中心にいるのは間違いない。ただ彼がいる話の中心はまるで台風の目のように中心でありながら真空地帯というか主人公であり且つ傍観者とでもいおうか。
 ”中途半端”と言う言葉を続けて使ったがではこの小説が中途半端だったかというと決してそうではない。笑酔亭梅寿謎解噺七度狐は文句なしに落語小説(あるいは落語家小説)だと思うが本作は最初に書いたとおりそうは言えないように思う。本作中で登場人物達が引用する作品は落語以外にも詩やいろんな文学作品が出てくる。現代を舞台にした小説の登場人物としてふさわしいかは別にして遊動亭円木が盲目の吟遊詩人だったとしても話は成立したのではという気にさえなってしまう。  とここまで書いておきながら実はこの小説が好きになっていてもっと辻原氏の作品を読みたいと思わせるこの作品の魅力っていったい何だろうなぁ。<結論にならない結びでどうもすいません。


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