服部克久氏に対する裁判 ―経緯と説明―

~第一審小林亜星敗訴、第二審小林亜星逆転勝訴に至る経緯と説明~

小林亜星及び有限会社金井音楽出版が服部克久に対して、「記念樹」が「どこまでも行こう」の著作権及び著作者人格権を侵害しているとの理由で損害賠償を請求して、訴えを起こした。
これに対し、第一審の東京地方裁判所は、両曲が全く同じものとは言えないとして、「複製権侵害」とは判断できないとの理由で、小林側の請求を棄却した。小林側はこれを不服として控訴。
今回、第二審(控訴審)にあたる東京高等裁判所は、「記念樹」は「どこまでも行こう」の編曲権(= 翻案権:原著作者がもつ、第三者に編曲・翻案を許諾するかしないかを言える権利)を侵害しているとの理由で、服部克久に対し、合計約900万円の損害賠償を命じた。

東京高等裁判所が、編曲権侵害と判断した理由

A 旋律について

  • 128音中92音(72パーセント)で同じ高さの音が使われている。
  • 各フレーズの最初の3音と最後の音が全て共通している。
  • 強拍部の音が一致している。
  • 両曲の起承転結(構成)が酷似している。
  • 旋律のみで演奏された「記念樹」から、「どこまでも行こう」の旋律が直接感得される。
  • バリエーションの検証の観点から、例えば「どこまでも行こう」に、また他の曲の例として「君が代」の旋律に、大幅な改変を加えたとしても、原曲を直接感得できる。改変の程度が少ない「記念樹」の場合には「どこまでも行こう」の旋律に改変を加えたものでしかないことを明確に感得できる。

B 依拠性の認定の根拠
 (服部克久が「どこまでも行こう」の譜面または楽曲に依拠して一部修正を加えて「記念樹」とした)

  • 「どこまでも行こう」は、国民の大多数が知っている著名な楽曲であること。
  • 服部克久が「どこまでも行こう」を知っていて、これに一部修正を加えて「記念樹」にしたと考えるほかないほどに両曲は酷似していること。
  • 服部克久は「どこまでも行こう」を聴いたことがあると考えざるを得ないほど、多数の客観的事情があるということ、等である。

これにより東京高等裁判所は、服部克久が有限会社金井音楽出版の有する「どこまでも行こう」の著作権及び著作者人格権を侵害したとして、服部克久に対して損害賠償を命じたものである。

なお、服部克久は「記念樹」について著作者人格権を有するとして反訴を提起していたが、「記念樹」が服部克久により作曲されている以上、法律上服部克久が著作者人格権を有するのは当然であり、小林亜星及び金井音楽出版は当然のこととしてこれを認めていたが、これまでこの点に関する裁判所の判断がなかったために、小林及び金井音楽は東京高等裁判所に判断をお願いしていた。これに関して東京高裁は「記念樹」という作品自体(侵害楽曲であっても、その作品が現実に存在しているのであるから、誰かが作った二次著作物であるわけで、それには作った著作者がいるという意味)については服部克久が著作者人格権を有すると判断した。 ただし、「記念樹」という楽曲に服部克久が著作者人格権を有し、株式会社フジパシフィック音楽出版が著作権を有するとしても、それを原著作者に無断で「公表」することは違法であり、このため東京高裁は「記念樹」が録音・出版・放送等を「どこまでも行こう」の原著作者に無断で違法に公表されたとして、服部克久に損害賠償を命じたものである。 (即ち、二次的著作物である「記念樹」には、服部克久の著作者人格権、株式会社フジパシフィック音楽出版の著作権があることから、第三者がこれを無断で演奏等公表することを、服部克久・株式会社フジパシフィック音楽出版はその第三者に対して禁止することができるが、服部克久・株式会社フジパシフィック音楽出版といえども、原著作物「どこまでも行こう」の権利者である小林亜星・有限会社金井音楽出版の許諾無くしては、これを演奏・出版・放送等使用することは出来ない。)