ANNE BOLEYN Museum of Art

index



「青のポット」 6F 油彩

谷垣博子 Tanigaki Hiroko

現代日本美術会会員/評議委員

1951 埼玉県生まれ
1974 共立女子大学文芸学部油絵学科卒業
1978 光陽会関西展出品 兵庫知事賞
     光陽会会員 光陽会青年作家賞
1982 サウジアラビア在住
1985 帰国
1988 神戸ギャラリー四季にて個展
1990 イタリア・ミラノ在住
1992 Proposte d' arte 会員となる
1996 Proposte d' arteにて1位
     サンレモ Contemporaneoにて1位
1998 S.laser-Milanoにて個展
     伊勢丹浦和店にて個展
1999 ボローニア Gnaceariniにて個展
     伊勢丹浦和店にて個展
     10年ぶりに帰国
     ベルギー国際オークション参加
2001 東京ギャラリーベガ渋谷にて個展
2002 伊勢丹浦和店にて個展
2003 横浜ギャルリーパリにて個展
2004 現代日本美術会特待賞及び会員推挙賞受賞
2005 谷垣博子絵画展 伊勢丹浦和店美術画廊
     現代日本美術会 名誉会員推挙
2006 現代日本美術会 評議委員推挙



「青のポット」という表題があるが、ポットのフォルムを云々するどころではない、まずその鮮烈な青に圧倒され、しかも陶酔させられてしまう。この青と赤のコントラスト、

色彩感覚のオシャレさといえば、

フランスの19世紀初頭のファッション・プレートなどを引き合いに出したくなるほど、まず日本人ばなれしたものだ。

画面中央の青に視点を合せていると、私には海が見えてきてしまう。

しかも、この鮮烈な明るさを持ちながらも、

一抹の暗さとせつない叙情性・・、と来れば、地中海でもフランス側のコートダジュールではなくリビエラ海岸、サンレモあたり・・、それもパガニーニのバイオリン協奏曲1番の1、2楽章をバックに流したいな、などと勝手な思い込みと空想にふけってしまうのだ。この絵を前にして私は、聞き終わったレコード(絶対にCDではないのだ)のポツ、ポツという雑音と、サーッとわれに帰って、街の雑踏の響きが耳に入ってくる瞬間のような錯覚さえ覚えた。これはどうしたことだろう。絵の下の方に視線を向けると、

そこには黄昏時の街角、

それも狭いくねくねとした路地のような景色が見えてくるのだ。夏の9時くらいの黄昏の街角、けだるい空気、飲食店から漏れてくる談笑の声。この街はどこだろう。

さらに文字らしきものに目を向けると、そこには白濁の中に緑、黄、ピンクがオパールのように耀変している。ああ、こんな空があるのだろうか、この色合いもいいなぁ、と思っていると、短編映画のエンディングのタイトル、監督、俳優、技術・・といった文字が流れてくる。

エスプリの利いた知性的な

抽象絵画であるこの絵を前にして、私はひとときの短編映画を見てしまった。見る者を白昼夢に誘う、なんとも妖しさがある一枚である。



index