ANNE BOLEYN Museum of Art

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「くれゆきて 1」 和紙・スクリーンプリント 28×21cm

藤田夢香 Fujita Yumeka

現代日本美術会会員/審査員

1996 美学校にてシルクスクリーンを始める
1997 個展 千駄木・アフリカンバー、バオバブ「彷徨ペケレ」展
     銀座・T・BOX 「無音の内」展 
1998 神田・文房堂ギャラリー、グループ展「版との接点」
     大阪・アート・デ・アート「水音」展
     銀座・T・BOX「T・BOX・COLECTION」展
1999 銀座・T・BOX「無音」展
     神田・文房堂ギャラリー、グループ展「版との接点」
     横浜アースヴィジョン「二人展」
2000 BOXアート展参加
     南フランスCAGNES SUR MER
     「JAPON VISIONS CONTEMPORAINES」展参加
     銀座・T・BOX個展
2001 横浜青葉台ギャラリー アースヴィジョン
     「アートランドオン150×150」
2003 現代日本美術会会員推挙賞受賞



作品は、離れて色彩だけを見ると、かつてモネや印象派の画家たちが試みたような色彩であり、その意味で

万人が美しいと思う異論のない

色彩なのだが、和紙の質感と染料によってここまで違った夢幻的な世界になることに驚く。
藤田の作品は、ステンドグラスのように向こうからの光源を求める。なるほど光を求める点では、印象派と同じなのだが、こちらは屋内、夜、行灯のような柔らかく、かそけき光。

その光が揺らめいたら、

これはもう音楽が聞こえてきそうな世界。京都の夜、いかにも日本風の家屋でフォーレのヴァルス・カプリスのピアノの響きに耳を傾ける、これは現代でもありだなと思う。
よく顕微鏡を覗いていて、見るべき対象にピントが合わないで、ゴミが視界に見えたりする。調節すると、それが消えて、急に見るべき微生物の組織がはっきり現われてくる。この突然の出現が、何かいかにも芸術論でいう「顕現epiphany」という感じがして何度も無駄にピントを合わせ直したりしたものだ。藤田の作品を見ていると、なぜかこの瞬間を思い出す。

顕微鏡の中に見える

ゴミのようなもの、万華鏡の中の虚像のような妖しいものに見えてきて、目の焦点が合わなくなって、めまいがする。画面にはピントの調節で明減してしまうような「虚」の存在が充満している。
枯れ葉が舞い上がり、落下し、浮遊するのも当然だな。対象にピントがあう前につかの間、姿を表わす見えないはずの虚像なのだから。



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