ANNE BOLEYN Museum of Art

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「春」 紙粘土 35.0×35.0cm

利根川佳江 Tonegawa Yoshie

1964 東京生まれ
1987 多摩美術大学卒業
1988 多摩美術大学研究科修了
    グループ展 世田谷美術館区民ギャラリー
1993 グループ展 数寄屋画廊
1995 すどう美術館主催「若き画家たちからのメッセージ'95」展
    買上賞
1996 個展 すどう美術館
1997 「すどう美術館セレクション」展出品
1998 個展 ぎゃるり・しらの
1999 個展 湘南台画廊 神奈川
    個展 すどう美術館
2000〜2001 クラインブルー
2001 GALLERY クラマー
2002 WAVE AGE展(すどう美術館)
2003 Museカラカラ開館5周年記念9人展



極端に無駄を省いた造形、抽象的な理念の記号性の結晶…などと小難しいことは言うまい。丸い白い物体に切り込みがある。ちょうどキノコの一種か何かのように見える。

何かニッコリしたくなる

可愛げのある球形だが、斜めの切り込みを観ていると、「これは螺旋回転するんだろうなぁ」と思ってしまう。
キノコmushroomと音楽musicはいつだって辞書の隣り合わせ、セットになるものだというのがジョン・ケージ以来の定番の発想だから、キノコと音楽、キノコの音楽、音楽キノコ、ほら、回転しながら音楽を想像しなければ…。
一見、素っ頓狂な滑稽味があるんだが、こんな大仰なモノが、いつのまに生えていたんだろう。

思いがけないところに、

こんな立派に成長を遂げたキノコを見つけたら、ビックリするだろうなと思う。不気味だ。
表面の質感はわずかに毛羽立っているようだけど、中を割ってみると、何かぽってり、プルルンとした湿り気があるような気がする。作家のイメージがキノコなら、われわれもこんなキノコを心の中に抱えているんだろうな。こんなキノコを生えさせてしまうような胞子を含む淀んだ空気を、

われわれは知らず知らずに

呼吸しているんだろうか。カビ臭さの漂うよどんだ空気、閉塞感、惰性と怠惰、整理と清掃を怠っている自分の日常性…と連想が膨らんでくると、この作家の毒気を含んだ批評性が見えてくる。滑稽なキノコが、とっても怪しい。



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