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やきものの話-黒陶

 

 黒色の陶磁器は、通常、素地の上に鉄釉を掛けて作られます。有名なものとして中国の天目茶碗、日本の瀬戸黒、黒楽などがあります。これらとは別の技法で作られる黒陶という土器があります。

 

 黒陶は、土器焼成(700~900度)の時に、窯の中を還元状態(酸素不足の雰囲気)にして松葉・おが屑など煙を多く出す燃料で燻し、炭素を土器の表裏に付着・吸収させてつくります。通常、焼成前の成形段階において、半乾きの素地表面を滑らかな石や鉄箆などで磨き、素地を締め緻密化します。このようにして作られた黒陶は、漆を塗ったかのように艶やかな肌をもち、低温の土器特有の暖か味も感じられます。

 

 黒陶の歴史は古く、特に、新石器時代後期の中国龍山文化を代表する土器として有名です。山東省歴城県竜山鎮城子崖で初めて発見されて以来、現在では広い範囲から発見されています。器形は変化に富み、非常に薄手につくられており、紀元前2000年以上前にこのように精緻な土器が作られていたのは驚きです。

 

中国龍山文化の黒陶

中国の黒陶 中国の黒陶 中国の黒陶

黒陶瓶          黒陶雙耳壺             猪紋黒陶鉢

 

  黒陶は、低温で焼かれる土器であるために食器などの実用品には向いていませんが、漆黒の質感はアーティストを惹きつける魅力をもっており、これまで陶芸家、彫刻家などが黒陶オブジェに挑戦しています。中でも、前衛陶芸団体「走泥社」を結成した陶芸家・八木一夫は有名です。黒陶は、高温焼成の陶磁器に生じる収縮に伴う歪や割れなどのトラブルがないため、オブジェや置物の制作に向いていると言えます。

 

黒陶のオブジェ

八木一夫の黒陶八木一夫の黒陶佐藤公平の黒陶

八木一夫作           八木一夫作          佐藤公平作

 

 その他、民芸陶器にも黒陶があります。メキシコ南部にあるオアハカという地域で作られている「BARRO NEGRO(バロ・ネグロ)」と呼ばれる黒陶で、独特の黒いツヤを出すために、ここでは磨きにメノウの石を使用しているそうです。

 

メキシコの黒陶

メキシコの黒陶  メキシコの黒陶

 

 なお、今日、日本各地で焼かれている燻し瓦は、黒陶と同様の技法によってつくられたものです。簡単には、炭焼き窯を利用してもつくることが出来ます。また、現代では、1200度以上の高温焼成を行う陶磁器においても燻し技法を使った食器などが作られ、黒陶として販売されてます。技法的には同じですが、出来上がったやきものの肌・質感は黒陶土器とは異なります。

 

(2010.6.22)