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伝統工芸品の品質表示

 

 現代の伝統工芸品には、観賞に供するためにつくられたものもありますが、元々、昔の人が日常生活に関わる用品の中にささやかな美を求めて生まれたものです。今も私たちに馴染みのあるのはこのような生活に密着した伝統工芸品です。現在、各地で作られている伝統工芸品を集めれば、その種類は1000を越えるでしょう。これら伝統工芸品の中には、良心的に作られたものもあれば、形だけの伝統工芸品もあります。デザインが気に入って購入したがすぐ使い物にならなくなったという経験をもっている方も多いのではないでしょうか。

 

 個人作家によるもの以外の、いわゆる産地の伝統工芸品には、通常産地ブランド商品であることを示すラベルが貼られています。製品の品質を保証するものとしては、国指定の伝統工芸品であること示す伝統証紙が代表的なもので、その他に、産地組合等が独自の検査基準にもとづいて保証する産地証紙があります。伝統工芸品の購入では、自分の眼で良いものを見極めることが大事ですが、類似品が出回っている現代では品質表示は重要になります。

 

 産地には、組合に参加せずに良心的なものづくりをしている事業者や個人作家も数多くいます。また、証紙を貼るためには検査体制の確立が必要ですが産地で確保することができず、製品に証紙を貼っていない産地もあります。証紙による品質表示が必ず必要というわけではないですが、伝統工芸品の中には、漆器や織物のように、消費者が製品の品質を評価することが非常に難しいものがあり、知らずに粗悪品を買ってしまう危険があります。例えば漆器の場合、木地づくりから仕上げに至る製造工程が多く、原材料も多様化しており、完成品を見ただけでは専門家といえども技法や原材料を見分けるのは難しいと言われています。また、ネットを見ると、有名な織物では、昔と変わらず偽造品が出回り、消費者が被害を受けています。

 

<伝統証紙について>

 伝統証紙は、伝産協会が発行する伝統マークを使用した証紙で、証紙発行協同組合名が必ず明記されています。また、一部の証紙を除き、すべて連番による管理番号が入っています。これは、仮に事故が発生した場合に、生産者まで遡ってその責任を追及することができるようにするためです。 国指定の伝統的工芸品に関しては、指定に際し技法や原材料に関する要件が定められます。いろいろな伝統的工芸品について、その指定要件を見てみると、技法や原材料について厳しい基準を定めているものもあれば、基準が緩やかで品質保証になるのか疑問視されるようなものもあります。このように、伝統技術の維持に対する考え方や取組みは産地により大きな差があるため、伝統証紙による品質保証の重みは、一律ではありません。

 

伝統証紙の使用例(村上木彫堆朱)

伝統証紙

 

<産地証紙について>

 先に述べたように、国指定を受ける際に、技法や原材料に厳しい要件をつけている伝統工芸品があります。しかし、伝統的工芸品といえども時代とともに技法や原材料は変化します。そのため、産地によっては、品質的に良いものであっても伝統証紙を貼れない製品が多く出てきてしまいます。また、産地内には、組合に属しないで伝統工芸品づくりを行っている事業者もいます。そのため、産地が独自に証紙をつくることは、多くの産地製品の品質保証につながり、他の類似品・模造品との区別にもつながります。また、産地独自の証紙を貼ることは、ブランドのイメージアップにもつながります。

 また、稀ですが、逆のケースもあります。国の伝統的工芸品としての要件が緩やか過ぎると、幅広い商品に伝統証紙が貼られることになり、あまり品質保証の役割を果たせません。かえって産地のブランドイメージを低下させてしまうかもしれません。ブランドイメージを高めるために、産地独自のより厳しい品質表示が必要となり、産地証紙を作成しているケースもあります。

 産地証紙の発行は、特に織物や仏壇の産地において多いようです。おそらく、商品が高額なため、類似品や偽造品による被害が多く、品質保証に神経を使っているためと考えられます。

 

 

<産地証紙の例>

・沖縄県には、県指定の伝統工芸品が数多くあり、県の検査に合格した場合、伝統工芸製品であることを示す「伝統工芸品之証」が、さらに伝統染織物の場合、「沖縄県織物検査済之証」または「沖縄県紅型検査済之証」が貼られます。その製品が国の伝統的工芸品の指定を受けている場合には、伝統証紙とともに組合が品質を保証する証紙も貼られるため、合計4種類の証紙が貼られることになります。

 

「伝統工芸品之証」   「沖縄県織物検査済之証」

沖縄県伝統工芸品証紙   沖縄県伝統工芸品の証紙

 

・京友禅では、伝産指定において型友禅と手描友禅の両方が「京友禅」として指定されており、技術的に幅か広すぎて何にでも伝統証紙を貼ることの出来る状況となっています。消費者に「染匠の京友禅」をアピールし、手描友禅を守る必要性があることから、京手描友禅証紙を発行しています。  

 

京手描友禅証紙

 

<偽造証紙・模造品例>

 ネットに本場大島紬の偽造証紙・模造品が紹介されていました。本場奄美大島紬では、大島紬定義に添った先染め・手織りの商品には伝統証紙とともに登録商標「地球印」が必ず貼付されます。偽造証紙はなかなか手が込んでおり、正式の証書を知らないと騙されてしまいそうです。

 

本物の証紙

本場奄美大島紬の証書

偽造証紙

偽造証書

 

 

(2010.6.15)